帆∞翼(セイル バイ ウイング) -太陽そして風と供に- 

海・南風・そして何より”真夏の太陽”が大好きな翔です。

「よろしく!」  

編入試験

2014年10月21日 | Weblog

の結果通知が昨晩届きました。    今回はえらい倍率でして、小柄で教育学部の家の子は体育学部への編入へは難しい可能性があった。

でも、合格!しました  よかったね!

まあ、これまで上から指を折って数えた方が良い程の成績でしたので、特段驚いたとまでは行きませんですが、やはり心配はしていました。

もっとも、 娘と、特に家内はドキドキだったようです。 

短大の2年で 保育士 幼稚園教員、 小学校教員の資格を取得、編入試験が受からなければ、そのまま卒業して臨時採用の教員として来年は小学校の教壇に立つ予定でした。

20才のおちび先生として生徒と接する姿も見たかった気もしますが、この後二年間は中学と高等学校の教員資格取得へ向けて頑張るみたいです。

最終的には私立の母校で先生をやるつもりらしく、 今でもその母校の先生方と交流を絶やさずにいる家の娘。

あと2年、いや2年半という月日を有意義に過してもらいたいと心から願う僕です。

 


「クォーターコイン」 超短編小説 BY 翔

2014年10月21日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

あ~ぁ すっかり濡れちまったな・・・・・・

 
イグニッションキーをOFFにすると同時に、4シリンダーは沈黙する。

 
0 を指したレブカンターを見つつシートから降りると、マフラーに落ちる雨粒がシュッ!という小さな音と同時に、これまた小さな蒸気となり、消えていく。


今日は雨になると 天気予報で言っていたけどね、来ちまった。

ヘルメットを脱いで、 歩いてその店へ近づくと、オシャレなテーブルと椅子の並ぶ小さなウッドデッキの下から 一匹の子猫が出てきた。

僕と同じですっかり濡れている。

メットをデッキの上に置き、僕は着ていたジャケットを脱ぐと、腕の中にそのこを抱きかかえた。 

そしてジャケットを肩にかけて半分左側へずらし、小さな雨よけ空間をつくる。

どうやら捨て猫らしいが、このまま抱いて店の中へは入れない。

 

そのままそっとバイクのところへ戻ると、傾いた車体のシートに半分体を預け、もう一度子猫を見る。

ぶるぶると震えながら、小さな声で幾度か鳴いて、その後は僕の目をずっと見つめている。

首輪が付けられているけど、それには”この子をお願いします”とタグが付いていて、「これじゃ~飼い猫と間違えるだけだろ?」と苦笑する僕。

くたびれたアーリーアメリカン風のその喫茶店には 幌馬車の木製輪がぽつりと置かれ、 上と下に大きなガラスがはめ込まれている古ぼけた木製ドアは、 建物と同じアイボリーに彩られてる。

ただ、所々が剥げていて、木目がそのままむき出しになっている事が、独特の雰囲気を創りだしている。

この店は僕にとって思い出の場所で、「あの日もこんな日だったよな・・・・」、と空を見つめる。

秋の雨は優しくて、同時に冷たくも有り、 「それはね、月の涙から出来ているからなの・・・・」と教えてくれた彼女。 

全て僕のせいだ・・・・今更ながら後悔しても時は戻らない。

こんなに濡れて、と 右手で子猫の背中を撫でると、柔らかい毛の感触が伝わり、同時に吸い込まれていた雨の感覚が手のひらに姿を現す。

無精してハンカチ等を持ち歩かない僕は、それをズボンのポケット辺りで拭うしかないのだけど、何度かやれば少しはこのこも乾くだろうと。

ふと、ポケットの中の感触に気がついた。  数日前に部屋の片付けをしていて、引き出しの奥から出てきたクォーター(25セント)のコイン。

そうだよな・・・・今日、この店に来たのはこれを還す為だった。

といっても相手はもういない。 

手をポケットに突っ込んで握りしめ、取り出しながら開いてみると、銀色に輝くそれが姿を現す。

ぽつぽつと空から落ちてくる滴の一つがその上で弾け飛び、小さな輝きをたくさん造りあげていく。

アメリカのインディアン呪術師が 雨を練り込んだという不思議なコインらしいけど、果たして僕の人生をどう左右してきたのだろうか?なんて考えてみたけど、答えは出てこない。

指さきで、つるつると拭うと、それは満月の輝きと重なる様で、秋の雨は月の涙という言葉が又頭の中をかけめぐる。

コインを指でつまみ、 子猫の体にそっと触れさせ、 喫茶店のデッキの片隅まで歩いていくとそれを置く僕。  

どうやらそれで、思い出は、良き思い出になりそうだなと・・・・ あきらめと満足感みたいな不思議な感覚を、僕にもたらしてくれる。

コーヒーを飲んで・・・・なんて考えていた僕だけど、この腕の中の子猫が温もりを取り戻しながら、僕の体温と中和していく間にそんな思いは飛んでしまった。

一緒に帰るか?と子猫にそっと囁いてみる。

ジャケットを再び着ると胸のジッパーを半分降ろし、 そこに子猫を包み込むと、スタンドを挙げてキーを回す。

再び起動した1300ccのエンジン音は、ドロドロした低いサウンドを地面に這わせ、軽くスロットルを煽ると レブカウンターの針は目の覚めるような早さで動く。

メットをかぶる前にもう一度空を見あげてみると、僕の瞳の中に小さな雨粒が弾け飛んだ。

そしてそれは、なぜか不思議と頬をながれていく。

「あの娘は今、幸せになっているだろうか?」と思うけど 1速に蹴り込んだ際に出るミッションサウンドは、「いい加減に前を向けよ!」と僕にささやく。

そうだよな・・・・  「ありがとう!」と、誰に向けるでも無くぽつりと一言。

クラッチを繋いで走り出した先には、綺麗な夕焼け空がひろがり初め、その中に飛び込んでいく自分がここにいる。