Photo: http://normantour.exblog.jp/m2011-09-01/
「ゴールド」
立ちこめる朝霧の中を歩く、 目の前に広がるは一面のゴールド。
朝の太陽はあらゆる物を輝かせ、それが痛いほど瞳を貫きつつ、時間を停めてしまう。
左の手のひらを広げ、霧を掴んでみる。
同時に、右手の指先で立木の葉に触れてみる。
滑って転げ落ちる滴が指先に冷たい感覚を与え、もう一方は指先からスルリと逃げていく空気。
繋がるようでいて、僕を介して接続できないこの二つは、やがて空に昇り雨となって大地に降り注ぐ。
いつぞやのそれはとても暖かく、 雷鳴を轟かせ、虹を演出しながら僕を洗い流していた。
傘を忘れて、 たったそれだけで泣いていたんだよね、純粋で弱虫だった・・・・
そんな時、「君はまだ知らないことが多いね」と 優しい笑顔を見せながら消えていく積乱雲。
緑から始まる季節の変化は、嵐の訪れを重ねるたびに深くなり、黄から赤へ、そして大地の色になって地中へ溶け込んでいく。
目の前に広がる金色が尚一層輝いて周りが見えない、ただ、それに包まれる事に微塵の不快さはない。 清々しいくらいだ。
あと1時間もすれば景色はいつもと同じになり、時計はまた正確な時を刻みはじめる。
ほんのわずかな時間に起きる変化の中に身を浸すという事、そしてそれをどれだけ幸せに受け取れるか?
知らないことを知る素晴らしさとは、
そう、あのときの積乱雲が僕に教えてくれたことだ・・・・
少しだけずり落ちたバックパックのショルダーベルトを握ると、「ありがとう」と一言だけつぶやき、再び歩き出す。
あの日、雨に打たれていた少年の心のままに・・・・
詩 BY 翔