夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

「南光こごろう親子会」

2010年04月26日 17時49分56秒 | Weblog
 今年で2回目の親子会。桂南光と、唯一の弟子こごろうとの落語会という意味で親子会である。
 聴きどころは、南光の『らくだ』である。故・笑福亭松鶴(笑福亭鶴瓶の師匠)の十八番だったネタを、円熟味を増した南光がどう演じるかだ。真面目で気の弱い紙屑屋が、酒を勧められ1杯飲んだら止まらず、大トラになる。長い落語なので、前半と後半に変化をつけて飽きさせないのが技となるだろうが、気がつけば終わり。手八丁口八丁で笑いを誘っていた。
 ただ、それが中入り前。中入り後の、こごろうの『愛宕山』では、観客はお腹いっぱいの状態で聴くこととなり(こごろう自身もそう言っていた)、演じにくかったかもしれない。決して悪くはなかったけれど。
 どれも有名なネタばかり。演者が変われば、中身の雰囲気も変わる。
  ―演目―
  桂ひろば   『動物園』
  桂こごろう  『代脈』
  桂南光    『らくだ』 
     ~中入り~
  桂こごろう  『愛宕山』

(4月23日、サンケイブリーゼにて)

「やさしい嘘と贈り物」

2010年04月24日 22時39分18秒 | Weblog
 うまくできている。正直、鑑賞後にそう思った。冒頭の話からすべてに意味がある。画面が変わるときの雲りがかった映像も、伏線である。映画を見慣れた者にも、珠玉の1本となるだろう。
 アメリカの小さな町で暮らす年老いたロバート。スーパーで働きながら、一人で暮らしてきた。だが、クリスマスが近づいたある日、隣に引っ越してきたというメアリーが、ロバートの家にいた。ロバートの家に鍵がかかっていなかったから心配で家の中に入ってきたと言うメアリー。いきなりメアリーに家に入られ、憤るロバートだったが、彼女にデートに誘われ、喜びを隠せない。
 スーパーの店長のマークに手助けをしてもらいながらデートの計画を立てたり、クリスマスプレゼントを考えたりと、メアリーに出会い、ロバートの日常が変わっていく。
 一方、美しく年を重ねてきたメアリーは娘のアレックスと暮らしているが、スーパーで絵を描いていたロバートが気になっていた。そして、ロバートを食事に誘う。メアリーはロバートに言う『出会ったときから愛している』と。だがメアリーは、ずっと影でロバートを支えていた。まるで妻のように。
 一見、老いらくの恋もの?と思うけれど、後半は話が一転。メアリーの姿が見えなくなったロバートは、パニックに陥る。それはなぜ?
 家族の深い愛情を描いた作品。ロバートを演じるのは78歳のマーティン・ランドー。メアリーは77歳のエレン・バースティンが演じている。監督は、これが長編初監督となる新人ニック・ファラーで24歳。大ベテランキャストに若き監督、そのギャップが魅力。とても老獪さを感じる、そして雰囲気のある作品である。

「ソラニン」

2010年04月17日 22時30分21秒 | Weblog
 『ソラニン』とは、ジャガイモの芽にある毒のことだ。『ジャガイモの芽は有毒物です。調理をするときは取りましょう』と、家庭科で学んだ。映画の冒頭は、宮崎あおい演じる芽衣子が、自室のテーブルにジャガイモを積み重ねるところから始まる。ところが、徹夜明けのカレ・種田が帰宅し、集中力が切れてしまった芽衣子は、積み重ねたジャガイモを崩してしまう。
 “恋がしたくなる”とか“バンドがしたくなる”とかと、この映画の主人公たちの年齢に近い世代の人は思うかもしれないけれど、この映画は、一つの夢が破れてもやり直せる。一つの芽は取られてもまたやり直せばいい、ということだ。それを暗示するのが、この冒頭シーンということになるだろう。誰もが日常に起こりうる悩みを繊細に描いた青春群像劇。  
 芽衣子は、小さな会社の社員。しかし 、雑用ばかりの仕事に価値が見い出せず、会社をやめてしまう。大学時代に軽音のサークルで知り合った種田と同棲はしているが、種田はフリーターで、今は趣味で大学のサークル仲間だった者たちと音楽を楽しむにとどまっている。
 だが、芽衣子にはっぱをかけられたこともあり、種田はあきらめかけた音楽への思いを紡ぐ。新曲の『ソラニン』をレコード会社へ送るメンバーたちだが、反応はないまま時が過ぎる。そして、種田が交通事故に遭う。呆然とし、意欲がなくなった芽衣子だが…。
 夢を追う若者たちも、いつかその夢をあきらめないといけないことがある。絶望感にさいなまれ、現実に直面することがある。だが、明日へ向かわないといけないものなのである。
 芽衣子を演じるのは宮崎あおい。彼女自身は、実生活では既に結婚しているけれど、年齢的には青春群像劇を演じてもおかしくない世代だ。今や老若男女が知る“国民的女優”となったが、テレビ女優ではなく、映画女優だと感じる。ラストのライブシーンの歌は、上手くて素晴らしいとは言えないけれど、下手で不器用だけど気持ちで歌うという役柄と重なり合い、引き込まれ感動を呼ぶ。
 芽衣子の恋人には今注目株の高良健吾。共演はほかに、桐谷健太、近藤洋一(サンボマスター)、伊藤歩など。浅野いにおの人気コミックの映画化である。

「ハッピーエンド」(DVD)

