脳梗塞で倒れた小渕首相に代って最初の首班指名を国会ではなく密室で当時の自身も含めた自民党5人組のうち、4人から受けて、2000年4月5日から2001年4月26日まで長きに亘って約1年間総理大臣を務めた、大和民族代表、知性溢れる森喜朗元首相の長男森祐喜容疑者、県会議員にして45歳の大の大人が飲酒運転してコンビニに突っ込み、警察に逮捕された。
飲酒運転車でのコンビニ突入敢行は2010年8月7日午前10時20分頃(この日を日本の祝日にしてもいいくらいだ)。同7日夕方には県会議員辞職願を石川県議会に提出し、遺留されることなく直ちに(?)受理された。一日経たずしてのこの出処進退は素早過ぎないだろうか。
勇気あるコンビニ突入の一報は日本の政界に目にも眩しく燦然と輝かしめている経歴の持主たる父親に直ちに伝えられたに違いない。その輝かしい経歴によって日本の各界、各方面に日本国家に貢献する一方の隠然たる影響力を持つ元首相である。確かに飲酒事故という世間の目に触れてしまった不祥事ではあっても、元首相にしたら、国政と地方政治の違いはあったとしても、同じ政治の道を歩む自分の息子、長男である、父親の世の中を良くすることに関しては力を発揮する隠然たる影響力を以ってして完璧に揉み消すことまではできなくても、本人に記者会見を開かせて直立不動で頭を深々と下げさせる日本特有の儀式で平謝りに謝らせて、何とか県会議員の身分にとどませることのできる何らかの善後策を講じてもよさそうなものだが、8月7日午前10時20分頃コンビニ突入後、警察は〈現場が公道上でなかったため現行犯逮捕せず、署に同行を求めて午後5時過ぎ逮捕〉(《酒気帯び容疑で森県議逮捕》 asahi.com/2010年08月09日)、県会議員辞職願提出は弁護士等の代理人を通じてなのだろうが、午後5時過ぎ前なのか後なのか、いずれにしても同じ日の夕方提出、この間の6時間から8時間という時間は難しい問題であるだけに、警察は勿論、県議会議長、県議会の有力者、後援会有力者、市長を始め、市の有力者等々各方面に働きかけなければならなかったろうから、議員の身分にとどまる方向への善後策を講じるに十分過ぎる時間とは決して言えないはずだ。
「日刊スポーツ」記事に、翌8日に釈放、任意の取り調べに切り替えたと出ているが、辞職願提出はそれからでも遅くはなかったように思える。
人身事故まで起こしたわけではないのに、どう見ても早々に議員辞職へと出処進退の結論を持っていったように見えて仕方がない。いわば簡単にサジを投げてしまった印象を受ける。
いずれにしても、日本の輝ける政治家、「日本は神の国」だとご託宣した父親の森喜朗も関わった議員辞職願提出だったことは間違いないはずだ。
問題は「日本は神の国」の意向で長男に承諾させた議員辞職願の提出だったのか、父親の血を受け継いで輝ける政治家魂を持った長男の意向が先にあった議員辞職願提出であり、父親が後付で承諾したことなのかである。
後者なら、美しい日本の伝統として自らの血ともしている父親の情として、県会議員の職にとどまることのできる方向への善後策を講じる余地が生じる。まあ、待て、早まるな。俺がどうにかできないか、各方面に当たってみる。俺に不可能はない。政権交代阻止だけは不可能だったが、とばかりに。
息子が議員辞職を早々に決めて、父親が、そう、それがいいなと即応じたとしたら、息子にもはや救いようのなさを見ていたことになる。
もしも前者の父親の意向で長男に承諾させた議員辞職なら、「日本は神の国」森喜朗にとって辞職が最大の善後策、最大の善処だった疑いが出てくる。辞職なら、善後策を講じるも何もなかったろうから、飲酒運転コンビニ突入敢行から議員辞職願提出まで時間がかからなかったことも頷ける。
