7月31日(2012年)「社会保障と税の一体改革特別委員会」で、新党「国民の生活が第一」の森ゆうこ議員が質問に立った。NHK中継から、文字化してみた。
森ゆうこ議員「『国民の生活が第一』の森ゆうこでございます。明日、私共『国民の生活が第一』は党本部をお披露目させていただくことになっております。
えー、それから、国民の皆様に対してしっかりと我々の、えー、目指すべき国民の生活が第一の政治を、えー、ご理解頂くように活動してまいりたいというふうに思います。
あの今程、公明党議員から、もうこの議論は熟したというふうなお話がありましたけども、(声を強くして)飛んでもない話だと思います。
重要な論点について全く真摯なご答弁がございません、というふうに思いますので、えー、その重要な論点についていくつか、私はすべて、えー、総理に対して質問させていただいておりますので、ご答弁を頂きたいというふうに思います。
先ず、デフレ下での消費税増税で、ホントーに税収が増えると総理はお考えでしょうか」
野田首相「えー、足許の経済状況によりますと、1月から3月期、実質成長率の4.7%という形で緩やかに回復傾向にあると思います。
但し、復興需要を背景にしておりますので、えー、25年度はまさに民需主導の経済成長にと移行させていかなければならないと考えております。
ま、今日も閣議決定で日本再生戦略を纏めさせていただきましたが、しっかり経済対策を講じてですね、デフレから脱却し、経済の活性化を図って、えー、今回のご審議いただいている一体改革の法案、その付則の18条に経済の好転と書かれておりますので、そうした状況を実現できるように全力を尽くしていきたいと考えております」
森ゆうこ議員は「デフレ下での消費税増税で税収が増えるのか」と二つの条件設定を行なって聞いた。対して野田首相は現在まだ増税していない「デフレ下」という片方の条件設定のみで、いわばもう片方の「消費税増税」という条件設定を抜いて、税収が増えることもあり得るとトンチンカンなことを答えている。
だから、森ゆうこ議員の次の発言を引き出すことになった。
森ゆうこ議員「私の質問に、あのー、きちんと、ストレートにお答えいただきたいんですが、総理はデフレの状況下で増税した場合に税収は増えるとお考えなのか、デフレ下では税収は増えないとお考えなのか、どちらなのか、ご答弁いただきたい」
野田首相「ま、現時点に於いて、デフレから脱却できていませんけども、先程申し上げたように経済的な見通し等々を含めてこうした見通しを前提にして消費税率を引き上げた国・地方併せてやった場合に平年度増収未確認(見通し?)は2015年度時点で5%相当額は13.5兆円となりますので、税収確保につながると、考えております」
5%から10%に消費税増税した場合の計算上の税収見込額13.5兆円を以って税収確保につながると答えている。消費税増税がもたらす一種の強制的な徴収による機械的増収を聞いているのではなく、消費税増税を受けた場合の個人・企業等を含めた自律的経済活動による増収が期待できるか聞いているのであって、自律的経済活動が消費税増税によってブレーキが掛かった場合、消費税増税による税収見込額もマイナスの影響を受けることになるが、野田首相は消費税を上げることにのみ目がいっているらしい。
森ゆうこ議員「あの、デフレ下でも税収が増えると今、おっしゃったのですか。今のご答弁、ちょっと理解ができないのですが、デフレ下でも増税して税収は増えると、いうふうにお答えになった。その前提でのその数値を、えー、言われたんでしょうか」
委員長「安住財務大臣」
森ゆうこ議員「(着席した状態で手を前に出して遮るようにして)いや、安住さん、いらないですよ」
安住財務相「ちょっとだけ」
森ゆうこ議員「いいです。あなたの人をおちょ食ったような答弁いらないです」
委員長「指名しております」
安住財務相「あのー、小泉政権下で、えー、2003年度から2006年度に於いて、これは、あの、GDPデフレ下はマイナス、先生ご存知のように、であったわけでございますが、その間、税収は好景気ということで、上がっておりますので、デフレだからと言って、あのー、税収は下がるわけではないというふうに私共は思っております」
