失明してもなお28年もの長きに渡って書き続けた、原作者・馬琴の
≪実≫話と、小説と言う≪虚≫構の世界である八犬伝の映像で迫力あ
るエンターテインメト作品となっている今作。
里見家にかけられた呪いを解くため、八つの珠に引き寄せられた八人
の剣士たち。その運命をダイナミックに描いた≪八犬伝パート≫と、
その物語を生み出す作家の滝沢馬琴と浮世絵師の葛飾北斎の友情をと
おして描かれる≪創作パート≫が交錯して進む。
八犬伝パートでは、里見義実を小木茂光、娘の伏姫を土屋太鳳が演じ
る。義実に処刑され、孫子の代まで恨みをかける玉梓を栗山千明が演
じている。
八犬士は、犬塚信乃を渡邊圭祐、犬川荘助を鈴木仁、犬坂毛野を板垣
李光人←この人、妖艶女子からの剣客役柄とても多い。でも、今回も
ぴったり、犬飼現八は水上恒司、犬村大角は松尾広大、犬田小文吾は
佳久創、犬江新兵衛を藤岡真威人、犬山道節を上杉祥平がそれぞれ演
じる。馬琴の妻・お百には寺島しのぶ←すごい迫力で馬琴をなじるが、
実は認めているという役どころ、医師を目指すが病弱のため父の執筆
を手伝う息子の宗伯を磯村勇斗、犬塚信乃を慕う幼馴染を河合優実が
つとめている。
キャストを挙げるだけでも疲れるが、、、。
薬師丸ひろ子と真田広之が出演した『南総里見八犬伝』をリアルタイ
ムで劇場で鑑賞したことがある当方。が、この時の映画の中身をほと
んど覚えていない。覚えているのは八犬士が集まることと、真田広之
の腕の中で薬師丸ひろ子が死んでいくところだけ…。←たぶん😰
今回はちゃんと鑑賞できたと思う。
キノフィルム製作の映画。初期のころからの作品を観てきたが、今回
はかなり力をいれてきた。配役はもちろん、VFXを大胆に利用し、迫
力映像ともなっていて、虚と実の転換もわかりやすい。
これまでの№1と言っていいだろう。
約2時間半、それほど時間の長さは感じられない。
何といっても、滝沢馬琴の役所広司と葛飾北斎の内野聖陽。この二人
実の年齢と役の年齢が逆だ。年下の内野が役所より7歳年上を演じて
いる。腰が曲がり90歳になった北斎を内野は演じる。その老け方と在
りようが見事。そして、馬琴の息子の妻を演じるのは黒木華。物語の
途中から画面に登場するのだが、その佇まいが自然で存在がわからな
い。気づいたら黒木華だ!と認識している。着物姿と抑えた演技がし
っくりきていて、うなってしまう。そして、黒木の役、お路が失明し
た馬琴を救うこととなる。役所と黒木、この二人の対峙も見どころの
一つ。
とてもうまくまとまっている作品。106冊という超大作である八犬伝
がとてもわかりやすかった。あえて、あらすじは省く。
原作は山田風太郎の「八犬伝上・下」、監督は曽利文彦がつとめた。
エンドロールでロケも確認してみよう。