『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第8回が同紙2021年11月27日号に掲載されました。
『桐生タイムス』の連載も8回目。
今回は『若い読者のための宗教史』(リチャード・ホロウェイ著、すばる舎)について書いてみました。
http://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/211127_uesugi_08.pdf
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編集者で翻訳者としても活躍する上杉隼人さんが英文を交えながら、翻訳という仕事のおもしろさや奥深さなどを、エピソードとともに語ります。今回紹介する本は『若い読者のための宗教史』(リチャード・ホロウェイ著、すばる舎)です。(毎月第4土曜掲載)
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http://kiryutimes.co.jp/announcements/29199/
どうかご覧ください!
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『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(ベン・ルイス、上杉隼人訳、集英社インターナショナル)にインスパイアを受けて製作された映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』(ギャガ配給)が全国で上映中だ。
華やかなアートの世界の舞台裏を描く本映画がAsahi Weekly, November 28, 2021で、対訳で解説、紹介されている(中俣真知子、翻訳、解説)
本日のGetUpEnglishも、昨日、一昨日につづき、Asahi Weeklyの記事から英語を引用しつつ、『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』を考えてみる。
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/ed3567d3a0a7bb610ae860c647fdf15e
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/26bbc89906769b29ac0b7a6a345deb20
オックスフォード大学の美術史家マーティン・ケンプが、『サルバトール・ムンディ』の絵の真正性の判断について話す。
Kemp: Understanding the origins of a picture, you have different sorts of evidence. You’ve got documentation, you know, like a letter of something. You have got provenance, the continuous history of the picture, but in this case you don’t have continuous provenance. And you’ve got what I call “judgement by eye.”
provenance: (芸術作品の)出所、来歴
And you’ve got what I call “judgement by eye.”: 「そこで私の言う「目による判断」と呼ぶものに頼ることになります」とケンプは言う。だが、彼の「目」は頼りになるのか?
ロンドンのナショナル・ギャラリーは2011年にダ・ヴィンチの大回顧展を予定していたが、そこに最後のダ・ヴィンチ『サルバトール・ムンディ』を展示して、世界を驚かそうとした。その前にダ・ヴィンチの専門家に絵を見せて、『サルバトール・ムンディ』はダ・ヴィンチの作品であると確証を得ようとしたのだ。「わからない」「ダ。ヴィンチの作品ではない」という学者も少なからずいたが、オックスフォード大学名誉教授マーティン・ケンプは、これはダ・ヴィンチの作品と積極的に認めた。
ケンプには苦い経験があった。1998年にクリスティーズのオークションに掛けられた「美しき姫君」はダ・ヴィンチの絵にほかならないと主張したが、のちの科学検証によって完全に否定されたの
だ。評判を落としたケンプにとって『サルバトール・ムンディ』の認証は起死回生となるはずだった。
このあたりの事情がベン・ルイス著『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(拙訳/集英社インターナショナル刊)には詳細に記されている。
『サルバトール・ムンディ』は美術品として絵がどれだけ美しいかという問題は論じられることなく、さまざまな人間の欲望が渦巻くなか、どれだけ価値があるか、どれだけお金になるかという視点で見られるようになってしまった。
『サルバトール・ムンディ』はどこに行ってしまうのか?
ぜひ映画をご覧いただきたい。