名カメラマン木村大作が『剱岳 点の記』『春を背負って』に続く監督第3作として手掛けた時代劇である。原作は葉室麟の同名小説、脚本は『雨あがる』の小泉堯史で映画化。
享保15年。藩の不正を訴え出たため、藩を追われた瓜生新兵衛(岡田准一)。追放後も妻に寄り添い続け、病に倒れた妻・篠(麻生久美子)は、榊原采女(西島秀俊)を助けてほしいと言い残す。采女は、新兵衛と篠をめぐってのかつてのライバルであった。
妻の願いをかなえるため、新兵衛は故郷へ戻る。
過去の不正事件の真相や妻の本当の思いを知る新兵衛だったが、その裏で彼に大きな力がしのびよっていた。
冒頭の岡田准一と麻生久美子のふたりだけのシーンが艶っぽい。新兵衛が悩み苦しんできたことは、そのシーンが終盤との流で答えとなっていく。バックにかかる曲も寂し気、タイトルの『散り椿』で、テンションが上がるというわけにはいかないけれど、激しいドンパチがあるわけではないけれど、この時代によくあった事象なのではないかと思う。
岡田准一と西島秀俊の剣術対決は見どころのひとつ。これからの時代劇はこのふたりが担っていくことになるのであろう、のふたり。
監督は、黒澤明監督を支えてきたカメラマンだった木村大作。奥行のある景色や作り物ではないこだわりの映像続き。大きな展開のある時代劇ではない中で、〝映像で至極の時代劇になっている〟と思わせるところはさすが。出演はほかに、黒木華、池松壮亮、奥田暎二、富司純子など。
キャスト、スタッフのエンドロールは各人の手書き(主要キャストは冒頭にも出る)。それらを楽しみながら、岡田准一がいくつ、どこに登場するか確認しよう。やっぱりそこか!と納得がいくところに直筆が登場する。