野田首相と同じ趣旨の不甲斐ない答弁となっている。
1988年の竹下内閣時に3%の消費税法が成立、その年の12月30日に公布、翌年の1989年4月1日に施行。村山内閣に内定していた3%から5%への引き上げを1997年4月1日に橋本内閣が実施。
2001年4月から2006年9月までの任期の小泉政権下では消費税増税は行なっていないのだから、「デフレ下での消費税増税」という条件設定は存在しなかったにも関わらず、その条件抜きにデフレ下でも増収はあると、景気が良くなればそうなるのが当たり前のことを言っている。
まさしく人をおちょ食った答弁そのものだが、安住は森ゆうこ議員の非難さえ気づいていないのではないのか。
森ゆうこ議員「今、私は、デフレ下で、このように消費増税、大増税をしても、税収は増えるんですかって言ったんです。だから、あなたの答弁いらないって言ったんですよ。
人をおちょ食ったようなね、答弁の繰返しは全く不愉快です、もう、答弁いりません。総理に聞いています。
デフレ下で大増税をして、ホンートーに税収は増えるんですかと聞いているんです。どちらなんですか。
どうしてこういうことをはっきりと(テーブルを指で叩いて)答えないんですか。デフレ下でも税収は増えるのか、増えないのか。私はそのことだけを聞いてるんですよ。
先ず、そのことにきちんとお答えください」
もしかしたら、腹の中で、「ボンクラ揃いめっ!」と舌打ちしながら罵ったかもしれないが、罵って当然。
野田首相「先ず現状に於いてデフレから脱却しておりませんけれども、いっとき37兆円に落ち込んでいた税収は今44兆円台にまで回復しております。
一方で、消費税の引き上げ、それは国民の皆さんにとってもご負担をお願いをする話でありますけども、社会保障にすべてを当てる話しであって、将来に対する安心というものは確保することができるならば、それは安心して消費に回る。経済活動におカネが回っていくという可能性も十分に期待できる、と思っています」
同じ答弁の繰返しであって、森ゆうこ議員の質問に対する直接の答とはなっていないばかりか、「将来に対する安心というものは確保することができるならば」以下は推測を混じえた可能性に過ぎない。あるいは最悪の希望的観測に過ぎないかもしれない。
急速な少子高齢化が労働人口の減少に直結して招く経済の縮小が、少子高齢化に対する政治の無策も重なって、社会保障制度の持続可能性を食い潰す危険因子となった場合、「将来に対する安心というものは確保することができるならば」といった可能性、あるいは希望的観測などは吹っ飛んでしまうかもしれない。
森ゆうこ議員「ま、何回質問しても、このシンプルな質問にさえ、きちんとお答えいただいていない。デフレ下で大増税して、消費税は増えるのか。あ、ごめんなさい。税収が増えるのか、増えないのか。
この認識についても、お答えいただかない。全く残念でございます。命賭けて、命賭けてやってらっしゃるんじゃないですか。心から、心から、心からお願いしているんじゃないんですか。
何でこういう質問にきちんと答えないんですか。
じゃあ、お聞きしますけども、デフレ解消しなければ、消費税増税はしないんですか」
野田首相「あの、先程も申し上げたとおり、デフレ下でも税収は上る可能性はあります。先程申し上げたとおり、消費税だけで13.5兆円。実質1.1%の成長の慎重な見通しでつくっておりますが、そうなります。
加えて、経済に対する、あるいは将来に対する不安はなくなったときに、それは負担だけで見なければ、私は経済の活性化にもつながると、先程申し上げたとおりであって、デフレ下でも税収は伸びる可能性はあるということでございます。
で、よろしいでしょうか」
森ゆうこ議員「デフレ下に於いて大増税して税収が伸びた。そんな歴史はありません。デフレ下に於いて消費大増税をして、税収が落ち込み、さらに財政が悪化し、僅か1、2年で、財政の、おー、赤字が3倍、約3倍、程度に増えた。
