夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『軽蔑』

2011年09月26日 17時02分26秒 | Weblog
 ドラマ「おひさま」で大注目の高良健吾。言うまでもないが、彼はドラマではなく映画を中心に出演してきた俳優である。『白夜行』『ソラニン』など、どちらかと言えば個性が強い役柄を演じてきたと言えるだろう。この作品では、資産家の家に生まれながら、真面目に生きようとしない放蕩息子を演じている。
 カズは、地元を離れ東京の繁華街で遊び歩いていた。名家である実家にはお金はたっぷりあったが、親の愛情など感じたことはなく、孤独を抱いていた。新宿歌舞伎町の劇場でポールダンサーをしている真知子は、家族や親戚がおらず、いつも孤独だった。そんな孤独な二人が、愛し合うまでには時間はかからなかった。しかし、カズの親は真知子との結婚に反対。やがて真知子は東京へ戻り、支えを失ったカズは、ギャンブルで借金をつくり、破滅への道を進んでいた。
 原作は、芥川賞作家の中上健次の同名小説。彼が生まれ育ち、愛した和歌山熊野は小説の舞台だ。しかし、映画では地元を限定していない。そのため、カズが生きてきた背景を感じることができない。なぜ、彼はあれまでも屈折した人生を送り、挫折していくのか、疑問のままだ。この映画のこだわりが、掴みづらい。
 高良健吾とダブル主演となる鈴木杏は、家族がいない孤独の中で、ポールダンサーをしながら生きてきた、という女性を演じきった。舞台で演技を鍛えられ、年齢的にも“大人になったなぁ”と感じる。ポールダンスだけでなく、大胆なシーンを次々とこなし、女優魂を見せている。主演女優賞の中に名を連ねてもおかしくない。監督は『余命1ヶ月の花嫁』『雷桜』『ヴァイブレーター』の廣木隆一。今作は『ヴァイブレーター』のようなロードムービー的要素が感じられる。 出演は、カズの父に小林薫、母に根岸季衣。ほかに大森南朋、村上淳など。
(タナベキネマにて、30日まで『まほろ駅前多田便利軒』と2本立て公開中)

『ハウスメイド』(韓国)

2011年09月21日 09時40分21秒 | Weblog
 1960年にキム・ギヨン(故人)監督によって上映された『下女』は、海外でもファンが多い。ひところ、韓国映画と言えば、エロティックだった。その布石を敷いた第一人者といえるかもしれない。この『ハウスメイド』は、キム監督を敬愛する『なつかしの庭』のイム・サンス監督がリメイクしたもの。
 資産家の豪邸で家政婦をすることになったウニ。掃除や洗濯、食事の準備だけでなく、双子を出産する予定の家主の妻・ヘラと6歳の娘・ナミの面倒を見るのもウニの担当である。ウニは、長年そこで働いている先輩家政婦の指導を受けながら、ハードな仕事をこなしていく。そんなとき、家の主であるフンがウニの部屋にやってくる。ウニは、求められるままフンに従う。たった一夜の出来事、のはずだった。
 やがて、ウニよりも先に先輩家政婦がウニの妊娠に気づく。そして、そのことをフンの妻の母・ミヒに伝えてしまう。そこから、子どもを産みたいウニと子どもを産ませたくないフンの妻とその母との緊張関係が続いていき…。妻は無事に双子を出産。ウニのお腹の子は?どう決着を付けるかが注目点。
 ウニを演じるチョン・ドヨンは、『ハッピーエンド』以来の潔いよい脱っぷりで、きわどいベッドシーンを披露。2009年に娘を出産したとは思えない、大胆な演技を見せる。また、演技力は相変わらず安定感があり、揺るぎない。豪邸の主人フンには、イ・ジョンジェ。『情事』で見せたエロの演技を持ってすれば、この役は大したものではなかったか?
フンの妻・ヘラを演じるのは『パジュ』のソウ。ウニの謎の先輩家政婦を演じるのは大ベテランのユン・ヨジョン。ヘラの母には、「恋愛マニュアル まだ結婚したい女」のパク・チヨン。ウニを慕うナミにはアン・ソヒョンという演技派が揃った。
 だが正直なところ、復讐するならもっとちゃんとしてほしかった。映画だし、もっと思い切ったラストでもよかった。意外なラストでそれはそれで驚愕するが、結局、お金持ちはお金持ちのままで、反省の色なしということではないか。それに、ウニが可愛がっていたナミの心に深い傷を残してしまったことは罪つくりだ。
 さて、この作品は最初はR-18だったが、字幕を変更することでR-15指定になった。韓国語がわかる人は、変更部分がわかり、密かに楽しめるかも!?
 (2010年、韓国公開作品)

