23日から始めた菅首相の当選1回生新人議員との意見交換会、25日で終了した。「一期生の皆さんの声こそが、一番国民に近い声だと思っている」の趣旨の開催なのだから、新人157人のうち過半数を超える87人が出席したというから、87人を通して彼らが抱えている多くの国民の声を聞いて、何をなすべきかの政治エネルギーを新たに充電させたに違いない。後は如何に政策の形とし、国民の利益を図っていくか、創造力と実行力にかかっている。
このことは2日目24日午前の19人の「一番国民に近い声」の新人議員と意見交換したときの菅首相の発言が物の見事に証明している。《菅首相:新人懇談会2日目 政治主導の確立強調》(毎日jp/2010年8月24日)
菅首相「今までの古い体制や官僚の省益を優先する仕組みを壊す力が、自分にとって一番強いメッセージだ」
出席議員「菅首相でなければいけない理由は」
菅首相「おかしいところをおかしいと思って立ち向かう姿勢と、物事を作り替える上で必要になる壊すことに対しては、自分は相当力を持っている」
非公開の意見交換会だから、菅首相の発言は出席新人議員を通した内容となる。このことを割り引いたとしても、最初の発言の「今までの古い体制や官僚の省益を優先する仕組み」云々はまだ壊していないのだから、「壊すことが自分にとって一番強いメッセージとなるだろう」という将来予測の発言とならなければならない。まだ壊していないことは繰返し「政治主導」を言わなければならないことにも現れている。
実際にも官僚主導となっていて、政治主導は未だ道半ばどころか、まだ緒に就いたばかりで、先行き不透明の状態となっている。「政治主導」という言葉だけが先行しているとも言える。
もし記事どおりの発言だとしたら、「自分にとって一番強いメッセージだ」と、あるいは「メッセージです」と丁寧な言い方をしたとしても、断言していることになるから、既に壊す実績を上げていて、そのような「壊す力」が「自分にとって一番強いメッセージ」となる才能、もしくは能力だと誇示したことになる。
前者の発言だとしたら、相当な指導力、リーダーシップを必要とするものの、その発揮に自信を持っていることになる。後者の発言であるなら、既に指導力、リーダーシップを発揮することができていて、自らの指導力、リーダーシップに自信を深めていることになる。
指導力の人、リーダーシップの人、それは菅直人、私自身ですと宣言したも同然であろう。
次の発言、「おかしいところをおかしいと思って立ち向かう姿勢と、物事を作り替える上で必要になる壊すことに対しては、自分は相当力を持っている」も、指導力、リーダーシップなくして成り立たない、あるいは実現させることはできない能力であり、「自分は相当力を持っている」と自らの指導力、リーダーシップを自ら請合っている。任せておきなさい、この俺の指導力、リーダーシップを、とばかりに。
要するにいずれの発言でも菅首相は新人議員に対して自らの指導力、リーダーシップを売り込み、具体的に矛盾と闘って、それを是正する能力、創造のための破壊能力に最も良く発揮されるとより得手とする指導力、リーダーシップの発揮の機会を説明したわけである。
そのとき菅首相が自分の胸を叩いたか新人議員に聞きたいが、残念ながら聞くだけのツテを持っていない。
発言が実体を持つか否かによって指導力、リーダーシップは決まってくる。
このことは過去の発言に実体を持たせることができたかどうかの前科を検証することによって証明し得る。
何度でもブログに書いているが、菅首相は7月の参院選前に消費税増税の超党派協議を提案、協議の纏まり具合で次の衆院選前にも増税はあり得る、その場合は解散して国民の信を問うとし、参院選を通じてそのことを訴え続けたが、その姿勢に国民が不信を抱き、選挙に大敗すると代表選では消費税発言は封じるとしたことは国の財政状況に関して「おかしいところをおかしいと思って」提案を挑戦した「立ち向かう姿勢」にまさしく添った消費税発言であり、「自分は相当力を持っている」と太鼓判を押すだけのことはある、発言に実体を持たせようとする姿勢が生み出した指導力、リーダーシップの現れだと讃えることができる。
官僚主導から政治主導転換の中枢機関と位置づけた首相直属の「国家戦略室」を「局」に格上げして法的根拠を持たせる「政治主導確立法案」の国会上程を与野党逆転した参議院通過は覚束ないと早々に成立を断念、首相に対する助言機関に格下げの一歩後退にしても、「今までの古い体制や官僚の省益を優先する仕組みを壊す」作業、官僚主導から政治主導への挑戦の第一歩として、「政治主導」の発言に違わない、菅首相にとって「一番強いメッセージ」となっている点は、やはり発言に常に実体を持たせる姿勢が功績となった指導力、リーダーシップの賜物であろう。
指導力、リーダーシップの決定要件となる発言に常に実体を持たせているということは言っていることに間違いはない、ウソ偽りはないことの証明でもある。
次のことも前にブログに取り上げたことだが、菅新首相が昨年9月の政権交代直後、副総理・国家戦略担当相の任に就いていたとき、民主党の喜納昌吉(きな・しょうきち)参院議員(党沖縄県連代表)が「沖縄問題をよろしく」と挨拶したところ、菅首相は「沖縄問題は重くてどうしようもない。基地問題はどうにもならない。もうタッチしたくない。もう沖縄は独立した方がいい」と沖縄独立のススメを展開したという。