これは例えばアメリカのフーバー政権であります。そして日本の歴史に於いてもあります。
こういうシンプルな説明、えー、質問にきちんとお答えいただかないと、いう、いけないと、いうふうに思いますし、何か、あのー、増税推進派の議員がですね、あの、地元に帰って、デフレ下、あー、では、絶対増税しないんだ。だから、大丈夫なんだ。
それはウソですよ。今おっしゃったでしょう。デフレは解消しなかった場合には、消費税増税は絶対しないのかといった質問に対しては、ま、そうではないと。デフレ下でも消費税増税するんだと。
ホントーに大丈夫なんですか。で、総理は、総理は、今、国民がどのような生活、苦しんでいるのか、ホントーに国民の皆さんの生活の実感をご存じないでしょうか」
野田首相「あの、デフレ下で税収は上がるのかどうかという話に私はお答えを致しました。デフレ下という中で増税をするという言い方をしていません。
それをちょっと質問と食い違っているというふうに思います。あくまで18条が、これ法律案の中に出ていまして、経済の好転という条件があります。それは、実質名目成長率であるとか、物価等々、よく勘案しながらよく判断をすると。
そういうことでございますんで、ちょっと前提の質問の条件と違うと思います」
前提を間違えているのは野田首相の方だということに気づかない。「デフレ下での増税」という二重の条件設定の内、相変わらず「増税」という条件設定を抜かしている。
森ゆうこ議員「いやー、呆れましたね。私の質問はデフレ下で消費大増税をして、その場合に税収は伸びるんですかと、いうことを何度も繰返して質問をしているにも関わらず、自分、あの、総理ご自身が全く違う答弁をやっていると。
あの、もう一回説明して、何なんですか、その答弁。何言ってるんですか。ホントーに。
で、あのー、今の私の質問に全然答えてないじゃないですか。
これは厚生労働省が発表を致しました。えー、社会、あのー、一世帯当たりの平均所得金額の年次推移でございます。えー、パネルをご覧頂きたい。
皆さまのところでは資料をお配りさせていただいておりますが。えー、平成22年の一世帯当たりの平均所得は538万円でございます。ほぼ23年前の水準。
平成6年のピーク時から比べますと、130万円も落ち込んでおります。子どものいる世帯では、658万円と。
これも約20年前と同じ水準、ということで、平成8年のピーク時に比べますと、同じように130万円減っているわけです。生活が苦しいと答えた世帯、過去最も61.5%。特に子どものいる世帯では、70%の世帯が生活が苦しいと回答しているわけでございます。
こういう実態を総理はご存じないんでしょうか。なぜこういう状態になっていると思うんですか」
野田首相「え、急速な少子高齢化、あるいは雇用や家族、地域社会のあり方が変化をしています中で、所得格差についても拡大をしている傾向が見られると思います。
あの、今資料をお示しいただきましたけども、えー、貧困格差問題が大きな課題となっていると認識をしております。一つには非正規雇用者の数が、割合が増えてきているということ。それから生活保護受給者の数が増えてきていること等々、他の数字からもこうした傾向は認められると思います。
また、えー、相対的貧困率は、97年には14.6%であったものが、2009年には16.0%になっています。子どもの貧困率は97年に13.4%デあったものが、09年には15.7%に上昇をしています。
今回の一体改革はこうした状況を改善し、分厚い中間層を復活させることを目指し、若者や女性や高齢者や障害者など働く希望を持てる全ての人に就労促進等の強化を図ること、あるいは短時間労働者に対する厚生年金と健康保険の適用を拡大すること、国民健康保険の保険料をや介護保険の高齢者の保険料の経営者所得者軽減強化など行なって、国民が安心して生活できる、重層的なセーフティネットの構築を図って行きたいと考えています」