『日輪の遺産』

2011年09月11日 01時44分05秒 | Weblog
 小さいことの例えだが、日本人はいつから、電車の床に座り込んだり、電車の中で化粧をしたり食事をするようになったのだろう。ダラダラ歩いたり、周りを気にせず、自分に甘く、緩くなったのは、いつからなのだろう…。日本人としての気概、気品や気高さがなくなってきたのは、いつからなのだろう。
 この映画は、まだおよそ60年くらい前にあった話。現代の日本人が先祖から受け継いできたものは何か。先祖が国を守ってきたから、今の自分たちが生をうけてきたということを、魂で感じさせる。
 昭和20年8月10日。陸軍の真柴少佐は、阿南陸軍大臣らに呼び出され、ある密命を帯びる。それは、山下将軍が奪ったマッカーサーの財宝900億円(現在の貨幣価値で約200兆円)を陸軍工場へ隠匿すること。その財宝は、敗戦を悟った阿南陸軍大臣らが、復興支援のために使おうとする資金であった。真柴は、小泉中尉、望月曹長と共に任務につく。そして、勤労動員として20人の少女と、教師一人が集められる。
 勤労の内容について知らされていない少女たちであったが、日本国のために懸命に働く。だが、任務の終わりが見えたころ、少女たちに非情な命令が下される。
 登場人物、どの視点からも見ることができる。軍人として、勤労動員の少女として、また現代の人間として、というように。戦時ものとしての、激しい戦闘シーンがあるわけではないが、スケールのある良作である。
 原作は「鉄道員」「地下鉄に乗って」「蒼穹の昴」の浅田次郎。監督は、『半落ち』の佐々部清。真柴少佐には『武士の家計簿』『ゴールデンスランバー』の実力派俳優、堺雅人。真柴と行動を共にする小泉中尉に福士誠治、望月曹長を中村獅童が演じている。3人の男と少女たちの生き様が、心を熱くし、忘れていた感情を呼び覚ましてくれる。

『セカンドバージン』(プレミアム試写会)

2011年09月09日 17時21分19秒 | Weblog
 NHKのドラマで、衝撃的な艶っぽいシーンとストーリー展開で人気があった「セカンドバージン」。バツイチのキャリアウーマン中村るいと、るいより17歳年下の金融庁エリートとの不倫がテーマ。映画では、シンガポールからマレーシアへ舞台を移し、その後の物語が描かれている。
 突然の別れから5年。中村るいは、出張先のマレーシアで鈴木行を見つける。しかし、何者かに追われていた行は、彼女の目の前で銃弾に倒れてしまう。行は台湾人のヤンとして、闇の世界で生きていた。
 マレーシアの密林にある病院で、生死をさまよう行。彼を必死に看病する、るい。しかし、行は記憶喪失を装い、一人で死んで行くことを望んでいた。そんな行をるいは遠い存在に感じるが、これまでの行との思い出が蘇り…。
 地位も名誉もなくなって手に入れたのは真実の愛。それは命を捧げても惜しくないものだった。
 だが、なぜ行はマレーシアに行かなくてはならなかったか、るいの元を離れるようになったかは、もう少し説明があってもよかったかもしれない。映画を観ているだけではわかりづらい。
 問題は、ラストシーン。議論は噴出するだろう。
 この試写会はプレミアム試写会。主演の鈴木京香と長谷川博己、黒崎監督の3人が登壇した。鈴木京香は長谷川博己について聞かれ「実は天然な人」、一方、長谷川は鈴木のことを「凛として見えるけど、かわいいところがある人」と答えていた。また長谷川は、今作について、「ムンムンとしてモンモンとする」と話していたが(登壇前の控え室でそういう話が出ていたようだ)、まさに、そんな印象である。
 キャストは、テレビドラマと同じ。中村るいに鈴木京香、鈴木行に長谷川博己、行の妻・万理江に深田恭子。瀕死の状態の行も辛いが、それを見守るるいも辛い立場にある。しかも、妻・万理江も行とるいの深い愛を認めざるを得ず、かなり辛い。テンポ良く画面が切り替わってハラハラドキドキするとか、そういうことはなく、抑え目の感情で愛情をどう表現するかがポイントになっているのではないだろうか。
 脚本はもちろんテレビと同じ、大石静である。
(なんばパークスにて試写会)

