日本の大手ゼネコン・鹿島建設がキヤノンの子会社「大分キヤノンマテリアル」のプリンター関連機器生産工場の建設工事を巡って所得隠しをやらかし、なおかつ鹿島に工事を斡旋したコンサルタント会社が受け取った仲介料を無申告、脱税の疑いで捜索を受けたという。そのイキサツを毎日新聞インターネット記事≪脱税疑惑:大分のコンサル会社、所得30億申告せず キヤノン進出事業、鹿島から裏金≫(朝刊/07.12.9)から。
容疑は、<「キヤノン」の大規模プロジェクトを巡り、大分市のコンサルタント会社「大光」(大賀規久社長)が法人税法違反(脱税)などの疑いで東京国税局査察部の強制調査(査察)を受け、大手ゼネコン「鹿島」からの裏金や仲介手数料約30億円を申告していないことが分かった。鹿島も任意の税務調査で数億円の所得隠しを指摘されたとみられる。プロジェクトは投資額約1000億円に及んでおり、同国税局は大手ゼネコンなどを巻き込んだ巨額の資金の流れについて解明を進めている。>
毎日記事は大分市内のコンサルタント会社「大光」の大賀規久社長が用地造成と工場建設では九州のキヤノン関連工事で実績がある「大林組」が当初有力視されていたが、それを覆して2工場建設を鹿島が受注できるよう営業。受注額の約3%を「仲介手数料」として受け取る契約を結び、工場建設に先立つ造成工事は、県土地開発公社から鹿島が76億円余の随意契約で受注したと伝えている。
発注主体である県土地開発公社が自ら随意契約を選択したというなら、「大光」共々県土地開発公社も鹿島から何らかの金銭的利益を受けていた疑いが生じる。
「大光」の大賀社長一個人の意向が入札ではなく、県土地開発公社をして随意契約に向かわせた構図のものなら、その意向は自由な意思決定を妨げる強迫性を持ち、その強迫性に屈した随意契約と見ることができる。
随意契約は発注側か受注側か、どちらが契約金額を随意に設定したとしても、上乗せ金額は余分に支払われるカネであり、余分に受け取るカネであるから、その全額か、あるいは一部を残して発注側(=支払い側)に還流する仕組みを取る。
勿論還流は現ナマの場合もあるし、投資の形を取る場合も、相手が政治家なら、政治資金提供の形を取ることもある。いずれにしても随意契約は何らかのうま味をつくり出す契約方法であることに変わりはない。逆説するなら、うま味があるからこその随意契約なのである。
さらに毎日記事は次のように伝えている。<大賀社長の仲介による鹿島の受注額は、500億円を超えるとみられ、大賀社長側は仲介手数料のほか、鹿島から架空の下請け工事代金や、鹿島が別の下請け業者に水増し発注して作った裏金を受領していた疑いがある。鹿島はこうした不正な資金を巡って、追徴課税されたとみられる。大賀社長が受け取った金は計数十億円に及ぶとみられ、家族名義などで約30億円分の株などが見つかっているという。>
3%の仲介手数料を受け取っていた。たったの3%に見えるが、受け取ったカネが<「鹿島」からの裏金や仲介手数料約30億円>だとすると、単なる口利きで右から左への「裏金や仲介手数料約30億円」である。その〝ちょろい儲け〟のみを取り上げたとしても、大賀社長の強迫性を窺うことができるが、「仲介手数料のほか、鹿島から架空の下請け工事代金や、鹿島が別の下請け業者に水増し発注して作った裏金を受領していた疑いがある」ということなら、この強迫性は相当な威力を持っていたことを窺わせる。
いわば鹿島にしても県土地開発公社にしても大賀社長に対して言いなりになる状況に縛られていたということだろう。彼の持つ強迫性がそれだけ有効だったと言える。
毎日記事が「架空の下請け工事代金」と言っていることは昨10日(07年12月10日)の朝日夕刊≪鹿島6億円裏金作り 大分キャノン工場受注≫が、<鹿島は、第1期の造成工事を地元の建設業者3社の共同事業体(JV)に外注した。ところが、関係者によると、このうち複数の関西の下請け会社を通じて大阪市の業者に外注された約5億円分の工事について、実際には工事の実体が無かった>と言っていることを指すのだろう。
