小沢前幹事長が9月の民主党代表選立候補を表明した。確かにカネと人間関係を効率的に使う古い手法、古い体質の政治家の範疇に入る、その代表的人物と言えるだろうが、このような人物の指導力に期待することと、各種世論調査で「政策に期待が持てない」、あるいは「実行力がない」と見られている首相の続投を支持することとどちらが正しい選択、合理的判断だと言えるのだろうか。
有権者の多くの判断は後者を合理的だとしている。
最近のいくつかの世論調査を見てみる。
朝日新聞社、8月7、8日実施の全国世論調査(電話)。丸カッコ内の数字は7月12、13日の前回調査の結果。
◆菅内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する 37(37)
支持しない 43(46)
◇支持・不支持の理由(選択肢から一つ選ぶ=択一)
支持する
首相が菅さん 17
民主党中心の内閣 41
政策の面 20
実行力の面 9
支持しない
首相が菅さん 2
民主党中心の内閣 16
政策の面 30
実行力の面 49
◇続投
続けた方がよい 56
交代した方がよい 27
◆菅首相は、小沢一郎さんと距離をおいた方がよいと思いますか。連携した方がよいと思いますか。
距離をおいた方がよい 69
連携した方がよい 16
◆小沢さんが民主党内で影響力を強めることは、好ましいと思いますか。好ましくないと思いますか。
好ましい 10
好ましくない 78
確かに国民の小沢前幹事長に対する拒絶反応には強いものがあるが、「支持する」の内、「首相が菅さん 17」+「民主党中心の内閣 41」の58%は消極的支持であって、積極的支持は、「政策の面 20」+「実行力の面 9」の29%のみである。
対して「支持しない」の内、「首相が菅さん 2」+「民主党中心の内閣 16 」の18%を消極的拒絶反応としたとしても、「政策の面 30」+「実行力の面 49」の79%は菅首相の政治そのものに対する致命的となる積極的拒絶反応となっている。
政策の面、実行力の面で期待できないと強い拒絶反応を示してしていながら、「交代した方がよい 27」に対して、続投支持が56%となっている。これは明らかに矛盾した態度ではないだろうか。
共同通信社が朝日と同じ日に行った全国電話世論調査でも似た傾向を示している。カッコ内は前回調査。
菅内閣支持率 38.7%(36.3%)
不支持率 44.8%(52.2%)
内閣支持理由のトップ
「他に適当な人がいない」 38・8%(+8.6ポイント30.2%)
内閣不支持理由のトップ
「経済政策に期待が持てない」 22・3%
代表選で当選を望む人
菅首相 37・2%
前原国交相 14・6%
岡田外相 7・8%
小沢前幹事長 5・3%
原口総務相 4・7%
海江田万里 2・7%
8月9日日付のNHK記事の世論調査。
菅内閣を支持する 41%
支持しない 43%
菅内閣を支持する理由
「ほかの内閣より良さそうだから」 47%
「支持する政党の内閣だから」 20%
支持しない理由
「政策に期待が持てないから」 41%
「実行力がないから」 27%
再選
「望ましい」 21%
「どちらかといえば望ましい」 36%
「どちらかといえば望ましくない」 20%
「望ましくない」 14%
国民から期待されるべき、あるいは首相として担うべき必要不可欠の資質・能力である政策と実行力が欠けていると、政治家として致命的な評価を宣告されていながら、政策と実行力が欠けていると見ている菅首相の続投を消極的ながら支持している。
その理由はここで代わることになったなら、1年で3人目の首相となると言うことであろう。
だとしても、結果として政策と実行力が欠けている政治家の続投を願うことで、そのような政治家に日本の政治を今後とも任せる選択を意思表示していることになる。このことは合理的判断だと言えるのだろうか。
ごく最近、8月20~22日に行ったNNN(日本テレビ)が行った世論調査は内閣支持率が不支持率を上回る結果を示しているが、状況は変わらない。
「菅内閣を支持する」 42.8%(+3.6ポイント)
「支持しない」 39.3%(-6.5ポイント)
「菅直人内閣を支持する理由」
「他に代わる人がいないから」 38・5%
「政策に期待が持てるから」 6.2%
「菅直人内閣を支持しない理由」
「政策に期待が持てないから」 40.1%(一位の理由)
「リーダーシップがないから」 18.5%(二位の理由)
単に首相がコロコロ交代するのはよくないという理由を最優先させて続投を許し、政策と実行力に期待できない首相に今後とも日本の政治を任せる逆説に目をつぶるのか、例え首相がコロコロと交代することになっても、政策と実行力に期待できない首相は交代させるべきだを合理的判断とするのか、今一度立ち止まって考えるべきではないだろうか。