野田政権の消費税逆進性対策複数税率拒絶反応は国民の安心よりも国家財政優先

2012-08-03 12:11:33 | Weblog

 ――消費税逆進性対策は複数税率であるのとないのとでは安心が違う――

 消費税増税には反対である。社会保障制度改革推進法案は「受益と負担の均衡の取れた持続可能な社会保障制度の確立」を謳っているが、その持続可能性自体が何ら保証がない。

 再びリーマン・ショッククラスの不況に見舞わないとも限らないし、東南海地震といった3連動型地震、日本の中枢を麻痺させるに違いない首都直下型地震に襲われた場合、その復興・再建に国家財政だけでは賄い切れず、一方で緊縮政策、もう片方で消費税やその他の税を増税せざるを得なくなって勢い向かうことになる国のサービス低下は社会保障制度にも影響して、その持続可能性を断ち切らないと誰が言えるだろうか。

 このデフレ不況下で今日の安心となる満足な雇用も満足な収入も保障されていない、多くの若者を始めとする低所得層にとって、社会保障制度で少しぐらいの安心を手当されたからといって、根本的且つ本質的な安心の手当とならないばかりか、社会保障制度の持続可能性を謳ったその持続性の安心が社会状況や経済状況によって崩れて、安心が安心でなくなった場合、二重の裏切りを受けることになる。

 先ずは十分な雇用と十分な収入が生活の本質的な支えとなって保障することになる今の安心を担保してから、今の安心によって十分相殺可能となる消費税増税の痛みを求め、社会保障制度の安心を訴える手順を取るべきだろう。

 そのような手順こそが、国民により強い安心を与えるはずだが、野田政権はその逆を行こうとしている。

 世論調査で支持率が上がらない理由がここにあるのではないだろうか。

 新党「国民の生活が第一」の森ゆうこ参議員から、「人をおちょ食った答弁しかしない、あなたの答弁はいらない」と拒絶反応の肘鉄砲を食らわされた、あの安住財務相が8月1日の参議院特別委員会で、消費税増税の逆進性対策として「複数税率」(軽減税率)の導入に否定的な考えを示したという。

 このことはただでさえ今の安心から見放されている低所得層の国民に対してなお一層の安心を奪う残酷な仕打ちとならないだろうか。

 《財務大臣 複数税率に否定的》NHK NEWS WEB/2012年8月2日 21時20分)

 安住財務相「食料品のほぼすべてに導入した場合には、8%に引き上げた際に1兆円台半ばから2兆円程度、10%で2兆円台半ばから3兆円程度の、いわば『大きな浸食』があると推計される(ことになるんですね)」

 「複数税率」(軽減税率)を導入した場合、税収が“大きく侵食される”と言っているが、政治の無策がつくり出した格差社会の一現象としてある無視できない数の低所得層の安心が“大きく侵食される”ことにはとんと目が行かないらしい。

 これは国家税収にしか目が行っていないことの反映としてある国民無視の姿勢であろう。この国民無視は「国民の生活が第一」とはなっていないことの最たる証拠となる。

 岡田副総理も安住財務相と連携プレーに及んでいる。

 岡田副総理「食料品全体にかければ、消費税率1%分を超える規模の税収が減ることになる。税率を5%引き上げると言いながら、結果的には4%上げたことにしかならず、その分、社会保障を減らすのかという議論になる」

 安住財務相と同じ仲間の同じムジナだから右へ倣えで税収にばかり目が行っている。

 「社会保障を減らすのか」と言っているが、社会保障の安心が十分な雇用と十分な収入が保障することになる今の安心に取って代わることができるわけでもないし、前者の安心自体の持続可能性が絶対的ではないにも関わらず、自分たちの社会保障制度を葵の御紋であるかのように振り回す程度の低い判断能力を示している。

 要するに社会保障制度でこれだけの安心を与えます、これだけの安心を約束しますと言うことができるということは、不十分な雇用と不十分な収入を前提として制度を考えているからだと言える。

 だからこそ、社会保障制度の安心を売りつけることができることになる。

 その証拠となる記事がある。《低所得者に5千円給付 政府が年金支援給付金法案を閣議決定》MSN産経/2012.7.31 11:42)

