世相をなぞっただけで終わる?今年の漢字「偽」

2007-12-13 11:58:39 | Weblog

  人間の行為性を突くなら「劣」を選ぶべき

 日本漢字能力検定協会が「今年の世相を現す漢字」を全国から公募。<9万816通のうち、約18%の1万6550通が「偽」に集中。「何を信じたらよいか、わからなくなった1年。来年こそは看板に偽りなしを」との声が多く寄せられた>(≪今年の漢字は「偽」 清水寺貫主「悲憤に堪えない」≫とasahi.com(07.12.12・9:33)記事が伝えている。

 同日『朝日』朝刊は見出しが≪偽 この1年≫となっていて、asahi.com記事と比べて大分削られている。新聞記事では見出しにある「悲憤」した清水寺貫主の姿は見えてこない。

 「でも、そんなの関係ねえ、オッパッピー」だが(最近オッパッピーづいています)、「偽」が発表されたのを受けて、京都・清水寺森清範(せいはん)貫主が縦1.5メートル、横1.3メートルの巨大な和紙に太い筆で一気に「偽」の字を揮毫したというわけである。

 <ひき肉、白い恋人、赤福、船場吉兆の高級食材……。身近な食への信頼を揺るがせる「偽装」が相次いで発覚し、年金記録や政治資金をめぐっても庶民が「偽り」に振り回された1年を反映した>「偽」だとasahi.comは解説しているが、誰もが予想できる選考経緯であろう。

 要するに世相を単純になぞった「一字表現」に過ぎない。表面をなぞる暗記思考の日本民族だから、仕方のない世相のなぞりなのだろうが、いくら「世相を表す漢字」だといっても、あまりにも月並みで、なぞっただけの一過性で終わりかねない。

 そこで月並み且つ一過性で終わる見本、森貫主の「悲憤」の登場。「こういう字が選ばれるのは、誠に恥ずかしく悲憤に堪えない。分を知り、神仏が見ているのだと自分の心を律してほしい」(同asahi.com)

 そんな月並みな警告で改まる人間行為だと思っているのだろうか。カエルの面にショウベン程の効果もない、単に口にしただけの一過性で終わるキレイゴトに過ぎない。坊主らしい言葉だといえば、坊主らしい言葉だとは言えるが。

 情報社会の情報にどっぷりと浸かった今の子どもたちが悪いことをしたときの警告に「エンマ様に舌を抜かれるよ」、あるいは「お巡りさんに連れて行ってもらうよ」を用いるのとたいして変わらない世の大人たちに向けた役に立たない警告といったところだろう。

 世間が数年来続く世相を「偽」の文字でなぞる。何らかの修行を修めている北法相宗本山の坊主ともあろう者がそれを看板になぞって、それでよしとする。まあ、儀式といえば儀式だが、実世間は我関知せずの好き勝手の横行が続くことになるだろう。もう少しましなことができないのだろうか。

 「浜の真砂が尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」と言ったのは確か白浪5人男の頭目・日本駄右衛門だったと思うが、まさしく人間社会の真理を突いている。「偽」(ぎ=いつわり)は人間の歴史が始まって以来延々と引き継いでいる負、もしくは劣の行為性であろう。それが世の中の状況に応じて人間の見えない陰に隠れたり、あるいは次々と姿を露わにしたりする。政治家から官僚、一般人までが前々からカネに卑しかったのが近年特に卑しくなって、「分を知り、神仏が見ている」なんてことは「そんなの関係ねえ、オッパッピー」となり振り構わなくなった。

 とすると、今年の世相を表す漢字は社会のルールなど無関係、「オッパピー」とばかりに「無関係」が蔓延したことを考えると、「無関係」の方がふさわしいように思えるが、一字でなければならないというなら、「劣」はどうだろうか。

 人間の劣の行為性が最も強く現れ、蔓延した1年ということで、「劣」。それは人間として劣る行為だといった方がより警告的な意味を持たせることができると思うのだが。

 こういったことも「そんなの関係ねえ!オッパッピー」ということなのかもしれない

 参考までにasahi.com記事の引用。

 ≪今年の漢字は「偽」 清水寺貫主「悲憤に堪えない」≫(07.12.12/19:33)

 今年の世相を表す漢字は「偽」――。日本漢字能力検定協会(本部・京都市下京区)が全国から公募した「今年の漢字」が12日、清水寺(同市東山区)で発表された。森清範(せいはん)貫主が、縦1.5メートル、横1.3メートルの巨大な和紙に太い筆で一気に「偽」の字を書いた。
 ひき肉、白い恋人、赤福、船場吉兆の高級食材……。身近な食への信頼を揺るがせる「偽装」が相次いで発覚し、年金記録や政治資金をめぐっても庶民が「偽り」に振り回された1年を反映した。
 同協会の募集に、はがきやインターネットで応じた9万816通のうち、約18%の1万6550通が「偽」に集中。「何を信じたらよいか、わからなくなった1年。来年こそは看板に偽りなしを」との声が多く寄せられたという。
 2位以下も「食」「嘘(うそ)」「疑」など、不信が渦巻いた世相を示す言葉が目立った。森貫主は「こういう字が選ばれるのは、誠に恥ずかしく悲憤に堪えない。分を知り、神仏が見ているのだと自分の心を律してほしい」と語った。

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