この答弁を行なっている間中、殆ど原稿に目を落として熱意もなく読み上げている。お笑い芸人ふうに言うと、「評論家かー」と言いたくなる。単に現状を説明しているに過ぎない。こういった社会的悪化状況に政治が無策、あるいは無力であったことの反映としてある悪化拡大であるという認識をどこにも窺うことができない。
自公政権下の出来事であったとしても、そういった無為・無策・無力の政治を止めることができなかった野党の責任もある。勿論、国民にも責任はある。
その責任意識があったなら、熱意もなく現状を書き記した文字を単に読み上げるだけといったことはできないはずだが、実際には単に読み上げただけで終わっている。
だから、森ゆうこ議員から、「他人事(ひとごと)のような答弁」だと言われる。まさしく的確に言い当てている。
社会の悪化拡大状況に与野党含めた政治は無力であり、無策であり、無為であった。消費税増税して、国の税収がいきなり増えるからといって、日本の政治はいきなり力をつけることができると期待できるのだろうか。実行力のない首相ばかりが続くのである。
森ゆうこ議員「ま、他人事のような答弁。大変呆れるんですけども、これだけ厳しい家計の状況になってるんです。別に厚生労働省から調査を報告して貰うまでもなく、我々は、国民の代表として、毎日、えー、様々なお暮らしをされている皆様から色んな声を頂き、その場に出かけていって、暮らしを見て、それで、本当に苦しい、こんな状況の中で消費税増税したら、却って大変なことになる。
経済は落ち込み、税収落ちて、財政は悪化している。だから、我々は別なことをやろうと。国民の生活が第一の政治をやろうと、いうふうに決めたのではなかったのかというふうに思います。
2016年、まあ、試算しますと、300万円の年収の世帯では、2016年では257万円になるんですね。こんなんで暮らしていけるんでしょうか。
えー、ホントーに国民の生活が分かっていない。残念で仕方がありません。
で、総理、今お答えになりました、子供の貧困でございます。あのー、前にも予算委員会で議論させて頂いたんですけども、OECD加盟諸国の中で、ま、税と社会保障の一体改革と言うのであればですね、ま、少なくとも所得再分配機能が高まる。今はOECD諸国で唯一、えー、税と社会保障で本来、えー、所得再分配機能が強化されなければ、いけないわけですけれども、逆機能と言って、却って格差が広がっているんですね。
で、窺いますけれども、今回の税と社会保障の一体改革を行ったのち、この逆転機能、えー、社会保障の逆転機能というのは、えー、解消されるんでしょうか。具体的にお答えいただきたいと思います」
提示したパネル「所得再分配の前後で見た子どもの貧困率の水準(2000年代中頃)」の日本の場合は――
再分配前 12.4%
再分配後 13.7%
と書いてあって、子どもの貧困率は却って再分配後の方が拡大・悪化している。
小宮山厚労相「えーと、委員ご指摘のその子どもがいる世帯の、えー、非常に所得が大きかった、それは、まあ、雇用者の所得が大きく減少したことが、えー、子ども手当による所得の増加分というか、あるわけですけども、えー、全体としてですね、今回の所得補償の中で、再三申し上げているような、全世帯対応型ということで、子ども・子育て、しっかり支援をしていく。
そうした中で、えー、結果として、その、えー、再分配機能が高まっていくというふうに考えていますし、また税の方でも、そのような、あの、対応が次第に取られて行く形をとっていくというふうに考えています」
社会保障と税の一体改革を行えば、「結果として(所得)再分配機能が高まっていくというふうに考えています」と、単なる見通しを述べている。
森ゆうこ議員「あまりにも曖昧な、漠然としたお答えで分からないんですけども、こういうふうにOECDの調査では完全に逆転しているわけですね。
で、えー、百歩譲って大増税には反対ですけれども、最初民主党案提示されたときには、少なくとも、この所得再分配機能を高めるために高額所得者の皆さまから少し我慢をして頂いて、年金の財源に当てるとか、こういう所得再分配機能を高めることが中に入っていたわけですけれども、それを結局3党談合の中でなくなってしまいました。