息子が議員辞職を早々に決めて、父親が即応じたケースであったとしても、辞職が最大の善後策、最大の善処だった疑いに変わりはない。
このことを証拠立てるマスコミ記事がいくつかある。 上記「asahi.com」――
同僚県議一人「未明まで酒を飲んで県連の会合を欠席することも目立ち、酒にだらしないことを心配していた」
普段の素行の悪さ、責任感の欠如が長男の人物評価を落としめている様子を窺うことができる。
《森元首相長男、逮捕前2日連続公務欠席》 (日刊スポーツ/2010年8月9日8時35分)――
〈森元県議が事故前日と前々日、「体調不良」を理由に公務などを欠席していたことが8日、分かった。(中略)県議会関係者によると森元県議は5日、自身が委員長を務める県議会建設委員会による県内の地域視察を、直前に「体調が悪い」という理由で欠席。6日にも加賀地区開発促進協議会メンバーとして上京し、省庁などへの要望活動が予定されていたが、同様の理由で参加しなかった。6日には地元で自民党関連の会合があったが、これも欠席したという。
体調不良で公務を欠席した翌日午前に、飲酒運転をしていた疑いが浮上した格好。県議会関係者は「酒くさい状態で議会に来たこともあったと聞く。最近では、地元の会合などに遅刻したり、ドタキャンしたこともあったようだ」と話した。〉――
上記「asahi.com」記事、「未明まで酒を飲んで県連の会合を欠席することも目立ち、酒にだらしないことを心配していた」を裏付ける記事内容となっている。
《森元首相長男、遅刻・早退・居眠りで批判も》 (YOMIURI ONLINE/2010年8月8日19時56分)――
〈自民党県連によると、森容疑者は逮捕前日の6日夜、谷本知事や岡田直樹参院議員が参加した自民党県連の懇親会を「先約がある」と欠席していた。議員としての公務でも、県議会事務局によると、5日に委員長を務める県議会建設委員会の金沢、加賀地区の地域視察を、6日には加賀地区開発促進協議会の一員としての経産省や国交省への要望活動を、それぞれ急きょ欠席した。以前から、議会の遅刻や早退、居眠りが見られ、議員の中からも「議会を軽視している」と批判の声が上がっていた。〉
後援会前回選挙対策委員長又村一夫・JA根上組合長「事件をテレビで知り、びっくりしている。(森容疑者は)最近は酒を控えていると言っていた。県議なのだから、立ち居振る舞いには気をつけてと日頃から言っていたのに。これからだと思っていたので残念」
前々から酒が問題となっていた。「最近は酒を控えている」は事実ではなかった。周囲の小言・注意・心配に対する言い逃れに過ぎなかったことが発言から窺うことができる。いわば酒に関しては常習犯だった。そして議会を遅刻、欠席、早退、居眠りを繰返す素行不良を犯す。
この素行の悪さは飲酒癖や責任感の欠如だけではなく、他の問題を抱えているとする情報がインターネット上に流れている。
《論談:新総理の長男・祐喜の愛人の告発テープ》――
冒頭は次のように書いてある。〈森喜朗 新総理の長男・祐喜 に愛人関係清算の慰謝料 3000万円を要求した女は、六本木の高級クラブ 「セリーネ」 の元ホステス 「I」。 源氏名は 「M」。「I」 が告発した独白テープ <注・テープ起こしをしたもの>、A4版6枚流出。 アンチ森派、コピーをとって、議員会館周辺にバラ撒く。
以下、その全文。 なお、文中アルファベットは編集部の判断でイニシャルにしました。〉
「新総理」と書いてあるから、森喜朗「日本は神の国」が総理大臣に就任した頃のことなのが分かる。
そして中に次のような一文がある。
