2017年12月、Mark Twainの永遠の名作Adventures of Huckleberry Finn(英国版 1884, 米国版1885)が、名翻訳家の柴田元幸によって刊行された。『ハックルベリー・フィンの冒けん』という書名で。
Ernest HemingwayはGreen Hills of Africa(1935)で“All modern American literature comes from one book by Mark Twain called Huckleberry Finn.”と評したように、この小説に霊感を受けて、J. D. Salinger, The Catcher in the Rye(1951)ほか、これまで多くの小説が書かれてきた。
口語体の語りの可能性を一気に押し広げたこの名作を、柴田元幸はどう訳したか? ぜひ『ハックルベリー・フィンの冒けん』でご確認いただきたい。時に原書とあわせて読むことで、大変な英語の勉強になるだろう。
原文はこのあたりで簡単に見られる。
https://www.gutenberg.org/files/76/76-h/76-h.htm
2017年最後と2018年の最初の日のGetUpEnglishでは、Adventures of Huckleberry Finnを理解する上で重要な、柴田氏も『ハックルベリー・フィンの冒けん』で解説している2つのkey wordについて考えてみたい。
まず、2017年最後のGetUpEnglishでは、この小説に出てくるlonesomeという語について考えてみよう。
この語はAdventures of Huckleberry Finnの中に何度出てくるが、たとえば第8章には以下の描写がある。
自分は殺害されたと装って逃げ出したハックを、父親、サッチャー判事、ジョー・ハーパー、トム・ソーヤ、ポリーおばさん、シドとメアリ、そのほかたくさんの人たちが船に乗って探しにきたわけであるが、それをうまくやりすごし、島で一人でいる場面である。
○Practical Example
When it was dark I set by my camp fire smoking, and feeling pretty well satisfied; but by and by it got sort of lonesome, and so I went and set on the bank and listened to the current swashing along, and counted the stars and drift logs and rafts that come down, and then went to bed; there ain’t no better way to put in time when you are lonesome; you can’t stay so, you soon get over it.
この部分、柴田元幸訳をぜひ参考にしてほしい。(柴田訳に勝る訳ができるとは思えないので、訳出しません。お許しください。)
『ハックルベリー・フィンの冒けん』の「解説」で、柴田氏はこのlonesomeについて、次のように解説している。
lonesome ハックはよく、特にジムと合流する前、この「さみしい」という語を使う。これを根拠に、社会の規範から逃れようとする人間が実は社会を求めている、と考えるのはたぶんハズレである。「さみしい」とハックが言うとき、彼が感じているのは否定的な孤独感、孤立感というより、社会から離れて自然のなかに独り在あることへの豊かな両面感情であるように思える。あえて言えば、死を恐れつつも死に惹かれているような心性が、この一語に凝縮されているように思える。lonesome はいちおうlonely と同義語ということになっているが、lonely にはこのような両義性はなく、その意味で両者はぜんぜん同義ではない。
●Extra Point
lonesomeは日常的には次のように使う。
◎Extra Example
"It'll be lonesome with you gone for a while, but have a safe trip."
"Yeah. May the force be with you, Kyoko."
「あなたとしばらく会えないのはさびしいけど、お達者で。」
「ああ。フォースと共にあらんことを、恭子」
★Extra Extra Point
(all) by one's lonesome([たった]ひとりで、ひとりきりで、独力で)の意味でも使われる。
★Extra Extra Example
"Did anyone help you, Kumi?"
"No, I did it all by my lonesome."
「だれか手伝ってくれたの、久美?」
「いいえ,すべて私がたった1人でやりました」