 2015年(平成27年)10月の消費税10%増税に合わせて低所得年金受給者に対して一定程度の給付金を支給する等の「年金生活者支援給付金法案」を7月31日に閣議決定したと書いている。

 ●年間所得が77万円以下の低所得の年金受給者らに保険料を納めた期間に応じ月最大5千円を
  支給する
 ●受給額の「逆転現象」が起きないよう、所得が年77万円超で87万円未満の約100万人にも
  給付を行う
 ●保険料免除の手続きを取っていた年金受給者には、期間に応じ月最大1万666円を別途支給す
  る。
 ●支給対象年金受給者
  老齢基礎年金受給65歳以上のうち――
  (1)市町村民税が家族全員非課税
  (2)年金収入を含む年間所得合計が77万円以下

 ●一定所得以下の障害基礎年金の受給者約180万人、遺族基礎年金の受給者約10万人にも給付
  金を支給
 ●障害1級の年金受給者は月6250円、そのほかは一律月5千円。いずれの給付金も通常の年金
  と同じように2カ月ごとに支給される

 以上であるが、この記事には触れていないが、「NHK NEWS WEB」記事には、〈障害年金や遺族年金の受給者のうち、年間の所得が単身の場合でおよそ460万円以下の人など、一定額を下回る人に対しても給付金を支給する〉、「毎日jp」記事には、〈給付金は年間所得約460万円以下の障害基礎年金と遺族基礎年金受給者にも支給する。金額は一律で、障害1級の人は月6250円、同2級と遺族基礎年金受給者は月5000円。190万人が対象となる。〉と書いてあるが、この年間所得の「460万円以下」の意味が分からない。

 一般の低所得年金受給者は年間所得が77万円以下か、77万円~87万円未満が対象であって、年間所得460万円以下近辺とあまりにも開きがあり過ぎる。

 年間所得77万円以下、あるいは77万円~87万円未満の低所得年金受給者の存在は一般的には十分な雇用と十分な収入が保障されなかったことの反映としてある、低所得年金であるはずである。

 いわば格差社会がつくり出した一つの縮図とも言える。

 この低所得年金受給者に対する安心の支給は不十分な雇用と不十分な収入しか保障できていないことを社会的前提とした社会保障制度であるからこその構図を取っているはずだ。

 十分な雇用と十分な収入の保障可能な社会を構築できていたなら、こうまでも社会保障制度の安心を売り込む必要はない。

 社会保障制度が約束する安心はあくまでもセーフティネットの安心でなければならないということである。雇用と収入から手に入れる根本的・本質的安心とは似て非なるものである。

 十分な雇用と十分な収入の保障による安心を第一意義とせずに社会保障制度の安心に重点的に取り組むのは主客転倒も甚だしい。

 3党合意自体が主客転倒の産物でしかない。

 例えば新党「国民の生活が第一」の森ゆうこ参議院議員が国会質疑で、「平成22年の一世帯当たりの平均所得は538万円で、ほぼ23年前の水準。平成6年のピーク時から比べると、130万円も落ち込んでいる」と問題視していたが、だからと言って、その落ち込みのセーフティネットとして社会保障制度を充実させるのか、あるいは平均所得自体を上げる経済政策を打つのか、どちらを優先させるかというと、明らかに後者であろう。

 森ゆうこ議員も後者の文脈で所得再分配機能の強化を訴えていた。

 もし数の力で消費税増税案を成立させたとしても、根本的且つ本質的な安心とはならない社会保障の安心を謳って国の税収増を優先させるよりも、例え3兆円の税収減を招こうとも、軽減税率導入によって不十分な雇用と不十分な収入を強いられて手に入れることができない今の安心のせめての埋め合わせとすべきではないだろうか。

 政府は10%増税後は「給付付き税額控除」を導入方針だそうだが、給付や税還付が低所得者の食料品消費額を十分に補う額であったとしてもその安心は十分な雇用と十分な収入の本質的・根本的な安心を直接的に保障するものではない。

 逆に食料品その他に対する軽減税率導入によって直接的に可処分所得を増やす形にすることができる安心を与えることによって消費行動を促した方が、経済活性化とそのことによる税収増を促すことになるように思える。

 とにかく優先すべきは社会保障の安心よりも、十分な雇用と十分な収入保障の安心であり、そのような安心に国民の多くは飢えているはずである。

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