『砂漠でサーモンフィッシング』（試写会）

アラブの大富豪の夢は、自国のイエメンで鮭釣りができるようにすること。自国民に釣りの楽しさを知ってほしい。

砂漠で釣り？

そんなありえない不可能な企画の担当をさせられることになった水産学者のジョーンズ博士。大富豪の代理人・ハリエットに伝えた予算は、これまたありえない金額の5000万ポンド。しかし、大富豪は、そのお金を用意できるという。

そんな夢のようなプロジェクトが、なぜかイギリスの外務省を巻き込む国家事業となり、ジョーンズは国の思惑にも振り回されることとなり…。川をつくり、鮭を放流。ジョーンズや大富豪の夢は叶うのか？その顛末は？

アラブの大富豪のお金の使い方にハンパなし、ということに驚嘆。しかし、主人公のラブなくだりでは共感できず…という感じだ。大富豪と博士の友情には注目。

脚本は、『スラムドック$ミリオネア』のサイモン・ビューフォイ。監督は『ギルバート・グレイブ』『ショコラ』のラッセ・ハルストレム。ジョーンズ博士は、イギリスを代表する俳優の一人ユアン・マクレガーが、ハリエットは『プラダを着た悪魔』のエミリー・プラントが演じている。やり手の首相広報官には、クリスティン・スコット・トーマスがあたっている。

（12月8日公開）

『その夜の侍』

鉄工所を経営する中村健一は、5年前に最愛の妻をひき逃げされ、亡くしていた。

ひき逃げの犯人は木島宏。中村は、5年前の事故の日を間近にして、復讐決行日までのカウントダウンの封書を木島に送りつける。

そしてついに、決行日がやってくる。雨の中、グダグダになりながら「他愛のない話がしたい」中村が木島に言う、その言葉の意味とは…。

ただ、孤独を感じるこの映画。うまく自分を表現できない中村と、暴力で支配することしかできない木島。暴力の支配下でしか居場所がない、木島の仲間たち。虚しくも、悲しい。

孤独をたたえた中村を演じるのは、その個性と演技力でドラマや映画に欠かせない存在となった堺雅人。木島を演じるのは山田孝之。この映画のポイントは、山田孝之の凶悪ぶり。堺雅人の静に対し、山田孝之の動。この対比が、儚さを増す。木島の友人役は、いま注目の俳優、綾野剛が務めている。ほかに、坂井真紀、新井浩文、谷村美月、安藤サクラなど。

監督・脚本はこの作品が初監督となる赤堀雅秋が務めた。

『黄金を抱いて翔べ』

大阪に本店を置くメガバンク。その銀行の地下には、240億の金塊があるという。男6人は、その金塊の強奪を企てる。計画が進むに連れて明らかになっていく真実。そして、男たちのそれぞれの思いが明らかになる。

お金や金塊よりも、大切なもの、ほしいものが彼らにはあった。そんな思いが満載の映画。

監督は『パッチギ！』の井筒和幸。暴力場面があとに残ってしまうイメージがあるが、どの井筒作品よりも、まとまっていると言ってもいい。主なキャストは、妻夫木聡、浅野忠信、桐谷健太、チャンミン（東方神起）、溝端淳平、西田敏行。高村薫の同名小説が原作である。

『北のカナリアたち』

『告白』で日本アカデミー賞作品賞を受賞した湊かなえの原作「往復書簡」の映画化。いま注目される湊かなえ。この作品は、ミステリー度が高いわけではないが、キャストの登場させ方が秀逸。切ることのできない絆を描く。東映創立60周年記念作品。主演は、日本を代表する女優・吉永小百合。

主な舞台となるのは、礼文島や利尻島。体感温度マイナス30度の中、ロケーション撮影が行われた。撮影は、名カメラマンの木村大作が務めている。

定年退職を迎えようとしているある図書館の司書・川島はる。彼女は、20年前までは北の離島の小学校教師だった。しかし、ある事件で島を離れることとなっていた。

やがて、かつての教え子と再会することになる事件が勃発。彼女は、元の教え子たちを訪ねることになる。

そこで大切なカギとなるのが、子どもたちの歌。ミステリーでありながら、その枠には収まらない展開。何があろうとも変わらない関係、かけがえのないもの。善や悪とは違う結論に気づかされるものとは…。

20年後の生徒たちを演じるのは、森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平というメンバー。すでに個々で主演をはれる若手実力派俳優たちが、どのように登場してくるのか、その役割、使われ方がある意味衝撃的。ストーリー展開は巧妙に練られているが、キャストの個性が生きていないと感じる面もある。

出演はほかに、柴田恭兵、仲村トオル、里見浩太朗など。監督は、『どついたるねん』『大鹿村騒動記』の阪本順治。

『任侠ヘルパー』（試写会）

「隼会」を抜け、堅気となった元極道者・翼彦一はコンビニで働くが、ある事件がきっかけで逮捕され、刑務所に。刑務所では、コンビニ事件の発端となった老人蔦井がいた。普通の生活を送りたい、そう思いながらも息苦しさを感じる彦一は、出所後、その老人のツテを頼って「極鵬会」という組を訪れる。それは、また裏の社会に戻ること。

与えられた仕事は、老人相手の闇金と貧困ビジネス。「うみねこの家」という異臭漂う施設で、老人介護を装う仕事で、お金をせしめることだった。

人気ドラマの映画化であるが、ドラマとは違う映画ならではのストーリー。どんな人も共存共栄することの大切さや、老人介護の実体を描いている。ただ、すべてを綺麗に描こうとして、かえってぼんやりしてしまったように感じられる。

彦一には、草なぎ剛。認知症の母をかかえた女性に安田成美。弁護士で地元選出の代議士を香川照之が演じている。ということで、やっぱりこの人、香川照之が出ていることで映画がしまっている。

（11月17日公開）