菅首相の「1期生議員は国民の声に最も近い」の反比例関係をベテラン議員に当てはめると

2010-08-19 06:56:32 | Weblog

 菅首相が8月23日から25日にかけて民主党当選1回の新人議員と7月の参議院選で初当選した新人議員に懇談の案内状を送ったという。衆議院新人は144人、参議院新人は13人だそうだ。この157人は党所属議員413人の38%に相当する。新人議員はその多くが小沢前幹事長によって立候補の擁立を受けていて、前幹事長の影響力が強いことから、9月の代表選に向けた菅首相の新人議員の取り込み、囲い込みではないかとマスコミは憶測している。

 例え前幹事長の影響力が強くても、各個人は次の選挙で当選を果たす身分維持を最大・最優先の利害としているだろうから、その利害実現に都合のいい相手なら、誰とでも協力するに違いない。

 インターネット記事の中で《代表選を前に民主党1回生議員に面談強要》日刊ゲンダイ/2010年8月18日)が案内状の内容を一番詳しく書いてあったから、この記事を取り上げるのだが、反菅も露、“反感”を通り越して、菅憎しの感情さえ窺うことのできる記事内容となっていて、なかなか面白いと言うか、なかなか楽しい言ったらいいか、なかなかのセンセーショナリズム根性が溢れた記事となっている。

 副題が、「そこまでやるか、菅直人」「手紙で踏み絵を迫る露骨な中身」となかなか手厳しい。

 〈9月の代表選に向けて、党内が俄然、ざわついている民主党。中でも焦りまくっているのが首相の菅だ。それを象徴するような出来事があった。〉と案内状送付をそのように形容している。

 〈その手紙にはこうある。〉として一部抜粋の内容を紹介している。

 〈私にとって、本当に激動の一年間でしたが、ふと振り返れば、この間に初当選された衆院議員の皆さんと直接話す機会をほとんど持つことが出来ませんでした。私は、一期生の皆さんの声こそが、一番国民に近い声だと思っており、お盆も開け(ママ)た来週にでも直接お目にかかって意見交換させて頂きたく、ご案内申し上げます〉・・・・

 「(ママ)」と書いてある箇所は、〈菅はよほど、慌てたのだろう。お盆が「明ける」のを「開ける」と書き間違えた。漢字が読めなかった麻生元首相を思い出す。いずれにしても、ヒートアップする代表選。菅が焦り、もがけばもがくほど、国民には醜態に見える。円高がここまで進んでいるのに、困った権力亡者である。〉と、結びで漢字の間違いまで丁寧に取り上げた上に、「困った権力亡者である」とまでコケにしている。

 各新人議員の日程に関しては、〈強制的に選挙区を振り分け、23~25日の間で面談日程を作成。(1)この日程で参加します(2)都合がつかないので○日に参加します(3)参加できません――の三択から選んで返信せよ、と迫っている。〉と紹介している。
 
 そして案内状を次のように解説している。

 〈要するに内閣総理大臣の名前で、代表選に向けた切り崩し面談を強要した手紙なのである。〉・・・・

 菅首相のこの企て(?)についての民主党関係者の話も取ってある。

 「この手紙をもらって、(3)の参加できませんと答えるのはプレッシャーでしょう。なにしろ、総理大臣名ですからね。しかし、これが代表選に向けた選挙運動であり、1回生議員に踏み絵を迫る面談であることは明らかです。そこまで露骨にやるのか。民主党議員の中にも驚きが広がっています」――

 いくら自分が撒いた種とは言え、前門の小沢前幹事長、後門のねじれ国会、取り敢えずは9月の代表選を乗り切らなければならない。乗り切ることができれば、暫くの間は前門のトラは取り除くことができる。菅首相も必死なのだろう。

 だが、どうでもいいことのようだが、ここでも菅首相の合理的判断能力を問題にしないわけにはいかない。リーダーシップ(指導力)は何事も的確な合理的判断能力を基本とする以上、その欠如は首相としての資格に関わってくるからだ。

