野田首相の問責可決でも「やるべき仕事を静かに粛々と進める」は支持率の高い首相が言うこと

2012-08-31 11:22:49 | Weblog



 ――片山さつきを見れば、財務官僚の程度が分かる――

 野田首相がブログで問責決議可決を受けて挫折感を味わうどころか、ますますヤル気が出して意気軒昂なところを表明している。全文引用。 

 《今やるべきことを粛々と》総理のブログ/2012年08月30日 (木曜日) 20:06)

 我が国の周辺海域で主権にかかわる事案が相次いでいることを受け、先週、記者会見をいたしました。一人でも多くの国民に歴史的な経緯を知っていただきたいですし、世界に対し我が国の「理」を訴えていくきっかけにしたいと思っています。

 もちろん、当事者がお互いに冷静さを失うことは、避けなければなりません。言うべきことは言い、進めるべきことを粛々と進める、という姿勢で、引き続き、大局観を持って取り組んでまいります。

 昨日、南海トラフ地震の新たな被害想定について中川防災担当大臣から発表をいたしました。多くの死者が生じるという想定ですが、これは「必ずそうなる」という予想ではなく、「これからの取組み次第でいくらでも被害を減らすことができる」という想定です。東日本大震災の教訓を踏まえた全国的な防災対策の強化にも、本腰を入れて取り組んでいかなければなりません。

 昨日、参議院で私に対する問責決議が可決されました。立法府の一つの院の意思として、厳粛に受け止めたいと思います。他方、その理由には、一体改革関連法などを三党合意に基づき成立させたことについて、議会制民主主義が守られていないかのような記述もありました。しかし、国会議員同士の議論により、当初の案にこだわらず一致点を見出すことが認められないとすると、「ねじれ国会」のもとで、国会は何も決められないことになってしまわないでしょうか。

 我が国の領土・領海を守り、災害から国民のいのちと生活を守ることをはじめとして、直面する様々な課題があります。

 どんな政治状況であっても、こうした課題への取組に一瞬の空白も作らず、それらを全力で乗り越えていくことこそ、内閣総理大臣として果たすべき最大の務めであると信じてやみません。

 今やるべき私の仕事を、静かに粛々と一つずつ進めていく決意です。

平成24年8月30日
内閣総理大臣 野田佳彦 

 問責決議提出理由について、「一体改革関連法などを三党合意に基づき成立させたことについて、議会制民主主義が守られていないかのような記述もありました」と述べ、「しかし、国会議員同士の議論により、当初の案にこだわらず一致点を見出すことが認められないとすると、『ねじれ国会』のもとで、国会は何も決められないことになってしまわないでしょうか」と反論を加えて、さも国会が決めたようなことを言っている。

 確かに3党合意は「国会議員同士の議論」に基づいていた。但し3党合意と銘打っている以上、3党以外の野党を除いた、3党のみの「国会議員同士の議論」であって、3党合意の議論の場も、「国会は何も決められないことになってしまわないでしょうか」とは言っているが、3党以外の野党が出席していない場での決着であったのだから、正確には国会が法案の内容を決めたわけではなく、単に採決の場としての用しか果たさなかった。

 要するに狡猾な言い抜けに過ぎない。

 しかも国会で決めたように装っている3党合意にしても、主となる決定は消費税増税率と増税時期のみで、低所得者対策としての逆進性策を具体化したわけではないし、民主党がマニフェストに掲げた社会保障制度改革に関しては国民会議に先送りしている。

 この先送りにしても、野田首相は狡猾な言抜けをして、先送りではないとしている。

 野田首相「最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の撤廃にしても、マニフェストの旗は捨てておらず、今後は『国民会議』で実現したい。修正協議の最終段階なので、会期を延長するしないは申し上げる段階ではない」(NHK NEWS WEB

 消費税増税率と増税時期を先に決めておいて、社会保障制度改革の必要な法制上の措置はこの法律の施行後1年以内に国民会議の審議結果を踏まえて実施するとして国民会議設置を後に持ってきたこと自体が先送りとなっていることを誤魔化している。

 ねじれ国会だからと言って、多数決を得るために中小野党の議論参加を排除した3党合意に正当性を置いているが、その3党合意が消費税増税率と増税時期決定以外は与党としての主体性を放棄した妥協と先送りの産物となったのは同じねじれ国会がつくり出している参議院に於ける民主対自公の力関係が起因しているのだから、3党合意という多数決に拘ったこと自体が戦術の間違いであったはずだ。

 当初予定していた社会保障制度改革の形が変わっても構わないということなら話は別だが、ねじれ国会であっても、形をほぼ変えずに維持した形で成立させる有効な方法として内閣支持率があったはずである。

 勿論、消費税増税という国民に不人気な政策の提示に内閣支持率は一般的には望めない状況にあるが、当初は増税に半数をほぼ超える数字で賛成多数であったのが、次第に賛成の数を減らしていき、反対が半数をほぼ超える逆転現象を見せたのは、2009年民主党総選挙マニフェストに書いてない消費税増税であったということよりも、衆院任期内の消費税増税法案成立であるにも関わらず、実際の増税時期は衆院4年任期後の2014年8%、2015年10%だから、マニフェスト違反ではないと誤魔化したことに対する拒絶反応があったはずである。

