造反復党劇から分かる美しくない自民党の面々

2006-12-01 07:01:35 | Weblog

 一番美しくない面人(ツラビト)は安倍晋三だろう

 日本テレビで復党が決まった野田聖子にインタビューしていた。

「党と共に汗をかいていきたい」

 「汗をかいていきたい」と言っても、お互いにバスタオル一枚で身体を隠した恰好でサウナに安倍総理と一緒に入って汗をかく――そういった美しくない汗ぐらいしか期待できそうもない。

 テレビ画面は9・11総選挙時の野田聖子の街頭演説のシーンに戻る。支持者・聴衆を前にしてマイクを握り締め、涙ながらの泣き声で「自分の意志を曲げるわけにはいきません」

 郵政民営化反対を貫こうとしている自分の姿勢を必死なまでに訴えている。その姿に感動して一票を投じた有権者がいたかもしれない。

 一旦録画されたり録音されると、あとでウソをついたら、すぐにウソとバレてしまう。そういった技術のなかった時代は、そんなことは言っていないとウソをついても通用しただろうが、ウソを押し通すのが難しい御時世となっている。にも関わらず、平気でウソをつく美しくない政治家・官僚は依然としてゴマンと世に憚ってはいる。野田聖子にしても「曲げるわけにはいきません」と宣言した自らの「意志」をウソにする美しくない姿を見せた。復党は郵政民営化賛成の態度に完璧に「自分の意志を曲げる」美しくない方向転換であろう。

 マスコミもなかなかしつこい。テレビは岐阜市民だという50~60代のオバサンを映し出して、その声を聞く。「自分の身の振り方も信念もコロコロ曲げるようでは、信用できないんわ」といともあっさりと切り捨てる。

 50~60代のオッサン「もう一度対決したらいいんちゃう?」と野次馬気分。

 カメラは野田聖子の復党に反対意志を示す岐阜市民もいることを示した上で、再び野田聖子にご登場を願う。「国民の意見を柔軟に受け入れられるという政治判断をしましたので――」と復党理由を述べさせ、まさに「柔軟」も「柔軟」、身の振り方にも信念にも拘らないこの上なく「柔軟」な美しくない「受け入れ」であることを伝える。

 次にカメラは復党議員の一人、森山裕を映し出す。9・11総選挙時の相当数の支持者らとパレードを行っているシーンである。「郵政民営化反対」の横断幕を掲げた先頭の列に加わって、「ハンタイ、ハンタイ」と全員して連呼しながら拳を突き上げ突き上げ行進していく。

 次は堀内光雄議員の復党釈明記者会見の弁「郵政民営化については、反対と一言も申し上げておりません」と力強い、断固とした調子で言い切る。

 しかし採決の場で反対票を投じたことはウソも隠しもない事実である。反対票は投じたが、「反対と一言も申し上げておりません」とでも言うのだろうか。テレビ報道で知り得た範囲内で言えば、確かに堀内議員が「反対」と「申し上げて」いるシーンに一度も出くわしていないが、総選挙のとき聴衆を前にして「民営化法案は欠陥法案です」と言い切っている録画再生画面が流されている。言っている意味は同じでも、言葉が違えば、「一言も申し上げておりません」になるのだろう。自民党議員にしては、何ともまあ美しい姿であることか。

 釈明記者会見での森山裕議員は「終始訴えてまいりましたことは、民営化そのものに反対しているのではないと言うことで――」と巧妙なすり替え型。

 古尾圭司「全力で安倍政権を支えるということが私の責任であるというふうに思っております」とこれは郵政民営化問題抹消型。郵政問題は決着がついた、安倍政権を如何に支えていくかが現在の重要問題なのだと、郵政問題など最初から存在しなかったかのように遥か彼方の背景に押しやってしまう。

 今村雅弘「まさに安倍首相は命の恩人ということで、全身全霊を上げて、安部総理と共にしっかりがんばっていきたいと――」と信念も美しさも何もない全面おべっか型。

 次いで安倍記者会見。「仲間として一緒に美しい国づくりに汗を流してもらいたい」

 安倍首相は復党議員の釈明記者会見が美しい光景となっていたとでも思っているのだろうか。普通の感覚なら、美しくない光景――と言うよりも、それぞれの出席議員に破廉恥・鉄面皮な印象を持たざるを得ない醜悪なシーンに映ったのではないだろうか。

 そういった、岐阜のオバサンが言っていた「自分の身の振り方も信念もコロコロ曲げるようでは、信用できない」美しくない面々にまで、「美しい国づくり」の仲間入りを願う。美しくない人間が「美しい国」をつくる資格などそもそもからして持っているのだろうか。