朝日記事は続けて、鹿島が<実際の支払先の説明を拒んだため、同国税局は通常の法人税に加えて40%の制裁課税をした。その上で、不当に課税を免れたとして、重加算税の対象とした>、そして<同国税局は、06年3月期までの2年間で、この使途秘匿分を含む計約6億円分について、実際には裏金として工事にからむ何らかの工作費などに充てられた疑いが強く、税務上は経費とは認められない交際費などで、悪質な所得隠しに当たると認定した模様>と報じている。
「実際の支払先の説明を拒んだ」ということから誰もが判断できることは、やはり自由意思からのものではない、ある種の強迫性を受けたカネの流れであり、そのことが仕向けた〝説明不可能状態〟ということだろう。
当然、その強迫性が威嚇や脅迫に裏打ちされた性格のものか明らかにされなければならない。具体的に言うなら、政治家、あるいは暴力団を背後に控えさせた強迫性、あるいはそれらの名前を利用しただけの強迫性といったことが考えられる。工事を無事にに終わらせたい事勿れ主義から地元暴力団の要求に言いなりになるととかく噂されるゼネコンである。暴力団が政治家に変わること無きにしも非ずだろう。
大賀社長の実兄がキャノン会長であり経団連会長でもある御手洗冨士夫と高校の同級生で、自らも同窓生であることを巧みに利用してデッチ上げた強迫性だとすると、右から左への金額が大きすぎるし、その程度の強迫性と比較した鹿島の対応は危険を犯し過ぎることとなって、矛盾が残る。
参考までに毎日記事と朝日記事を引用。のちのちまで記録しておくために。
≪脱税疑惑:大分のコンサル会社、所得30億申告せず キヤノン進出事業、鹿島から裏金≫(毎日)
<◇所得30億円を申告せず
「キヤノン」の大規模プロジェクトを巡り、大分市のコンサルタント会社「大光」(大賀規久社長)が法人税法違反(脱税)などの疑いで東京国税局査察部の強制調査(査察)を受け、大手ゼネコン「鹿島」からの裏金や仲介手数料約30億円を申告していないことが分かった。鹿島も任意の税務調査で数億円の所得隠しを指摘されたとみられる。プロジェクトは投資額約1000億円に及んでおり、同国税局は大手ゼネコンなどを巻き込んだ巨額の資金の流れについて解明を進めている。
プロジェクトは、キヤノンが03年以降、大分市東部の丘陵地帯に建設したデジタルカメラ生産子会社「大分キヤノン」と、プリンター関連生産子会社「大分キヤノンマテリアル」の2工場。
関係者によると、大賀社長は、用地造成と2工場建設を鹿島が受注できるよう営業。受注額の約3%を「仲介手数料」として受け取る契約を結んだ。工場建設では当初、九州のキヤノン関連工事で実績がある「大林組」が有力視されていたが、これを覆した。
工場建設に先立つ造成工事は、県土地開発公社から、鹿島が76億円余の随意契約で受注した。
大賀社長の仲介による鹿島の受注額は、500億円を超えるとみられ、大賀社長側は仲介手数料のほか、鹿島から架空の下請け工事代金や、鹿島が別の下請け業者に水増し発注して作った裏金を受領していた疑いがある。鹿島はこうした不正な資金を巡って、追徴課税されたとみられる。大賀社長が受け取った金は計数十億円に及ぶとみられ、家族名義などで約30億円分の株などが見つかっているという。
大賀社長は、実兄が御手洗冨士夫・キヤノン会長と高校の同級生で、自らも同窓であることなどから、親しい関係にあるという。大賀社長の警備会社が両工場の警備を請け負っているほか、関連会社も含めてキヤノン関連の仕事を受注。鹿島が絡む工事では、下請け業者を決めるなど強い影響力があるという。
大光は、8日までの毎日新聞の取材要請に回答していない。鹿島は「個別の工事や税務についてはお答えできない」としている。