 しかも政権交代前の野党時代に、「シロアリがたかってるんです。それなのに、シロアリ退治しないで、今度は消費税引き上げるんですか?消費税の税収が20兆円になるなら、またシロアリがたかるかもしれません。 鳩山さんが4年間消費税を引き上げないといったのは、そこなんです」と言っておきながら、あるいは、「マニフェスト、イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。 書いてないことはやらないんです。それがルールです」と言っておきながら、その舌の根が乾かないうちに消費税増税を口にした。

 また、消費税増税はマニフェスト違反ではないと強弁を働かせていたにも関わらず、8月10日(2012年)、消費税増税案が成立した直後の記者会見で「マニフェストには明記してございません。記載しておりませんでした。このことについては、深く国民の皆様にこの機会を利用してお詫びをさせていただきたいと思います」と法案を成立させてから国民に対する謝罪を持ってくる巧妙さに国民は内閣低支持率の拒絶反応を示したはずだ。

 なぜ最初からマニフェストに書いてなかった、マニフェスト違反になるけれど、消費税増税しなければならない財政事情だと、謝罪した上で国民に理を尽くして説明しなかったのだろう。

 そのような手続きを踏んでいたなら、内閣支持率も違ったものになっていたはずだ。

 内閣支持率を高い数字で獲得できていたなら、次の総選挙の勝利が約束され、例えねじれ国会であっても、野党は下手には反対できない。

 30%前後で推移する内閣低支持率と野党自民党よりも低い位置につけている民主党支持率によって野党自公に足許を見られた「社会保障と税の一体改革」の消費税増税先行の妥協と先送りの結末であろう。

 当然、「どんな政治状況であっても、こうした課題への取組に一瞬の空白も作らず、それらを全力で乗り越えていくことこそ、内閣総理大臣として果たすべき最大の務めであると信じてやみません」いう資格は支持率の高い首相にしか与えられていないことになる。

 内閣支持率が低いまま、ねじれ国会のもとで単に野党協議に頼っていたのでは足許を見られた妥協の政治しかできないからなのは改めて断るまでもない。

 要するに野田首相は戦術を間違えた。国民に「社会保障と税の一体改革」を理解して貰うためと称して何億という大金をかけて新聞広告や全国各地で説明会を開催したが、一旦逆転した消費税賛成と反対が再度逆転することはなかったし、内閣支持率が上がることもなかった。

 消費税増税反対派としては野田内閣の低空支持率は大歓迎だが、戦術を間違えるような指導力と判断能力を欠いた首相は退陣を願うしかない。

 果たして消費税増税して、財政健全化に向かうのだろうか。
 
 内閣府が2015年消費税10%増税によって同年度には国と地方の基礎的財政収支赤字半減目標の達成可能の見通しを纏めたことが8月30日に判明したと、「MSN産経」(2012.8.30 16:04)が伝えていたが、8月27日月曜日の朝日テレビ「ビートたけしのTVタックル」を見た目には俄には信じ難く、財政赤字の問題点は予算編成の手法にあるように思えて、予算編成の手法を改めない限り、いくら増税しても、増税が役に立たなくなってくるのではないかと疑うようになった。

 疑うことになった問題の個所のみを取り上げてみる。

 元大蔵官僚であり、大蔵省が財務省に編成替えになった後も財務官僚として務めた片山さつき自民党参議院議員が出席して、発言していた。 

 阿川佐和子(司会者)「片山さん、元財務省?」

 片山さつき「私は財務省って言うよりも、大蔵省はホント、プライドを持って生きてきたんですよ。名前は変えられちゃって、金融は切り離される前は。

 そのときは自分たちは国のためと思って、国のために死んだっていいという国士意識?

 どの役所よりも働いて、他の役所が言ってくる、あれをくりょ(「くれ」の方言)、これもくりょ。全部整理して、団体が言ってきたのを一つ一つ説得してって、それが生き甲斐――」

 ビートたけし「変な意味、(財務省は)やたら敵になってるけど(嫌われ者になってるけど)、官僚の人が要するにね、国の懐だから、それを如何にうまく配分して成り立つかってことなのに、やっぱり配り方ばおかしんですかね」

 古賀茂明大阪市統合本部特別顧問「配るときにね、要するに自分たちの力っていうものを見せることが大事なんですよ」

 ビートたけし「うちのカアチャンみたいなんだ。(カネを配る手つきをして)トウチャン、いらないんだってことを」

 古賀茂明特別顧問「そう。だから、大体予算要求してから、11月ぐらいまでは、『くっだらない予算だな、こんなのゼロだよ』って。

 で、12月になって、もう殆どそんとこ決まってるんですけど、一生懸命通ってですね、足繁く通って、『お願いします。お願いします』ってやるじゃないですか」

 阿川佐和子(司会者)「財務省に?」 

 古賀茂明特別顧問「ええ。そうすと、(顎に手を当て、顔を下に向けて考えこむ仕草となり)『うーん、やあ、そこまで言われると』とかね。

 それで最後に一寸ずつ、『じゃあ、これだけ付けますよ』って言うと、(感謝で頭を下げる仕草)『ありがとうございます』ってなるじゃないですか。

 例えば10億要求してたのを5億で決着するときに、先ず、『ゼロですよ』って言うんですよ。で、『やあ、熱意に負けました、3億です』、『もう一寸頑張ってきます』とか言って、『4億まで取れました』とか言うと、もうみんなありがとうと――」