 尤も「美しい国」なるアイデアを言い出した本人自体が、自らが掲げていた国家主義的歴史認識を総理総裁になった途端に国家主義を薄めたり、曖昧にしたり、韜晦したり、あるいは誤魔化したりするご都合主義の変節漢を演じる美しくない姿を曝している。これは郵政造反復党議員が演じた「信念をコロコロ曲げる」と同じ線上にある同質の美しくない無節操・無節度であろう。本人自体が美しくない政治家の一人なのである。

 また自民党議員の多くは今年9月の総裁選で政策の違いや政治理念の違い、立場の違いを無視してポスト欲しさから、寄らば大樹の自己保身から安倍支持雪崩現象に信念も何もなく身を任せる美しくない姿を臆面もなく、あるいは恥も外聞もなくさらけ出している、

 自由民主党という政党は美しくない議員で占められていると言っても過言ではない。「美しい国」を言い出した本人が美しくない人間である上に、仲間となって「美しい国」づくりに協力する殆どの面々が同じく美しくない人間ときている。こういった美しくない面々が「美しい国」づくりなどできるのだろうか。ウソつきが正直な国づくりを目指すようなものである。その二律背反性は美しくない人間による「美しい国」づくりにも当てはまる滑稽なまでの二律背反であろう。

 昨日(06.11.29)夜、郵政造反議員復党に反対する新人議員に理解を求める新旧執行部と新人議員との会合が開かれたと言う。新旧執行部だから、勿論小泉前首相も出席している。
「日テレ24」によると、小泉前首相は「造反組の人たちは自分の信念を曲げて土下座したようなものだ。それは認めてはいいのではないか。それをダメという自民党であってはならない」と言ったということだが、信念を曲げる「土下座」行為を情けなく思い、そんな政治家は相手にできないというなら素直に理解できるが、〝認める〟(受け入れる)というプラスの価値に変える発想は非合理性を養分としたご都合主義を動機としていないとしたら、その合理的根拠はどう逆立ちしても理解し難い。復党する方もご都合主義なら、復党させる方もご都合主義であることによって首尾一貫、見事なまでに整合性を成り立たせうるのであって、そういった相互主義がなさしめた「土下座」とそのことに対する「ダメという自民党であってはならない」でなければ、理解という着地点を獲得することはできない。

 番組は新人議員に対する心構えとして、「後で国民に使い捨てられないように復党した人をどれだけ味方につけられるかだ」と新人議員に檄を飛ばしたと解説している。しかしこれは自民党自体に対しても言えることであるが、新人議員とは相反する利害関係を形作る。復党した議員が国民の不評を買って有権者の票を減らせば、新人議員に有利な状況をもたらすだろうが、信念とは関係なしに組織力と土着的人間関係で変わらぬ集票力を見せたなら、自民党にとっては大いなる利益となるが、新人議員には不利に働く。小泉首相の〝檄〟はそこまで考えない単純な情緒論から出たものではないのか。

 安倍首相は会合の後、記者団に次のように述べている。「美しい国をつくるため、一回終止符を打って、広い心を持って協力して欲しいと求めました」

 こうなると「美しい国」はもはや創価学会の南無妙法蓮華経と何ら変わらない念仏の繰返しである。公明党と与党を組んでいる関係で、創価学会づいてしまったのか、口を開くなり「美しい国、美しい国」とお唱えしている。空念仏でなければ、こうも繰返すことはできないだろう。一国の総理大臣にしては美しくない姿だ。まあ、美しくない政治家だから、仕方がないとしなければならないだろうが。

 清水鴻一郎新人議員が「郵政に反対し、信念を貫いた人が、それを降ろして、そして郵政に賛成する、そして反省するってことは、もう白旗を上げたんだと。その人たちに対して、それはもうダメだというような自民党であってはならないんじゃないかと――」と小泉前首相が説く復党容認論を解説していた。

 自民党は度量が広いということだろうか。無節操を受け入れる無節操を演ずることまで度量が広いうちに入る行為だとするなら、例え美しくなくても確かに度量が広いとは言えるが、合理的根拠という点で解答を与える主張ではないことに変わりはない。

 篠田陽介新人議員「私がまだ青臭いのか、まだやっぱ理解できないところが、やっぱあります。ただ、これが政治なのかなあーと」
 
 そう、「まだ青臭い」のです。自民党の一人として、早いとこ美しくない議員の仲間入りをしなければ、有力議員への出世は見込めません。美しくない議員となって初めて、「美しい国」作りのメンバーの資格も得ることができるのです。頑張って第一級の美しくない政治家を目指しましょう。

 「国民から自民党が見捨てられる」という批判も新人議員の間から発せられたそうだが、
美しくない自民党が柄にもなく美しくあろうなどと心掛けたとき、「見捨てられる」危険性が生じるときだろう。人間、柄にもないことをすると、恥をかいたり、予想もしない飛んでもない運命に見舞われることになると言われている。政権交代派にとっては朗報とはなる。

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