夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『すばらしき世界』

2021年02月13日 20時45分13秒 | Weblog

 

すばらしき世界

『ゆれる』『ディア・ドクター』などを手がけてきた西川美和監督。これまで一貫して自身のオリジナル作品を発表してきた監督が直木賞作家・佐木隆三のノンフィクション小説「身分帳」を映像化した。

13年ぶりに出所した三上(役所広司)は、二度と刑務所には戻るまいと今の時代に慣れようと悪戦苦闘する。
見た目は真面目だが、カッとしやすい。親に捨てられ、物心がついたときには、やくざ組織にいた。人生の半分を刑務所で過ごしてきた三上に、若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤(長澤まさみ)が番組のネタにしようとすり寄ってくる。


主演の役所広司は、やっぱりすごい。佇まいからしてオーラ全開。それなのに、映画の中では役所広司ではないのである。
いま生きている世界は、すばらしい世界か?社会問題を取り入れながら、観客に問う。


「ケーキを切れない非行少年たち」(宮口幸治著)では、ホールケーキを3等分にできない子どもたちが多く、感情の表現がほぼ怒りでしかできないなどが紹介されていて、昨年から話題となっている。
また、「塀の中の美容室」(小日向まるこ・漫画、桜井美奈著)では、殺人未遂を犯した女性が刑務所内にある美容室で働く物語。この美容室は一般人も利用でき、偏見を持たれながらも更正を目指していくというものである。

最近読んだこの二冊の本を頭に浮かべながら、更正の難しさを思い、周りが力を貸すことの大切さが重要と知る。

映画では、自分も悪さした若いときがあるという六角精児のスーパー店長、そして自分も家族と辛い経験がありそうな仲野太賀が演じるテレビ局アシスタントの存在が有難い。
また、生活保護担当の職員を演じる北村有起哉の役柄も重要だ。長澤まさみは少ししか出演していないが、物語を動かすポイントとなる。
もともと人は一人では生きていない、誰かの手を借りながら生きている。
滑稽なぐらいの生真面目な男の生きづらさをぜひ観てほしい。

刑務所の外は、すばらしき世界なんですよ!ともっと知れるはずだったとき、それは突然に訪れる。
でも、「すばらしき世界」とはこうして映画館で映画鑑賞ができることでもあると思う。

出演はほかに、白竜、キムラ緑子、安田成美、梶芽衣子、橋爪功など。それぞれが、重要なキャストで、爪痕を残す。


『哀愁しんでれら』

2021年02月07日 15時45分54秒 | Weblog

幸せな家族が引き裂かれた絵画に… 土屋太鳳と田中圭が夫婦役「哀愁しんでれら」不穏なメインビジュアル

児童相談所で働く小春(土屋太鳳)は一夜にして、祖父が倒れ入院し、そこに家が火事、恋人が浮気と不幸が重なり全てを失う。絶望の中を歩いていたところ、酔いつぶれて踏切で動けなくなった男性・大悟(田中圭)を見つけ、助ける。

そこから小春の人生は逆転。一躍、シンデレラのような気分に。助けた大悟は開業医で、前の妻は亡くなり8歳の娘・ヒカリ(COCO)がいたが大金持ちだった。
ヒカリも小春になつき、知り合ってひと月で小春と大悟は結婚。

だが、とたんにヒカリは反抗的となり、小春を悩ませる。しかも、大悟の特異な趣味にも気づくが、馴染もうと努める。
だが、夫に合わせた生活は徐々に小春の心に歪みを生じさせていた。

土屋太鳳は、この作品のオファーを3回断ったという。だが、小春は作品で生きたがっているのではないかと思え、受諾した。オープニングの踏切のシーンは、ごちそうの金額を当てる番組で、クビになったあとに撮影されたとのこと。このバラエティー番組も含めて、田中圭とは共演を繰り返している。
朝の連続テレビ小説ヒロイン以降に土屋太鳳を知った人は、闇を抱える役柄に驚くかもしれないが、それ以前の映画『人狼ゲーム ビーストサイド』やテレビドラマでミステリアスなヒロインをしていたことを知っている人にはこの役柄に違和感はないだろう。

今作では、小春は母に捨てられた過去があり、大悟も母親とは不仲。ヒカリもあわせて、三人とも母親の愛情に飢えて育ってきている。

子どもへの愛をどう向けるのか、正解はないが、歪みが歪みだと気づくのか、気づきながらも蓋をして自分たちの価値観を優先させるのか?
ラストの事件をどう捉えるかでこの映画の評価は変わるだろう。

監督は新鋭の渡部亮平。『3月のライオン』や『麻雀放浪記2020』では脚本を努めてきた。
TSUTAYA CREATOR'S PROGRAMFILM2016グランプリ作品の映画化。
出演はほかに、石橋凌、銀粉蝶、山田杏奈など。


もともと大手配給の作品ではなく、大衆向けではない。
作品はかなり振り切ったものになっており、土屋太鳳の新境地かと言われると、そうではなく、彼女自身にはもっと振り切れる作品があると思う。
ただ、この作品の出来としては悪くはないと思うのだが。