2010年04月07日 11時51分08秒 | Weblog
 主要キャストは、『シュリ』などたくさんの作品に出演しているベテラン映画俳優・チェ・ミンシクに、『接続』で映画俳優としても新境地を見せたチョン・ドヨンと、『MUSA-武士-』のチュ・ジンモ。今になると、大物スターが3大共演をしていたということになる。この映画のテーマは、愛と執着ということになるだろう。そして見所は、冒頭からのチョン・ドヨンとチュ・ジンモのフルヌードでの大胆ベッドシーンだ。これまで清純派のイメージが強かったチョン・ドヨンが『あなたの体が好き』と言いながら、元恋人との愛におぼれる。ラスト近くに本当の意味での衝撃的なシーンがあるのだが、ある意味そのベッドシーンの方が衝撃的な、韓流ラブ・スリラーである。今も韓国国民にとって心に残るベッドシーンとなっている。
 チェ・ボラ(チョン・ドヨン)は既婚者で、生まれたばかりの子どもがいながらも、元彼のキム・イルボムと再会して以来、逢瀬を繰り返している。ボラの夫であるソ・ミンギは長年勤めた銀行をリストラされ、求職中。古本屋に入り浸り、主婦のようにドラマを見るのを楽しみにしている。ボラが子どもの英会話教室を運営しているので、家計はボラが支えている。子どもを保育所に迎えに行ったり、料理をするのも、ミンギの役割となってしまっている。夫婦の間は冷えてはいるが、ミンギもボラも別れるつもりはない。ボラにとっては、日常から解放され、気持ちが楽になるイルボムとの関係も捨てがたい。
 ところが偶然、妻とイルボムの関係に気づくミンギ。そして、イルボムのマンションに忍び込み、ある決意をする。妻への愛情が歪んでしまったミンギを、ある悲しい行動へと突き動かす。
 物語は、どんな大きな出来事があっても日常は日常として続いていくということを暗示して終わる。離婚せずに、イルボムとの関係だけを続けたかったボラ。ボラとずっと一緒にいることを望んでしまったイルボム。ただ、子どもにとって良い母であればいいとボラに望んだミンギ。それぞれのハッピーエンド…実は、終わりの始まり…が待っていた。
 あまり細かいところにこだわると、ラストにつながらないので、大目にみないといけない場面も。そして、韓流ドラマファンが気になるであろう場面としては、ミンギが熱中して見ているドラマは、おそらく『愛の群像』(原題:私たちは本当に愛したのだろうか)だ。キム・ヘスとペ・ヨンジュンが出ている。なぜ、そのドラマで、“あのシーン”が映し出されるのか。その意味は?
 この前のブログに掲載した『初恋のアルバム』のチョン・ドヨンと比べると、演技に幅があるのがわかる。今や“カンヌ女優”と呼ばれ、大スターとなった彼女の初期のころの映画作品。
(1999年、韓国)

「初恋のアルバム~人魚姫のいた島」(DVD)

2010年04月05日 12時04分16秒 | Weblog
 この作品について主演のチョン・ドヨンは、『これまで関心がなかった両親の恋愛について考えた。“父”と“母”ではなく、一人の人間として捉えるきっかけになった』(略)と、インタビューに答えている。まさに、その言葉に共感できる作品。『初恋のきた道』(チャン・イーモウ監督)を彷彿させる作品ではあるけれど、この作品はこの作品として、秀作。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ-ヤング・ファンタスティック・コンペティション部門-受賞作品。
 ナヨンは郵便局員で窓口担当。近々、研修のために、ニュージーランドに行くことになっている。無口で人が良く、他人の借金の保証人になってしまう父・ジングク。そんな父にいつも小言ばかり言っている母・ヨンスンは、周囲に気配りすることもしない。ナヨンは、そんな母が嫌いだ。そんな環境で育った自分も、幸せな結婚生活ができるわけがないと思うと、付き合っている彼との結婚にも踏み切れない。
 そんなとき、父が郵便物の仕分けの仕事をやめると言い出す。当然、母は父に食ってかかるが、父は失踪してしまう。

 ナヨンは、旅行を取り止めて父がいるであろう、故郷の島へ向かう。しかし、ナヨンがそこで会ったのは、20歳の母と23歳の父だった。タイムスリップしてしまったナヨンは、母の“初恋”を見守ることとなる。真面目な郵便局員である父が、文盲の母のために文字を教える姿。 期待に応えようと、文字を一所懸命勉強する母。そんな状況に触れながら、ナヨンは自分自身の生き方を見つめ直すこととなる。
 主演のチョン・ドヨンは、若い頃の母と一人二役。見事に演じわけている。若き父を演じるのは、映画『菊花の香り』『殺人の追憶』のパク・ヘイル。寡黙であるが、ヨンスンに対する愛情が十分伝わる演技を見せている。現在の両親の姿と、過去の両親の姿の対比がうまく描けているのが、秀作である所以。
 監督は『私にも妻がいたらいいのに』(ソル・ギョング、チョン・ドヨン主演)が初監督作品だったパク・フンシク…ホ・ジノ監督作品『八月のクリスマス』では助監督を担当していた。今作は、監督2作目となる。
 ちなみに、ナヨンの恋人役にはドラマ 『マイスィートソウル』『コーヒープリンス1号店』のイ・ソンギュン。そういえば、パク・ヘイルと似ている気がする。それもキャスティングの狙いか。
 心を癒やしたい人にはオススメだ。
(2004年、韓国)