大光は90年12月設立で、民間信用調査機関によると従業員は6人。キヤノン関連工事の下請けや不動産開発が主な業務で、06年9月期の売上高は6億4300万円。
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■ことば
◇コンサルタント会社
一般的には設計業務や会社経営など、各専門分野での業務支援を目的にした会社。一方、公共工事の入札情報を聞き出したり、特定の業者が受注できるよう働き掛けを行ったケースもある。鈴木宗男衆院議員の汚職事件(02年)を巡っては、大手の「日本工営」幹部が、北方領土の施設工事で入札情報を鈴木議員の秘書に漏らしたとして、偽計業務妨害罪に問われた。「業際都市開発研究所」の事件(02年)では、同社社長が政界人脈などを生かして、業者の受注を自治体に働き掛けるなど「口利きビジネス」を行い、贈賄罪などで有罪が確定した。>――
≪鹿島6億円裏金作り 大分キヤノン工場受注 国税局指摘≫(朝日)
大手精密機器メーカー「キヤノン」(本社・東京都大田区)の大分市内のプリンター関連機器工場建設をめぐり、工事を受注した大手ゼネコン「鹿島」(同港区)が下請け業者への外注費を装って裏金を工面していたとして、東京国税局に約6億円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。うち約5億円の使途について鹿島は最終的な支払先を明かさなかったため、使途秘匿金として制裁課税を受けた。経理ミスなども含めた申告漏れの総額は三十数億円で、同国税局は重加算税などを含めた約3億円を追徴課税した模様だ。
この工事は、キヤノンの子会社「大分キヤノンマテリアル」のプリンター関連機器生産工場の建設工事。鹿島は、第1期工事として工場用地の造成を、土地を所有していた大分県土地開発公社から約28億円で請け負った。県の資料などによると、工場の建屋建設のための第2期工事と合わせた投資額は少なくとも約800億円に上る。用地は造成後、約50億円でキヤノンに売却された。
鹿島は、第1期の造成工事を地元の建設業者3社の共同事業体(JV)に外注した。ところが、関係者によると、このうち複数の関西の下請け会社を通じて大阪市の業者に外注された約5億円分の工事について、実際には工事の実体が無かったという。
鹿島は、実際の支払先の説明を拒んだため、同国税局は通常の法人税に加えて40%の制裁課税をした。その上で、不当に課税を免れたとして、重加算税の対象としたという。
同国税局は、06年3月期までの2年間で、この使途秘匿分を含む計約6億円分について、実際には裏金として工事にからむ何らかの工作費などに充てられた疑いが強く、税務上は経費とは認められない交際費などで、悪質な所得隠しに当たると認定した模様だ。
また、大分市の二つのデジタルカメラの工場の建設工事を、キヤノン会長で日本経団連会長の御手洗冨士夫氏の知人が経営する大分市内のコンサルタント会社が鹿島にあっせんし、手数料として鹿島から計約4億円が支払われていたことも分かった。
またこの社長が経営する大分市の別の会社も、キヤノンの川崎市のプリンター関連研究施設など三つの大規模工事を鹿島にあっせんした謝礼として、鹿島から約9億円の手数料を受け取ったという。
御手洗氏とこの社長との関係についてキヤノンは、「高校の後輩でもあり、友人に近い関係。会食で一緒になることもあった」などと説明している。
大分市のプリンター関連機器工場は今年1月に操業開始。世界各地に向けてトナーカートリッジとプリンター用インクタンクを製造している。隣接するデジタルカメラの工場と合わせた投資総額は計1000億円を超える。
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鹿島広報室の話 国税当局の調査には協力しており、当社の納税はすべて終了した。個別の案件についてはコメントできない。>――