『ハーモニー 心をつなぐ歌』(DVD)

2011年09月07日 17時22分08秒 | Weblog
 『シュリ』で、観客に強烈な存在感を印象づけたキム・ユンジン。アメリカに拠点を置く彼女が、韓国らしい強い母を演じる。この映画で描かれてるのは、母から子への無償の愛と、人間の尊厳とは何か、死刑とは何かということ。深いテーマについて考えさせられることになるだろう。韓国映画史上初めて、チュンジュ女子刑務所から許可を得て撮影を行った。2010年韓国で公開され、300万人が涙したと言われている。なんだかんだ言っても、キム・ユンジンの演技が素晴らしい。特筆ものなのである。
 冒頭は女囚の出産シーン。これが最後まで重い意味を持つことになる。韓国の女子刑務所では、女囚が出産した場合、18ヶ月はともに過ごすことができる。そのあとは親戚に預けるか養子縁組みをするかしかない。それがわかった上での刑務所での生活となる。
 お腹の子を守るため、DVの夫を殺してしまったジョンへ。懲役10年の刑を言い渡される。ジョンへも、同室の女囚たちも重罪犯。女性が犯す罪のほとんどには意味があると言われるが、ここにいる女囚たちもそうだ。浮気夫とその相手を車でひき殺したムノク、夫と子ども二人の生活を守るため詐欺を働いたファジャなど。重罪ではあるが、凶悪ではない罪…。
 ある日、ジョンへはコーラス隊を作りたいと所長に持ちかける。だが、そういうジョンへは音痴。ジョンへの子どもミヌも、ジョンへの子守歌を聞くと泣いてしまうほどだ。
 だが、ジョンへは根気強くメンバーを集め、かつて音楽の先生をしていたムノクに指導を頼むこととなった。何かあるとけんかを始めてしまうメンバーと音痴のジョンへのせいで、なかなかうまく練習が進まない中、仲間意識も生まれてくる。ジョンへは、合唱団を成功させて、ミヌとの特別外泊の権利を得るという目標を立てていた。
 そして、刑務所内での合唱団の御披露目で、合唱団は大成功を治める。成功のご褒美に特別外泊の許可がジョンへに与えられる。つまり、それはミヌとの別れの時でもあった。
 4年後、ソウルで行われる市民コーラス大会に特別参加することになったジョンへたち。ここで、彼女たちは社会の光と影を知ることになる。だが、ジョンへたちの合唱団は観客を魅了するまでになっていた。
 そこに13年ぶりの死刑執行の命令が下る。最近の凶悪犯罪への見せしめのためだ。そして、刑務官がジョンヘたちの部屋へやってきて…。
 罪とは何だろう、ラストになるほど、自然と涙が溢れてくる。泣いて下さい。出演はキム・ユンジンの他に、死刑囚のムノクには大ベテランのナ・ムニ。義父の性的虐待から逃れようとして義父を殺してしまったユミに『TSUNAMI-ツナミ-』のカン・イェウォン。合唱団ではピアノを引く担当になる刑務官に、「太王四神記」のイ・ダヒ。詐欺罪を働いた女囚・ファジャには「シティーホール」のチョン・スヨン。監督は『デュエリスト』や『TSUNAMI-ツナミ-』で助監督をつとめ、今作が長編デビューとなるカン・テギュ。

