夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『散り椿』(試写会)

2018年09月19日 16時44分29秒 | Weblog

場面カット

名カメラマン木村大作が『剱岳 点の記』『春を背負って』に続く監督第3作として手掛けた時代劇である。原作は葉室麟の同名小説、脚本は『雨あがる』の小泉堯史で映画化。

 享保15年。藩の不正を訴え出たため、藩を追われた瓜生新兵衛(岡田准一)。追放後も妻に寄り添い続け、病に倒れた妻・篠(麻生久美子)は、榊原采女(西島秀俊)を助けてほしいと言い残す。采女は、新兵衛と篠をめぐってのかつてのライバルであった。

妻の願いをかなえるため、新兵衛は故郷へ戻る。

過去の不正事件の真相や妻の本当の思いを知る新兵衛だったが、その裏で彼に大きな力がしのびよっていた。

冒頭の岡田准一と麻生久美子のふたりだけのシーンが艶っぽい。新兵衛が悩み苦しんできたことは、そのシーンが終盤との流で答えとなっていく。バックにかかる曲も寂し気、タイトルの『散り椿』で、テンションが上がるというわけにはいかないけれど、激しいドンパチがあるわけではないけれど、この時代によくあった事象なのではないかと思う。

岡田准一と西島秀俊の剣術対決は見どころのひとつ。これからの時代劇はこのふたりが担っていくことになるのであろう、のふたり。

監督は、黒澤明監督を支えてきたカメラマンだった木村大作。奥行のある景色や作り物ではないこだわりの映像続き。大きな展開のある時代劇ではない中で、〝映像で至極の時代劇になっている〟と思わせるところはさすが。出演はほかに、黒木華、池松壮亮、奥田暎二、富司純子など。

キャスト、スタッフのエンドロールは各人の手書き(主要キャストは冒頭にも出る)。それらを楽しみながら、岡田准一がいくつ、どこに登場するか確認しよう。やっぱりそこか!と納得がいくところに直筆が登場する。


『累ーかさねー』

2018年09月08日 11時28分08秒 | Weblog

ポスター画像

松浦だるまの人気コミックの実写化。土屋太鳳と芳根京子という若手実力派女優が共演している。

累ケ淵が原作のヒントになっていることから、この作品の予測をすることができる。

このチラシや予告編などをみて、怖くて観れないと思っている人がいるかもしれないが、そんな作品ではないということを、まず。また、映画「ブラックスワン」を思い出す人もいるかもしれないが、ゾクゾクするとうようなそういう怖さではない。あるいは超人気コミックの「ガラスの仮面」に親しんできた世代の人なら抵抗なく楽しめそう。わかる人にはわかるという雰囲気の作品ではある。

 演技の天才だが、顔に大きな傷をもつ累と、演技に行き詰まった美人女優のニナが不思議な口紅の力でお互いの顔を入れ替える。そしてお互いの欲望を満たしていくが、ある演出家を二人がともに愛してしまったことから、破綻が生じていく。

土屋太鳳は今年1月から行われた舞台『Pluto プルートゥ』が初舞台。だが、この映画の劇中劇がまさに初舞台ではないか(ダンス経験があり、そこでも舞台には慣れているであろうが)とも言えるぐらい、劇中劇が本格的。完全に後半は舞台作品化している。「かもめ」と「サロメ」を演じているのだが、特に「サロメ」の迫力に目を見張る。ダンスで培ってきた土屋太鳳の真骨頂である。「サロメ」の舞台がニナと累の過去と未来を暗示する。嫉妬と羨望という女性が誰もがもつ感情に共感できるかどうか、そして若手女優たちの共演を楽しめるかがポイントともなる。

この作品は観る人を選ぶものであり、とっつき悪さがあるはず。映画というよりは舞台作品的なので、舞台鑑賞をする人は許容できるだろう。映画的にはもう少しドロドロした感じがあってもよかった。が、何度もいうが、劇中劇の「サロメ」は観るに値する。土屋太鳳は制服ものの作品ばかり出ているというイメージが最近はついていたようだが。そう思っていた人ほどこの作品をぜひ。この作品はダークなもの。芳根京子も同様に普段のさわやかなイメージはないが、しっかり演じきっている。

累とニナを引き合わせる男性を浅野忠信が演じる。謎を含んだつかみどろのない役柄がピタリとはまっていた。二人が思いを寄せる演出家は関ジャニ∞の横山裕が演じた。ほかに、村井國夫、筒井真理子、生田智子。また、物語の軸に絡む累の母で往年の大女優を演じたのは舞台経験が豊富な檀れい。監督は『ストロベリーナイト』『キサラギ』の佐藤祐市。

余談であるが、Sia「Alive」日本版ミュージックビデオや紅白歌合戦でも土屋太鳳のダンスの振り付けを担当していた辻本知彦氏が劇中劇の「サロメ」の“7つのヴェールの踊り”の振り付けをつとめている。