この作品は、立川志の輔の落語「大河への道 伊能忠敬物語」を聴いた中井貴一が映画化したいと企画したという。
そして、当方も立川志の輔の落語を聴いていたクチである。しかし、その話し方と下げ(オチ)を知っているので、映画でそのおもしろさが伝わるかどうかわからず、またがっかりするのも嫌だったので、鑑賞しようかどうか悩んでいた。が、もやもやする前に鑑賞することに。
千葉県香取市役所では、地元を盛り上げるために観光資源の開発に取り組もうとしている。その会議では、総務課の池本(中井貴一)は勢いで地元の偉人である「伊能忠敬を大河ドラマにしてもらう」という案を言ってしまう。担当を命じられ、知事の希望もあり、脚本家の加納浩造(橋爪功)のもとを訪ねる池本だが、20年以上も書くことを止めている加納はなかなかオッケーを出さない曲者だった。
加納を懐柔することに成功した池本だが、その中で伊能忠敬は、なんと地図完成の3年前に亡くなっていることがわかる。伊能忠敬では大河ドラマにならない、そう加納に言われた池本は??
江戸時代では、亡くなった伊能忠敬を前にして、「いましばらく、先生には生きていただきましょうか、、、」とある人物が発言していた。弟子たちによる一世一代の隠密作戦。しかしそれは、幕府からの莫大な資金を横領しているとも考えられる危険な行為だった。
現代パートと江戸時代は同じキャストが、役柄を変えて演じている。一人二役。公務員で中井貴一の部下を演じる松山ケンイチや和田正人、岸井ゆきの、北川景子、上司役では平田満らが出演。日本らしい映画。縦社会と人情、チームワークが生きる。測量技術と天文学知識の高さに驚かされる。そして、何より日本人の几帳面さがよくわかる。
立川志の輔の落語からは『歓喜の歌』も映画化されている。落語は聴いていると画像が浮かんでくる。映画のコマのような情景で頭に映ってくるので、関わりやすいと思う。
この映画の脚本は、森下佳子。ドラマ「天皇の料理番」など名作が多い。この作品も、うまさが際立つ。さすがの展開で終わらせている。