公明党本部が年明けの大阪府知事選で自民党の立候補の要請を受け、一旦は「出馬は2万%ない」と否定しながら自らの言葉を裏切って、このことだけで政治家の資格は「2万%」もあると保証される言葉の裏切りだが、立候補を受諾、連立相手の自民党の推薦決定に反して推薦・支持しない方針を打ち出したという日刊スポーツ新聞のインターネット記事≪公明党、橋下氏を推薦せず≫[2007年12月26日21時5分]に出合った。そのあらましを箇条書きにすると、
①公明党大阪府議団は「党本部には推薦を求めない」と全会一致で決定。
自らは推薦「そんなの関係ねえ、オッパピー」で、推薦より一歩引いた
「支持」。
②公明党本部の対応はさらに一歩引いた推薦・支持両方とも「そんなの関
係ねえ、オッパピー」の「自主投票」。
③大阪府議団の推薦見送りの理由「核武装論など、今までの発言に支持者
から反発があった」こと。但し、「府政改革に取り組もうとする熱意を
感じた」として、「支持」はすることに決定。
④大阪府知事選には民主、国民新両党が推薦する大阪大大学院教授の熊谷
貞俊氏(62)と共産党推薦の弁護士梅田章二氏(57)も出馬表明してい
る。
大阪大大学院教授の熊谷貞俊氏はテレビ放映のドラマ「ガリレオ」の主人公堅物の理系教授のイメージと重なることから「阪大のガリレオ」とニックネームで呼ばれるようになったといったことを≪橋下弁護士に強敵、阪大のガリレオ出馬表明へ…大阪府知事選≫(07.12.13/サンスポ)が伝えていたが、学生に親しまれる人柄であることを髣髴させる記事内容となっていて、このように報道されるだけで橋下の「核武装」容認論やテレビで見せる軽っぽい印象(人間まで軽いと見るかどうかは人それぞれの判断にかかっているが)との比較対照を受けて民主党に有利に作用する選挙戦となる可能性もある。
自民党は柳の下の2匹目のドジョウを狙ったのではないだろうかと勘繰れないことはない。宮崎知事選でお笑いタレントのそのまんま東に自党推薦候補が痛い敗北を喫した。笑いを売って人気を得ている同じテレビタレントの、しかも大阪育ち、法律事務所も大阪市内に開業の肩書きも見栄えがいい弁護士ということで票獲得が望めるのではないか、宮崎県知事選の痛い失敗を反面教師として知名度をテレビタレントに求めて起用という点での2匹目のドジョウカードを引いたという疑いである。
自民党が橋下弁護士に立候補の要請をしたという形を取っているが、連立を組む公明党に何ら相談もせずに独断で進めた話なのだろうか。そうだとしても、新聞・テレビで報道された時点で公明党の知るところとなった擁立話であろう。異を唱える場面が何ら見受けられなかったということは、例え自民党単独で進めた話でも、決定したことは大勢を占めることになる。
橋下弁護士は一旦は固辞したものの立候補を受諾。自民党の方から立候補を要請した関係から「推薦」は当然の待遇だが、与党の一角を占めている公明党としても、少なくとも橋下擁立を見守っていた都合上、自民党に準ずる待遇が必要となる。当然「推薦」でなければ異を唱えなかった経緯から判断して奇異な態度となる。
ところが公明党は本部は推薦も支持も見送り、大阪府議団のみが「推薦」ではなく、一歩距離を置いた「支持」のみの自民党に対する親近性に反する待遇という逆説性を帯びることとなった。
なぜ公明党は橋下立候補受諾決定後、このような自らの党としての態度を白日の下に曝したのでは選挙戦に不利に働く要因となるのは明白なのだから、何ら相談がなかった擁立話だと百歩譲ったとしても、自民党が橋下擁立を進めている間に擁立決定の場合の自らの態度を暗々裏に示さなかったのだろう。
公明党は自民党まで不利な状況に巻き込む〝隙間風〟を敢えて演出することとなった。
自民党が橋下擁立話を進めている間は何ら異議申し立てもせずに沈黙を守っていたということは言ってみれば自民党にお任せの態度だったというわけである。任せておきながら、決定後の態度は自民党お任せでないのは矛盾する。裏切り行為とも言える。矛盾、あるいは裏切りを敢えて犯した理由を考えるなら、橋下擁立決定後の「阪大のガリレオ」熊谷貞俊氏の民主党による擁立以外、要因を挙げることはできない。
いわば、民主党の「阪大のガリレオ」擁立が変えた公明党の自民党に対する矛盾行為・裏切り偽行為ということではないだろうか。と言うことは最初は勝てると踏んだタレント候補だったが、それが「阪大のガリレオ」立候補受諾以後「勝てる」がいささか怪しい状況となった。少なくとも「勝てるだろうか」と疑心暗鬼を持たざるを得なくなったといったところかもしれない。
つまり橋下弁護士は確かにテレビタレント弁護士としては人気はあるが、その発言に批判も多いのに対して大衆が自らに縁遠い資質であるゆえに彼らの憧れを擽る知性と教養を纏っているとおぼしき「阪大のガリレオ」などと称される強力なライバルが民主党候補として突如登場した。
いわばテレビの世界で通用させてきたお笑い系のタレント性を選ぶか、大学や大学院という教養世界で通用させてきた知性と教養のタレント性を選ぶか、どちらも大衆好みの選択肢が二つ示された結果、支持が片一方に偏ることは難しい状況となり、当落は予断を許さなくなった。
その上、ただでさえ自民党人気は下落傾向にある。現大阪府知事の大田房江が3期目の続投に意欲を燃やしていたが、「政治とカネ」にまつわる疑惑の浮上等で前2回支持してきた自民党・公明党・民主党などが不支持を表明、2期8年間お仲間だった太田自身の3期目の立候補を詰め腹を切らす形でお仲間から外す失態を演じてもいる。
そういった不利な状況下で、民主党の「阪大のガリレオ」擁立によって公明党は橋下擁立が選挙で失敗に終わった場合のなおさらのダメージをも視野に入れなければならない楽観できない後のない場所に立たされたと計算したのだろう。毒を食らわば皿まで、一蓮托生で自民党と運命を共にするか、それとも例え冷たい仕打ちと恨まれても、完全に別れることはできないのだから、せめて一歩距離を置くことでダメージを最小限にとどめる策をめぐらすべきか。
それが後者の公明党本部は「自主投票」の決定、公明党大阪府議団は「推薦」ではなく一段ランク下の「支持」で可能性の高い落選という最悪の事態から受けるダメージに備えた距離の取り方というわけなのだろう。
いわば選挙を戦わずして双方の候補者を見比べ、当落を予想して逃げたのである。民主党候補と比較して確実に勝てると計算したなら、連立与党を組んでいる自民党が擁立した候補者である、誰が党本部は「自主投票」、府議団は「推薦」ではなく「支持」といった距離の取り方をするだろうか。公明党らしいと言えば公明党らしいが、なかなか計算高いではないか。「機を見るに敏」と言うよりも、まさに「機を見て逃げるに敏」と形容した方がふさわしい。
自民党と連立を組んでいながら、選挙カーの上に立つのは自民党幹部や閣僚のみで、大田公明党代表も冬芝国土交通相も北側幹事長も立たず、マイクも握らない奇妙な光景が演じられることになるのである。
橋下タレントが落選した場合、自民党が貧乏クジを引くことになる。いや、公明党が自民党だけに貧乏クジを引かせると言った方が正確である。
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参考までに日刊スポーツ記事とサンスポ記事を引用。
≪橋下弁護士に強敵、阪大のガリレオ出馬表明へ…大阪府知事選≫(サンスポ/07.12.14.検索)
<年明けの大阪府知事選(1月10日告示、27日投開票)で、民主党から出馬を要請されていた大阪大大学院工学研究科教授の熊谷貞俊氏(62)は13日、出馬する考えを同党の大阪府連幹部に伝えた。府連は14日に熊谷氏の推薦を決め、党本部に申請する運び。
また熊谷氏は13日午前、大阪府豊中市の自宅前で報道陣に「大きな会見をします。17日にパーティーがあるでしょ」と語り、17日に大阪市内で開かれる府連主催の政治資金パーティーで、正式に出馬表明する意向を明らかにした。
熊谷氏は昭和43年、東大工学部卒業。大阪大学大学院基礎工学研究科などを経て平成2年に教授に就任した。テーマはロボットの「知能」。非線形回路理論など専門分野の言葉は難解そうだ。
堅物の理系教授のイメージはまさに、フジテレビ系の月9ドラマ「ガリレオ」で俳優の福山雅治(38)が演じる大学の物理学科の准教授、別名・変人ガリレオと重なる。そこで熊谷氏についた異名が「阪大のガリレオ」だ。
府知事選ではこれまでに共産党推薦の弁護士、梅田章二氏(57)、タレントで弁護士の橋下徹氏(38)らが立候補を表明。橋下氏は平成15年から日本テレビ系「行列のできる相談所」など全国ネットの番組に出演、抜群の知名度で選挙戦をリードするのではとの下馬評が流れていたが、そこへ民主党の支援を受ける「阪大のガリレオ」が出現。選挙は一転、誰が勝ってもおかしくない大混戦となる可能性が高まった。>
≪公明党、橋下氏を推薦せず≫[日刊スポーツ/2007年12月26日21時5分]
<大阪府知事選で公明党幹部は26日、推薦を求めている弁護士でタレントの橋下徹氏(38)の推薦、支持はしない方針を明らかにした。党本部の正式対応としては「自主投票」の形。ただ地元組織の対応は大阪府本部の判断に委ねる考えで、大阪府議団は「支持」を決めた。
推薦する予定の自民党とはずれが生じることになり、公明党の組織力に期待していた橋下氏の選挙戦略は見直しを求められそうだ。
この日の公明党府議団総会では「党本部には推薦を求めない」と全会一致で決め、府本部代表の白浜一良参院議員も了承した。
推薦見送りの理由について野田昌洋幹事長は「核武装論など、今までの発言に支持者から反発があった」と説明。ただ府議団は「府政改革に取り組もうとする熱意を感じた」として、橋下氏を「支持」することとした。
自民党は大阪府連が23日に推薦を決め、党本部も正式決定する見通し。公明党が「府議団の支持」にとどめたことに自民党府議団の朝倉秀実幹事長は「公明党が一緒に力を合わせて戦ってくれることに変わりない」と話した。
橋下氏は芸能事務所を通じて「支持していただき公明党府議団には大変感謝している」とコメントした。
大阪府知事選には民主、国民新両党が推薦する大阪大大学院教授の熊谷貞俊氏(62)と、共産党推薦の弁護士梅田章二氏(57)も出馬表明している。>