昨14日午後、衆院本会議で来年の1月15日までの国会会期再延長を自公賛成多数で可決。自公は補給支援特措法案の衆院再議決に向けてスタートを切った。
福田、石破、町村、その他の自民党所属の政府要職者は一旦打ち切られた海上自衛艦のインド洋での給油活動の再開に反対の民主党以下の野党に対して、「国益、国際貢献を優先させるべきで、国内事情や政局を優先させて世界への責任を放棄しようとしている」といった批判を行ってきた。「これは国際的な公約なのだ」と。
町村「国際社会の一員としての当然の責務」
町村「いろんな意味からわが国の国益に合致した話である」
石破防衛相「日本の国内事情だけで、世界への責任を放棄していいとは思わない」
福田首相「同時多発テロ発生以来、日本も相当な努力をしてきた。国際社会の一員としての責任を果たす姿勢は崩したくない。給油活動はぜひ復活したい」等々。
このような主張の背後に隠した批判はウラを返すまでもなく、補給支援特措法案に反対している民主党以下の野党は国益や国際貢献よりも国内事情を優先させている、参院野党優勢を利用して党利党略に走っているとのご託宣であろう。確か誰かが、日本の国際的立場を悪くしているとも言っていたと思う。
いわば野党に対する批判は同時に補給支援特措法案を成立させてインド洋での給油活動を再開することは日本の国益に適う国際貢献であり、国際的な公約でもあるのだとの宣言でもあった。批判の形を取って、継続的にそのような宣言を行ってきた。
当然のこと、与党は自分たちの宣言どおりの国益・国際貢献・国際的公約実現に添った行動を取らなければならない。国内事情を優先させたり、党利党略に走ったりの行動を取ったりしたら、野党批判は言行不一致の自己矛盾に陥ることになる。国会会期再延長は国益・国際貢献・国際的公約実現に立脚した決定でなければならない。
ところが自民党と与党を組む公明党は当初国会会期再延長に強硬に反対していた。その辺の事情を朝日新聞の≪時時刻刻 首相、決意の「越年」 補給法案再議決へ 対外に約束退路断つ≫(07,12,2朝刊)から見てみる。
<政府・与党が衆院解散・総選挙のリスクを伴う「越年延長」を決断した背景には福田首相の強い決意があった。補給支援特別措置法案を成立させないと、国内外で信頼を失い、政権運営が立ちゆかなくなる――。日増しに強まる首相の危機感を受けて、自民党執行部は会期の再延長、衆院での再議決に向けた環境整備に走り、最後は衆院解散を恐れた公明党を説き伏せた。
(中略)
解散恐れた公明を説得
越年延長、衆院3分の2で再議決といった「非常手段」を決意した首相にとって、最大の難関が早期解散を恐れる公明党の存在だった。
自民党の大島理森国会対策委員長は今月7日、国会内で公明党の漆原良夫国体委員長と会談。再延長の幅について①野党が年内の参院採決に応じることを見越した2週間②野党が引き延ばし戦術に出ても、みなし否決の60日ルールが適用できる1カ月間――などの選択肢を念頭に、1カ月間の大幅延長を持ちかけた。
漆原氏は「国会を長くやればやるほど、守屋武昌前防衛次官をめぐるリスクは高まる。何が出てくるか分からない時間が、それだけ長くなることだから」と周囲に漏らしていた。
守屋前次官が11月15日の証人喚問で宴席に同席した政治家の名前を挙げ、公明党には、疑惑が深まれば法案審議の難航は避けられないとの不安が広がった。民主党の小沢代表が言う「出会いがしらの解散」の可能性も強まってくるというわけだ。
自民党の伊吹文明幹事長がその前日に「問責(決議)は、民主党も解散を決意してお使いになる」と言及したことも、不安に拍車をかけた。ことしは統一地方選と参院選が続き、支持母体の創価学会の選挙疲れしているため、公明党は早期解散を嫌う。11月18日の大阪市長選で与党候補が惨敗した後、創価学会は公明党幹部に解散時期をできるだけ先送りするよう伝えている。
公明党幹部が一斉に再延長や再議決に反発し始めたのは、このころだ。11月27日に冬芝国土交通相が親しい自民党幹部に「3分の2の再議決は絶対反対」とぶちまけた。守屋氏が逮捕された翌日の11月29日の党常任役員会では「再延長すれば、どこかで出会い頭解散が起きてもおかしくない」といった発言が相次いだ。大田代表は同日、都内で開いた自らのパーティーで「できるだけ選挙は来年の秋以降が望ましいといい続けてきた」と訴えた。