あのー、総理、ホントーに、ま、具体的にお答えください。所得再分配機能、逆機能、これ解消されるんですか」
野田首相「あの、社会保障そのものがですね、再分配機能、があると思いますが、その中でも、特に今回の改革の柱というのは給付は高齢者中心、負担は現役中心という、その構図を改めて、給付・負担両面に於いて、世代間の公平を図っていくという中で、特に給付の面で、人生前半の社会保障、子ども・子育てのところに力を入れていく、充実をしていくということでございますので、あの、解消にはつながっていくと、基本的には、あのー、考えておりますし、先程、所得税の等のことがお話がございました。
これは25年度の税制改正の中で所得税や資産課税について再分配機能強化という視点で改革を行なっていくことについては、その3党間の合意をしたところでございます」
森ゆうこ議員「ま、しかし、今以てその具体像は示されておりません。すべて先送りなんです。その、一体改革と言いながら、すべて先送りでございますが、その国民会議で一体何をお決めになるんですか。
そして、後期高齢者医療制度の廃止はもう諦めたんですか」
安住財務相「森先生、文部副大臣をおやりになっていましたから、ご存知だろうと思います。税制改正は何もやっていないのではなくて、年度改正はこの年末にやるわけですから、あの、先送りしているわけではございません。
その中で、あの、先生が言うように少しおカネ持ちの方の方(かた)に税金を少し納めて貰うような、工夫をしたらどうだろうかということについては、3党で、総理が今お話があったように合意しておりますから、累進率を高めるような方向で、税制調査会等が纏めていきたいと思っております」
森ゆうこ議員「安住大臣の詭弁には私は飽きあきしてるんですよ。あの税制改正、税制改正は私は、税制改正は、あの、政府税調のメンバーでしたよ。だけどね、こういう今度言ったようなまともな議論をしてもですね、全くお答えがない。
そしてそのまま強硬に消費税増税ありきでどんどん進んでいってしまった。ま、だから、法案が提出されたときに文部科学副大臣、もうこれ以上やることはできないと言って、辞表を出して辞めさせていただいたわけでございます。
で、年度で(税制改正を)やりますよ。だけど、今、税・社会保障、税の一体改革で消費税のこと議論してるんじゃないですか。一体改革と言うなら、他の税にしても、きちんと議論をする。
それで初めて、税と社会保障の一体改革じゃないんじゃないでしょうか。
で、あの、総理、いいですか。(安住が手を上げたのに対して右手を前に出して押しとどめようとする仕草をする)本当に、もいういいですから(声を強める)。
で、総理、総理、後期高齢者医療制度廃止、諦めたんですか。いいですよ、総理に聞いているんですよ。命懸けでやるんでしょ。命懸けでやってるんじゃないですか。総理自らお答えください」
安住にはストーカーの気(け)があるのかもしれない。
野田首相「あの、諦めたということじゃなくて、この国会の審議に何度も議論になってますけども、公的医療制度、あ、すみません、高齢者医療制度と公的年金制度等についてはですね、えー、合意に向けて3党で協議をすると。そういう場所で私共の主張というものをしっかりと行なって行きたいと思いますし、国民会議を、えー、開催をさせていただくときも基本的にはそういう姿勢で望んでいきたいと思います」
森ゆうこ議員「成立の見込みはあるんですか。で、今回のこの国会では、もう審議する時間はございませんよ。
えー、次期国会、そして通常国会。きちんとお出しになるんですか。そしてですが、最低保障年金は、えー、法案はいつお出しになるんですか」
小宮山厚労相「総理もお答えになりましたように後期高齢者医療制度については改革会議で纏めたものを何とか出せるように調整をしておりましたが、今回は3党で合意をされましたのでそれは国民会議の中で主張して参ります。