一旦口にした発言に実体を持たせることが指導力、リーダーシップの証明となる関係性から言うと、過去の発言であればある程、実体実現に近づいていなければ、指導力、リーダーシップは証明困難となる。
このことは沖縄の独立が目の前に迫っていることが証明している。
菅首相は自身の公式サイトで沖縄米軍基地に関して過去に次のように発言している。
沖縄の海兵隊(菅直人公式サイト/2001年8月19日 00:00)
岡田政調会長の沖縄海兵隊に関するアメリカでの発言についていろいろ問い合わせがきている。本人と話ができていないが報道を見る限りどこかに誤解が生じている。
民主党の基本的考えは「沖縄の米軍基地の整理縮小のため、国内外への移転を含め積極的に推進していく」と、基本政策に述べている。そして沖縄の米軍基地の人員でも面積でも半分以上を占める海兵隊基地が「国内外の移転を含め」整理縮小の検討対象にになることは当然のこと。民主党の沖縄政策の中では「アメリカの東アジア戦略構想を再考し、米海兵隊の他地域への移駐を積極的に議論する」と明記されている。
実際に民主党の中で海兵隊の米国内への移転は有力な意見として何度も議論されてきた。私の参院選挙中の沖縄での発言はそうした背景のもと行われたもので、その場の思いつきでもリップサービスでもなく、民主党の基本政策と矛盾してはいない。基本政策より多少踏み込んだ表現があるとしても、それは政治家としての私の責任で述べたものである。
私自身3年程前民主党の代表として訪米した折にも、アメリカの当時の国防次官にこの主張をぶつけたことがある。国防次官は厳しい顔でメモを見ながら「北朝鮮に対する誤ったシグナルになるから沖縄から海兵隊は撤退はするべきでない」と反論してきた。その理屈も一部理解はできるが絶対ではない。実際には海兵隊基地を米国に戻すより日本に置いていたほうが米側の財政負担が小さくてすむという背景もある。北朝鮮の状況や日米の財政状況が変わってきている中で、沖縄にとって重い負担になっている沖縄海兵隊の日本国外移転について真剣な検討が必要。
「その場の思いつきでもリップサービスでもな」い、2001年7月29日の第19回の、「私の参院選挙中の沖縄での発言」と参院選直後の8月の発言、さらに03年の発言を「過去の発言」として、《菅新首相誕生 過去の菅氏発言 海兵隊国外を主張》(琉球新報/2010年6月5日)が伝えている。
(01年7月)「(日米地位協定について)運用改善ではなく協定自体の見直しが必要ではないか」
(01年8月)「在沖米海兵隊は沖縄に必ずしも存在しなくても日本の安全保障に大きな支障はない」
(01年8月)「国内移転よりハワイなど米国領内への移転が考えやすいはずだ」
いずれも、〈幹事長、党代表、党代表代行の立場〉で述べた発言だそうだ。
記事は最後に、〈プライベートでも県内離島をたびたび旅行するなど沖縄とかかわりは深い。〉と書いているが、基地問題への思い入れ深いことからの沖縄との関わりであって、空気と海の色と眺望の素晴らしさを味わう観光への関わりではないはずである。
「その場の思いつきでもリップサービスでもな」いとする発言は実体を伴わせて、そのことが証明され、また指導力、リーダーシップ有無の証明ともなり得る。
「おかしいところをおかしいと思って立ち向かう姿勢と、物事を作り替える上で必要になる壊すこと」は沖縄の基地問題に対する自身の信念、主義主張についても当てはまる事柄であって、「おかしいところ」とは沖縄の過重なまでの基地負担であり、「物事を作り替える」とは自身が主張してきた在沖米海兵隊の沖縄からの撤退であろう。それを実現すること、いわば自身の発言に実体を持たせることに関しては、「自分は相当力を持っている」と自らの指導力、リーダーシップを誇った。
そしてその発言は自らの指導力、リーダーシップの効果的な発揮によって実際に実体を持たせつつある。普天間から国外ではなく、鳩山内閣が同じ県内の辺野古への移転を決めた日米合意の順守を自らの内閣でも宣言。
菅首相の発言の確かさ、実体性の存在については小沢前幹事長についての発言にも見て取ることができる。23日の新人議員との最初の意見交換会の日に、「小沢氏のような人材が必要な場面もある。小沢氏の手腕は高く評価しており、その腕力を活用していきたい」と首相続投が決まった場合の挙党態勢について、その重要な一枚に加えるような発言をしておきながら、それ以降、その処遇に触れずに「適材適所」の言及にとどまる後退を見せた、この一貫しない発言は参院選挙中の消費税問題で軽減税や税金還付方式を持ち出し、税金還付方式では還付する年収区分を例示しながら、演説先で言うことが違ったり、そのブレを批判されると、その後税還付方式を発言しなくなったりした非一貫性に相当する。
指導力、リーダーシップの決定要件となる発言の実体性は発言自体の一貫性も必要条件となるはずである。一貫性のない発言に実体性を期待できようがない。
菅首相自身が誇る「立ち向かう姿勢」にしても、「壊す力」にしても、その真偽は過去の発言が証明する。新人議員との意見交換会で口にした発言にしても、その実体性、真偽は近い将来、いわば過去の発言となったとき、その真偽を自ずと証明することになるに違いない。