 「日刊ゲンダイ」記事に載せてあった案内状の写真はパソコン文字の印刷なのか直筆なのか分からないが、毛筆で書いてあり、最後に内閣総理大臣と書き、その下に二回り程の大きさの書き方で「菅直人」とサインしてあった。まさか秘書や内閣官房の役人に書かせたとは思えない。 

 「一期生の皆さんの声こそが、一番国民に近い声」としている。

 本来なら国会議員を務める期間に比例して、国民の声を的確に掬(すく)い上げる能力は高まっていいはずだ。逆であるなら、ムダに国会議員を務めていることになる。

 だが、菅首相は国会議員を務める期間と国民の声を掬い上げる能力を反比例の関係に置いた。この合理的判断能力は問題としないで済ますことができるだろうか。
 
 菅首相が使った言葉で説明すると、議員歴が長くなるベテラン程、そのことに比例して、「一番国民に近い声」の持主となっていいはずだが、「一期生の皆さんの声こそが、一番国民に近い声」だと、議員歴と国民の声を掬い上げる能力を反比例の関係に置くことで議員歴を無効とした。ベテラン否定ともなる。いや、10期生だという菅首相自身による自己存在否定ともなる。

 議員歴が長くなればなる程に“国民に遠い声”の持主となっていくなら、何回も国民の選択を受けて自らが長年置かれることとなった状況に対する倒錯そのもので、これ程の国民に対する裏切りはない。

 もし菅首相の言っていることが的確な合理的判断に基づいた真正な事実とするなら、国会議員の任期は一回限り、再選は禁止すべきだろう。何しろ国会議員を長く務めれば務める程、ベテランになればなる程、“国民に遠い声”の持主となっていくのだから、税金をドブに捨てるようなものだということになる。

 菅首相は10期も長く務めたお陰さまで、“国民に遠い声”の持主となっていたから、いわば国民の切実な声を敏感に聞き取れない難聴状態のベテラン議員になっていたから、消費税問題で満足な準備もせずに不用意に発言し、参議院選挙で国民からお叱りの声を受けたのだろう。

 国会議員は「一番国民に近い声」の持主でいるためには2期目からは賞味期限が切れると言うことである。 

 新人議員と懇談会を開いて、新人議員の声を通して、“国民の声”を聞き取ろうとする。的確な合理的判断能力に基づいた見事な倒錯図ではないだろうか。こういった合理的判断能力の持主を一国のリーダーであり続けるべくあれこれとした駆引きに血眼になっている。その一つに新人議員との懇談を位置づけている。

 民主党の蓮舫行政刷新担当相が18日午前、神奈川県小田原市内で開かれた野田佳彦財務相を支持するグループの研修会で挨拶したという。《首相交代なら解散が筋=「反菅」の動きけん制-蓮舫氏》時事ドットコム/2010/08/18-11:09)

 蓮舫「9月に代表選があること自体は歓迎したいが、もしここでまた代表・首相が代わるなら、(解散)総選挙が筋だ」

 民主党は野党時代、自民党政権が安倍、福田、麻生と民意を問う選挙を経ないで首相を交代させていったとき、「民意を問うべきだ」、「タライ回しだ」と批判した。だが、鳩山首相から菅首相に代ったとき、野党時代の自分たちの批判の論理に則らずに民意を問う選挙を行わず首相を交代させた。その埋め合わせに菅首相は6月の代表質問で、「参院選で国民に信を問う」と答弁、参院選を菅内閣の信任を問う選挙と位置づけた。その信任の結果に対して菅首相は自らの発言を裏切って、何ら責任を取らず首相であり続けた。

 鳩山首相から菅首相に代ったときは解散・総選挙しないことは許されて、菅首相から新たな首相に代るなら、解散・総選挙が筋だと言う。合理的判断からではなく、自分たちのその時々のご都合主義で解散・総選挙を持ち出して弄んでいないだろうか。

 マニフェストについても言えることだが、自らがつくり上げた原理原則を無視して、“ご都合主義”を基準に動かす政治は長続きしない。長続きさせたなら、益々日本は傾いていく。

コメント (1)
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