夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『少年H』(試写会)

2013年07月18日 09時31分31秒 | Weblog
1997年に発表されベストセラーとなった、舞台照明を手がける妹尾河童の自伝的小説の映画化。テレビ朝日開局55周年作品。主演は水谷豊で、その妻を伊藤蘭が演じる。実の夫婦が、映画でも夫婦役を演じることで話題となっている。原作本を読んだ人も多いだろう。

洋服店を営む妹尾家。母は、敬虔なクリスチャンで、近所でもハイカラな家族だ。
長男の肇は、母が作ったセーターに肇を表すHの文字を刺繍され、友だちからHと呼ばれていた。好奇心旺盛で、曲がったことが大嫌いな肇だった。ご近所の個性溢れる人たちも、肇や肇の友だちには家族のような存在。
オペラ音楽について指南してくれる、うどん屋の兄ちゃん。大衆演劇の女形をやっていた、今は映写技師のオトコ姉ちゃん、吉村さんや柴田さんも優しかった。

しかし、日本は軍国主義の道を突き進む。うどん屋の兄ちゃんは、特別高等警察に逮捕され、オトコ姉ちゃんは招集されて行く。中学に進学した肇だが、学校で行われるのは軍事教練…立派な軍人を育てる訓練…ばかり。やがて、父・盛夫がスパイ容疑で警察に連行され、妹の好子も疎開することになる。
辛い生活に直面しながらも、日に日に肇はたくましくなって…。

キリスト教の信者である一家が、軍国主義のこの時代をどう生き抜くかの視点もあるが、この時代はみんなが貧しく、生きているだけが精一杯だったはず。家族のあり方、地域とのかかわりを見つめ、再び生きるためのそれぞれの思い、子どもたちの夢。柱である父、父の背中を見て成長する子ども。一歩を踏み出す大切さ。そういったことを押し付けがましくなく描いていく。

監督は『鉄道員』などの名作を手がけてきた降旗康男。脚本は『ALWAYS 三丁目の夕日』の古沢良太が務めている。肇を演じる吉岡竜輝が好演している。出演はほかに、小栗旬、早乙女太一、國村隼、岸部一徳など。

余談だが、小栗旬は今期の大河ドラマ『八重の桜』で吉田松陰を演じていたが、早々と姿を消した。そして、この作品でも…訳ありである。

(8月10日、公開)