〈ミルクセーキに付いてきたストローを部屋についているソーイングセットの鋏かなんかを使って、3センチくらいに切って、片方の鼻に差し込んで、もう片方の鼻を塞いで、粉を吸い込んでいたわけ。 初め黙ってみてたら、私の歯茎にそのコナを塗ってくれた。 「チョットだけすってごらん」 と言われて、「でも、私はそういうのは使ったことが一度もないから」 って断ったんだけど、でも、そういうものだとハッキリわからなかったから、よく睡眠薬じゃないけど、ハルシオンとか害のないものもあるじゃない。 別にそんなに害のないものだと思って。 彼は 「最初はチョットだけのほうがいいよ」 って言っていた。〉――
事実無根の情報なのか、事実有根の情報なのかは分からないが、愛人と共に覚醒剤を利用しているシーンとなっている。
森元首相は偉大なる父親にして、この偉大なる長男ありの、県会議員にしては珍しい、多分県議会議員としては本邦初公開となるコンビニ突入敢行事件を受けて、長男の県議会議員辞職は当然だとした上で謝罪している。
《「慚愧に堪えない」長男逮捕で森元首相陳謝》 (日テレNEWS24/2010年8月8日 8:35)
森元首相「このような不祥事を起こし、誠に慚愧(ざんき)に堪えません」
45歳の大の大人が起こした事故である。親の責任を離れて一個の人格を有した者としての責任に帰する問題ではあるが、それでも子どもとの触れ合いを通した親のかつての教育に対する成果、薫陶等が問題となる。
特に薫陶に関して、その父親たるや、文部大臣、通商産業大臣、建設大臣を歴任し、2000年4月5日から2001年4月26日まで長きに亘って約1年間総理大臣まで務め、「日本は神の国」を常に体現している偉大なる存在であることに照応した薫陶を年齢に関係なく与えて然るべきだが、薫陶の対象に関しては最も責任を持たなければならない長男に関しては何ら効果を果たすことができなかった。その責任である。
自民党の文教族のドンであり、幼保育一元化反対の雄でもあるのだから、当然身につけていたであろう、幼児から小中高大までの教育に関する一家言、深い造詣が自らの教育観で以って周囲を薫陶する力もを高かめていたはずである。
だが、このことに反して長男の人格形成に何ら薫陶を与えることができなかった。
世間的に砕けた言い方をするなら、どういう育て方をしてきたんだ、親はどう教育してきたのかということである。
そのような責任の問いが発せられることになることは当然予想できたことで、父親にしたら世界に燦然と光を放つ自らの輝かしい経歴の手前、長男の出処進退よりも即座に解決しなければならない問題となる。
いわば長男の名誉を守るか、自らの名誉を守るか、その優先順位であるが、経歴の輝かしさに関しては月とスッポンであるゆえに長男の名誉を守れば自らの名誉を犠牲にすることになり、自らの名誉を守るなら、例え長男の名誉を犠牲にすることになっても、元々長男の名誉は自身の名誉と比較して消えかかったローソクの灯程の微々たる輝きしかなく、損得ははっきりとしている。
当然のこととして、その損得勘定には生贄の羊の論理が否応もなしに介在してくる。
この論理が向かわせることとなった、親の責任にまで及ぶのを前以て防御し、収束を図る最大の善後策、最大の善処がコンビニ突入敢行から一日も置かない辞職願提出、即座の受理ではなかったかということである。
この勘繰りが当たっているとしたら、既に触れたように45歳の県会議員辞職は長男にとっての最大の善後策、最大の善処ではなく、森喜朗「日本は神の国」に親の責任が及ばないよう収束を図る長男を生贄の羊とした自身にとっての最大の善後策、最大の善処であり、それが一日も経たないうちの辞職願提出という緊急避難措置ということになるが、どんなものだろうか。
どうでもいいことかな?
だとしても、野次馬根性たっぷりに出来上がっているからなのか、こういった記事を書いているときが最も楽しい。