『神様のカルテ』

2011年09月07日 10時35分48秒 | Weblog
 「神様のカルテ」は、全国の書店員が選ぶ“本屋大賞”に史上初のシリーズ作品2年連続でノミネートされた。現役医者でもある夏川草介のデビュー小説である。
 松本の民間病院で35時間勤務という激務の中、働き続ける内科医・栗原一止。ある日、上司の薦めで大学病院の研修に参加する。そこで診察にもあたった一止は、ガン患者の安曇と出会う。
 研修後、また日々の暮らしに忙殺される中で、ある末期ガンの患者が一止の下にやってくる。命を救うこととは?人を救うこととは?一止は、自分と向き合うこととなる。
 『神様のカルテ』というのは医者目線での神様のカルテではなく、患者の心で受け取る神様のカルテ。すなわち、患者が、自分を担当している医師への評価なのだ。じんわりと心を打つ、いい映画である。全体的な流れも良く、泣きポイントもある。それぞれの人たちの気づきと旅立ちがテーマでもあるだろう。
 ただ、おそれずに言うならば、実に惜しい。主人公・一止の役を櫻井翔ありき、でキャスティングしたのかもしれないが、一本調子な台詞回しが映画の出来映えを一枚下げている。映画は総合評価されるものであるならば、実に惜しいとしかいいようがない。脇を実力派が固めていて実力どおりの、演技力を発揮している分、一人の演技が目立ってしまう。
 一方で、加賀まりこの演技には胸が締め付けられる。人としてどう生きて、死んでいくのか、難題を提示されているようだ。一止へ宛てた手紙を読み上げる場面はクライマックスである。
 配役は、殺人的スケジュールで診察に当たる医者・栗原一止に櫻井翔。一止に寄り添い、暖かく見守る妻・榛名に宮崎あおい。脇を固めるのは、末期ガン患者に加賀まりこ。一止の上司に柄本明、一止の同期で同僚の看護師に池脇千鶴。
 監督は、『白夜行』『洋菓子店コアンドル』などで注目を集める若手監督、深川栄洋。映像美にこだわる監督の姿勢が今作にも表れている。 

『うさぎドロップ』

2011年09月05日 09時58分20秒 | Weblog
 子役の演技が上手すぎるというのも、ハナにつくものだ。天才子役という表現も、時に商業的な臭いを感じさせることがある。個人的には、動物、子どもが出演している作品は内容が読めるので極力観ない。と、ここまでハードル上げて、さて、『うさぎドロップ』。
 一人暮らしをしていた大吉の祖父が亡くなった。葬儀には、大吉の両親、おじ、おばなど一同が集まる。だが、そこには祖父の孫のような娘・りんがいた。
 大吉には娘のようなりんは“おば?”だ。葬儀の場にいた親戚誰もが、りんの存在を知らず、お荷物扱い。りんも心を開こうとせず、孤独なりんを大吉は引き取ることにする。
 独身で、子どもの育て方などわからぬ大吉だが、保育園を探し、送り迎えするために仕事は定時で終わる部署に変更する。慣れないことにとまどいながらも、充実した生活を送る大吉だったが、りんとの生活が落ち着きを見せたころ、事件が起こる。
 昨今は育児に積極的に参加する男性に対し、“イクメン”なる言葉が使われているが、男性だからとか女性だからということではなくて、現代は子どもを育てにくい環境にあるということが読みとれる。そして、この映画はみんなで支えあうことが大切であること、さりげない生活の中が幸せであるということを問いかける。観るものの心をあたたませる佳作だ。子どもが子どもらしいところもいい。松ケンのイクメンぶりと芦田愛菜の愛らしさに目を離せないだろう。ちなみに、松ケンの同僚を演じる池脇千鶴は、普通に普通の人を演じている。この人、何気にすごいです。
 祖父の隠し子りんを預かる平凡なサラリーマン、大吉に松山ケンイチ。おじいちゃんのような父親を亡くしてしまう子ども、りんに芦田愛菜。りんと同じ保育園に通う男児の母・ゆかりに香里奈。出演はほかに、桐谷美鈴、風吹ジュン、中村梅雀など。監督には、『蟹工船』のSABU。今作は『蟹工船』とは違い、ほのぼの系だ。原作は宇仁田ゆみの同名コミック。