それから、あの、新しい年金制度についても、えー、これは24年度に出すと、いうことでやってまいりましたが、これはその前提として3党合意があり、国民会議で議論をするということになりましたので、その中でしっかりと主張させていただきたいと考えております」
与野党の力関係が決めた、単独提出断念と3党合意への先送りであり、その力関係はのちのちの議論にも当然、影響していく。
森ゆうこ議員「まあ、しっかりと主張をすると。つまり何も決まっていない、ということですし、えー、だから、先送りと言われても、もう否定できないわけです。
でも、しっかりやるんだ、あの、しっかりやるんだ、必ずやるんだと、まあ、強弁をされるわけですけども、先程来、自民党、公明党の議員の皆さんの委員会の中で色々お話をされましても、まっーたく意見が食い違ってる。
だから、社会保障については全く先送り。何も決まっていない。国民会議で何をキマ、どういう方向で決まるか分からない。
しかも、最低保障年金に対しては先程公明党の議員の質問にもありましたけども、年金の枠外だと。えー、低所得者の、低年金の人たちに対しては枠外だと、全く出す方向とは違う方向に言っているわけですございます。
で、あのー、中村哲治理事が本当に論理的な真摯な質問をして、えー、それに対してきちっとお答えがないんですけども、ホントーに日本は財政難何でしょうか。パネルを出してください。
(当の中村哲士議員が隣席に座っていて、パネルをテーブル上に出す。
「野田政権発足以降の主な対外的資金のコミット表明」
対外融資や資金拠出、途上国支援等――16兆8133億円
平成23年の為替介入――14兆2970億円
合計31兆1103億円)
ま、野田総理が政権についてから、何回もやりますけどもね、もう世界に行って、大盤振舞い、大盤振舞いなんですよ、ホントーに、びっくりいたしますけれども、えー、大体、為替介入も入れて、合計31兆1103億円、おカネ、あるじゃないですか。
何で先ず、今傷んだ国民の生活を、えー、再建し、そして安住大臣、被災者、えー、被災地の人たちを救おうとしないんでしょうか。
そして、私は昨日、孫が、息子夫婦が来まして、えー、孫が泊まったんですけども、その、今朝、お嫁さんがね、こういうものを(A4版程度の髪を手に取って)、お母さんって言って出されました。保育所入所不承諾通知書でございます」
委員長「お纏めください」
森ゆうこ議員「理由は定員超過のため。名古屋に住んでおりますけども、大変な待機児童ということで、ま、今回ですね、3党合意――、3党の中で、えー、当初出し――」
委員長「時間が過ぎております」
森ゆうこ議員「分かりました。すぐ、今纏めます。当初出した、えー、総合こども園の法案、後退をしております。あの、株式会社の参入、これ削られました。
これで(こども園が)全く増えるのかどうか、ということも申し上げて、私の質問を終わります」(以上)
野田内閣の「社会保障と税の一体改革」は参議院に於ける野党の与党を上回る数の力が全体的な力関係を決して、その優劣が影響して後退し、変質することになった。
既に触れたようにこの力関係は今後の国民会議でも着実に作用していく。
野田首相にこの力関係を跳ね返すだけの指導力があればいいが、力関係に流されるだけの指導力しかない。
当然、自分たちが当初想定した成果とは異なる成果を迎えることになるばかりか、デフレ下での増税と税収増との対立関係に影響を受けた場合、国民の負担だけが残るという悪結果を招く危険性が予見される。
森ゆうこ議員が懸命にこの流れを押しとどめようとするが、野田政権側に聞く耳を持たないのは、国民の生活よりも税収だけに目がいっているのは答弁のその不甲斐なさからでも窺うことができる。
労働人口の減少と経済の縮小を招くことになる急速な少子高齢化に対して政治が今以て何ら有効な対策を打ち出し得ていないことも懸念材料となる。
いくら子ども・子育てのところに現金給付して、出産率向上を計っても、なお進行していくかもしれない消費税増税の前に萎縮し、現在のように出産意欲を損なわない保証はないし、そうでなくても、現在進行中の少子高齢化を是正する抜本策とならないことは目に見えている。