 ビートたけし「昔の太田プロみたいなもんだ。お前のギャラ上げないよ。(頭を下げて)お願いしますって(と駆引きの様子を見せる。)――」

 片山さつき「ネゴ(ネゴシエーション=交渉)でしょ。折衝でしょう。調整では私も丸5年遣りましたけど、それなんですよ」 

 片山さつきの大蔵省と財務相に在籍していた者としての身贔屓は恐ろしい。大蔵省から財務省への再編は大蔵省の金融業界からの接待とその接待の見返りに業務に関わる検査情報を漏洩していた等のスキャンダルが原因であった。

 当時、接待方法の一つとして金融機関のノーパンしゃぶしゃぶ店への接待が有名になった。

 また、省の中の省として、天下りにしても人数、報酬共に随一を誇っているはずだ。

 他の省庁の役人と比較して能力に関して優れていたかもしれないが、私欲・我欲の点でも優れていたにも関わらず、「自分たちは国のためと思って、国のために死んだっていいという国士意識」を持っていたと称えることができる。

 殆ど合理的判断能力を失った最大限の評価としか言いようがない。東大出だというから、尚更恐ろしい合理的判断能力の喪失した身贔屓である。

 財政悪化は政治家と官僚の共犯の部分もあるはずだ。

 【国士】「身命をなげうって、ひたすら国事を憂え奔走する人。憂国の士」(『大辞林』三省堂)

 片山さつきの経歴と大蔵省の接待と情報漏洩のスキャンダルを時系列で見てみる。

 1982年に東京大学法学部を卒業、同年4月大蔵省入省。
 1984年にフランス国立行政学院に留学。
 1998年大蔵省接待汚職事件発覚。 
 2001年1月大蔵省廃止、財務省新設
 2004年に女性で初めて主計局主計官就任。主に防衛関連の予算を担当。
 2005年7月に国際局開発機関課長就任、翌月財務省退官。

 20年余も在籍していて、予算も担当した。にも関わらず、古賀茂明氏が描く財務官僚とは似ても似つかない輝きを持たせてその姿を評価する。程度の低い判断能力しか持ち合わせていないから、身贔屓ができる。

 古賀氏が指摘している財務官僚の予算折衝は単なる金額の駆引きとなっているに過ぎない。値切られる一方であったなら、予算額は減少し、赤字とはならないはずだが、値切られる方も、値切られることを承知していて、この手の予算はどのくらい、別の予算はこのぐらいと値引き額を予想していて、前以て予算額を底上げしている、あるいは水増ししているだろうから、落とし所が決着して、「有り難うございますっ」と深々と頭を下げて大感激の様子を見せたとしても、相手に花を持たせる演技に過ぎず、相手にしても予算は自分が取り仕切っていると思い込んで虚栄心を痛く満足させることができるだろうが、財政再建とは無関係の力学を取って予算額は減少せず、増額一方となり、赤字予算で手当しなければならなくなるといった経緯を踏んでいると解釈しなければ、年々増加していく赤字国債額と先進国随一の赤字国という説明がつかない。

 要するに事業の必要性と費用対効果、あるいは国民生活に対する利益寄与の面から議論・折衝して予算額を決定づけていく予算編成ではなく、単なる金額交渉に堕しているから、こういった現象が起きるのだろう。

 財務官僚は優秀だと言われているが、あくまでも他省庁の官僚との比較であって、この程度の頭しかないらしい。他の省庁は推して知るべし。

 この程度なのに、片山さつきは「国士」だと持ち上げる判断能力を示した。察するに片山さつきを見れば、財務官僚の判断能力程度が分かる、片山さつきと財務官僚とは頭の程度が共通項を成しているということでなければならない。

 古賀氏が指摘している財務官僚の予算編成手法・予算編成能力ではいくら消費税を増税しても追いつかないということになる。当然、消費税増税後の財政再建化は当初はその気になって努力して少しは改善されるかもしれないが、金額交渉に堕した予算編成を習慣としている以上、元の木阿弥、財務官僚は虚栄心を満足させるメリットを取って、自分を偉く見せたいばっかりに金額交渉に後戻りしない保証はない。

 逆に予算折衝が金額交渉から脱することができ、事業の必要性と費用対効果、あるいは国民生活に対する利益寄与を厳密に検証する折衝となった場合、予算額自体を減らすことができて、消費税増税の必要性は減少させることができる可能性が生じる。

 野田首相が言っている「やるべき仕事」とは消費税を第一番に増税することではなく、官僚を政治主導のもとに置き、予算編成の手法を変えさせることということになる。

 この点でも野田首相は指導力と合理的判断能力を欠いていたことになる。

 結果、口では聞こえのいい発言を繰返すことになる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする