小沢訪中「言うべきことは言う」/何を言うのか?

2007-12-07 09:26:36 | Weblog

 中国と向き合うということはミャンマーとも向き合うことを意味する。分かっているのかな、小沢クン

 民主党の小沢代表が6日(07年12月)中国訪問に旅立ち、夜に中国政府要人と早速会談している。菅直人代表代行や山岡賢次国対委員長、羽田孜最高顧問ら党幹部を含めた衆参国会議員45人と党支持者ら約400人以上が同行したということだが、総勢500人に近いビックリするほどの大所帯だ。

 政権交代した場合に備えて、中国にも顔が利くということを予め国民に示しておく狙いもあるのだろう。中国に旅立つ前に小沢民主党代表は「アメリカにも中国にもニコニコ笑って揉み手するだけじゃバカにされる。言うべきことは言う」といった勇ましいことを言っていたが、「言うべきことは言う」は追随とは反対の主張の意志を示したもので、そこには要求の意味が含まれる。何を要求するのだろう。

 総勢500人近くで大挙して押しかけるというのは、その中に政治的実力者であることと比較した場合の有象無象も含まれている。敗戦直後連合軍が日本に進駐したように中国に進駐するわけではない、地盤沈下の目も抱えた日本から世界の中で地位が急上昇中の大国化しつつある中国へ出かけるということも考え併せると、要求と言うよりも、その反対のお願いに近い中国詣での印象を与える訪中に思えて仕方がない。

 小沢民主党が政権を獲得した場合、自民党政権時代と同様に経済面では共に栄え、共に失速する運命共同体の関係にあっても、外交面で自国の共産党一党独裁政治との近親性から関係国の政治体制を無視、民主主義・人権抑圧に不感症の対外姿勢が日本の民主主義の国益・利害に反して外交上のネックとなる事態が想起される。

 そういった事態が起きてから、民主化に向けた中国の働きかけを求めたとしても、今回のミャンマー民主化要求デモで見せたようにさしたる効果を見ないだろう。中国自体が民主化に進まなければ、その影響力は自国の共産党一党独裁体制に準ずるからだ。ウソつきが同じウソつき仲間にウソはやめろとは言えないのと同じ構図を取る。下手に言ったら、自分もウソつきを廃業しなければならなくなる。それではウソつきにしたら格好がつかないし、困るだろう。

 また相手国も国際世論を無視し、似た者体制国家として中国を味方に引き入れ、中国を楯にして国内の民主化運動を抑圧するすだろうことは既にミャンマーが証明している。

 となれば、政権獲得を視線に把えた小沢訪中であるなら、共通の関係国の民主化運動に備えた外交上の前以ての危機管理として、早いうちから中国に対して民主化を促す何らかの牽制を行っておくべきだろう。

 それともそんな意識は全然なく、例えミャンマーで今年9月に起きたと同じような民主化要求デモが発生しても、自民党政府が見せたような結果として独裁体制を援護することになる表面的な取り繕いでやり過ごそうということなのだろうか。

 だとしたら、何も変わらないだけではなく、民主国家として「言うべきことは言う」ことにならないだろう。それとも「言うべきことは言う」の〝要求〟の中に中国民主化進展要求もミャンマーの民主化に向けた中国の影響力行使要求も入っていないということなのだろうか。

 対米追随はしないということは、アメリカの対中民主化要求に日本は言いなりに追随して中国に民主化を求めるようなことはしないということを意味する対米追随拒絶反応ということなのだろうか。だとしたら十分に納得できる。

 05年11月のブッシュ訪中でブッシュは胡錦涛に直接民主化を求めている。
 ブッシュ「中国で社会、政治、宗教の自由が広がるこことが重要だ。より大
     きな自由に向けた歴史的転換を中国が継続するよう求める」
 胡錦涛「中国独特の民主政治を絶え間なく築いていく」
 (05.11.21『朝日』朝刊≪米大統領 中国に自由拡大促す 胡主席と会談 社会・政治・宗教で≫)(共同記者発表)

 ブッシュ「健全な社会とはすべての信仰を歓迎し、人々に宗教を通じた自
     己表現の機会を与えるものだ」
  (05.11.20東奥日報≪米中首脳会談/経済緊密、揺さぶりに限界≫)

 訪中に先立つ訪日時の日米首脳会談後の記者会見。
 ブッシュ「民主主義が拡大すればするほどこの地(中国)は良くなる。中
     国に言いたいのは自由な社会こそ良い、信仰の自由を持つのが成
     熟した社会ということだ。中台問題では一貫してメセージを送っ
     てきた。この問題は平和裡に解決されねばならない」
  (05.11.17『朝日』朝刊≪日米首脳記者会見≫)

 <大統領は、米国のアジア政策について別のところで演説した。中国に民主化を促し、国際社会でより重要な役割を担ってもらおう。繁栄するアジア太平洋地域に米国は太平洋国家として参画していきたい。こうしたことを話し合うために、私はアジアにやって来たと。>
  (07.11.17『朝日』社説)≪日米会談 同盟礼賛で済むのなら≫

 見出しの「同盟礼賛で済むのなら」は「日米関係が良ければ良いほど、中国、韓国、アジア諸国をはじめ世界各国と良好な関係を築ける」と首脳会談後語った小泉首相(当時)のアメリカ頼みの他力本願・対米追随を批判した意味を込めている。

 今年(07年)9月に開催されたオーストラリアのシドニー開催のアジア太平洋経済協力会議で08年の五輪開催を中国に於ける政治改革の好機と位置づけて、
 ブッシュ「米中間の協力関係は継続するが、これまで同様、われわれが個人の尊厳や自由への信念に多大な価値を置いていることを表明し続けたい」
ブッシュ「(北京五輪は)中国の国民にとって最も誇り高く感じられる時となるだろう。同時に中国の指導者にとっても、さらなる開放性と寛容性を表すことで国としての自信を示す機会になり得る」
   (07.9.7/ AFPBB News)

 05年のブッシュ訪中を受けた答礼外交で06年に訪米した胡錦涛に対してもブッシュは同様の中国の一層の民主化を求めている。

 勿論、アメリカはミャンマーに対しても民主化要求の様々な圧力を加えている。経済制裁、出入国制限等々。だが、ミャンマー民主化は中国がカギを握っている状況に変わりはない。小沢訪中が中国詣での印象を与えることを払拭するためにも、「言うべきことは言う」の重要事項の一つとするためにも、言行一致を日本国民に示すためにも、中国の民主化を促す言葉をかけるべきだろう。

 そうしなければ、アメリカにできることが日本にはできないということになって、その劣位から日本をアメリカに「ニコニコ笑って揉み手するだけ」の姿勢に向かわせることになるだろうし、勿論、中国にも何も言えないことで「ニコニコ笑って揉み手するだけ」の関係に固定しかねない。

 訪中の総勢500人近い人間を以ってして「ニコニコ笑って揉み手するだけ」で終わったなら、拍手喝采したい程の一大スペクタクルシーンを構成することにはなるが、同時に日本が政治三流国の位置にとどまる記念碑ともなり得る。自民党と何ら変わりはないのだから。

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