不安を抑えるため、大島氏は12月に入ると「早期解散の可能性は低い」という見方を公明党側に伝え始めた。「公明党は解散しなければ再議決に応じる」(自民党幹部)との見通しからだ。
党首会談の前日の10日、太田氏は自民党の古賀誠選対委員長や二階俊博総務会長を訪ね、衆院を解散する状況にないことを確認。再延長の方針を受け入れる腹を固めた。
そして、首相自身が太田氏との党首会談に臨んだ。首相周辺は会談の狙いをこう説明した。「小沢氏との党首会談は、公明党に事前に十分に話をしていなかった。公明党にはトラウマがある。党首間の信頼関係をつくるのが大事だ」
首相は、これまでの「低姿勢路線」をいったんは転換した。だが、来年の通常国会では、予算案や関連法案をめぐり、民主との激突が予想される。首相はいつまでも強気の政権運営で続けられるか不透明だ。>――
「衆院解散を恐れた公明党」
「越年延長、衆院3分の2で再議決といった「非常手段」を決意した首相にとって、最大の難関が早期解散を恐れる公明党の存在だった」
「ことしは統一地方選と参院選が続き、支持母体の創価学会の選挙疲れしているため、公明党は早期解散を嫌う」
「創価学会は公明党幹部に解散時期をできるだけ先送りするよう伝えている」
「公明党幹部が一斉に再延長や再議決に反発し始めたのは、このころ」
「11月27日に冬芝国土交通相が親しい自民党幹部に「3分の2の再議決は絶対反対」とぶちまけた」
「党常任役員会では「再延長すれば、どこかで出会い頭解散が起きてもおかしくない」といった発言が相次いだ」
「大田代表は同日、都内で開いた自らのパーティーで「できるだけ選挙は来年の秋以降が望ましいといい続けてきた」と訴えた」
「公明党は解散しなければ再議決に応じる」
「太田氏は自民党の古賀誠選対委員長や二階俊博総務会長を訪ね、衆院を解散する状況にないことを確認。再延長の方針を受け入れる腹を固めた」
どれを取っても、国益・国際貢献・国際的公約実現から程遠い、「でも、そんなの関係ねえ、オッパッピー」の党益優先・自党貢献優先・党利党略優先――いわば公明党の利害から一歩も出ない公明党という政党に限った個利個略の姿を露わに見せている。
解散の有無が国際貢献その他のキーワードとなっている。解散の目はないと踏んでの再延長反対だから、党利党略・個利個略から離れたわけではない。国益・国際貢献・国際的公約実現の立場に立った行動に変化したわけではない。解散がないだろうからの条件付きの便宜的変身に過ぎない。
自民党は国益・国際貢献・国際的公約実現を言い、与党を組んでいる公明党は解散がないことを条件とした国益・国際貢献・国際的公約実現を標榜する。言ってみれば公明党の国益・国際貢献・国際的公約実現は純粋培養のものではない今流行りの混ぜ物の偽装食品、ご都合主義の見せ掛けに過ぎないと言える。
そういった公明党との連立・同居を許しながら、自民党所属の政府要職者が民主党以下の野党を国内事情を優先させているとか党利党略に走っているとか、政局にしているとか批判するのは明らかに矛盾する。いや、国際的な問題として他のどのような政策にも優先させなければならない最重要課題と位置づけている関係からするなら、公明党との連立・同居自体が国益上の矛盾、国際貢献上の矛盾、国際的公約実現上の矛盾と幾重もの矛盾を自民党は犯していると言える。
「でも、そんなの関係ねえ、オッパッピー」か。しかし公明党程選挙都合の政党は他にはないのではないか。だから、創価学会員以外の支持者を獲得できない。そればかりか、創価学会員からも支持を受けなくなっている。一人の人間を絶対者とするような組織・集団は北朝鮮のキム・ジョンイルを例に引き出すまでもなく、危険で信用できない。
自民党は「自由・民主・人権・法の支配」といった価値観を基本原則とした外交を掲げているが、池田大作という絶対者を頭に戴いた創価学会を支持母体とする公明党と与党を組むこと自体が、自らの基本原則を裏切る行為であろう。それは外交上の便宜であって、国内と使い分けていると言うことなら、永遠に力を持たない価値観外交の宿命を担うことになる。実体は口先だけの価値観ということになるからだ。