2010年9月7日の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件以来、民主党政権が頻繁に口にし、野田首相もその閣僚も引き続いて口にしていることだが、韓国大統領の竹島上陸、香港民間団体の尖閣諸島・魚釣島上陸を受けて、昨日8月24日(2012年)記者会見した中でも野田首相はその常套句となった言葉を発言している。
《【首相記者会見】詳報(2)「韓国の賢明なみなさん。礼を失する言動は、お互いを傷つけ合うだけだ」》(MSN産経/2012.8.24 19:33)
野田首相「尖閣諸島については、歴史的な経緯や状況が竹島とは異なり同一には論ずることはできませんが、これもまた、日本固有の領土であることに疑いはありません。そもそも、解決すべき領有権の問題が存在しないという点が大きな違いです」
「そもそも、解決すべき領有権の問題が存在しない」なら、大戦末期に起きた疎開船遭難事件の慰霊祭開催のために政府に魚釣島上陸の許可を求めたが、不許可としたのはなぜなのだろう。
そもそもからして日本の領土であり、「解決すべき領有権の問題が存在しない」と言うなら、自由な往来が可能なはずだが、日本国憲法が保証する「居住・移転の自由」に反して自由な往来が禁止され、何故に政府の許可を求めなければならないのだろう。
東京都が尖閣諸島購入を巡ってその土地調査の上陸許可を政府に求めなければならないのはなぜなのだろう。「平穏かつ安定的に維持・管理するため」という口実を設けているが、日本固有の領土でありながら、特別な許可以外は誰も上陸させない、誰も近づけさせないという「平穏かつ安定的に維持・管理」とはどういった性質の規制なのだろうか。
東京都の上陸許可申請に直ちに許可を与えないのはなぜなのだろう。
「解決すべき領有権の問題が存在しない」にも関わらず、尖閣諸島周辺の海域に埋蔵されている豊富な地下資源をなぜ開発しないのだろうか。
すべては「解決すべき領有権の問題が存在しない」とする宣言に反する行政措置となっている。
「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土」であることを事実としていたとしても、北方四島と同様に、「北方四島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土」としていながら、そこにロシアとの間で領有権の問題が障害として立ちはだかっているように、尖閣諸島についても「解決すべき領有権の問題が存在」しているからこそ、自由な移動を禁止し、海底資源も開発できずに眠らせた状態に放置しているはずだ。
「Wikipedia」に、〈1969年(昭和44年) - 国際連合アジア極東経済委員会による海洋調査で、イラクの埋蔵量に匹敵する大量の石油埋蔵量の可能性が報告される。〉という記述がある。
〈2010年末国別石油埋蔵量トップ10〉(OPEC統計 vs BP統計)を見てみると、OPEC統計では次のような順位となっている。
ベネズエラ 2965億バレル
サウジ 2645億バレル
イラン 1512億バレル
イラク 1431億バレル
クウェート 1015億バレル
アラブ首長国連邦(UAE) 978億バレル
イラク以下の埋蔵量のクェートでは、300万人前後の人口という少なさもあるが、在日クウェート国大使館HPにはクウェート経済として、〈莫大な石油収入を背景として、国民に対する社会福祉が充実していることと国民の生活水準が高いこともまた、クウェート経済の特徴である。クウェートの社会福祉水準の高さは世界でも群を抜いており、いまだに公共の医療施設の医療費と学校の教育費は無料のままである。その他、電気、水、電話料金なども政府の補助金制度により低く抑えられている。 〉と記述されている。
またクウェートに次ぐ石油埋蔵量のアラブ首長国連邦(UAE)は「Wikipedia」に、〈教育や医療は無料で、所得税もない。〉と書いてある。
アラブ首長国連邦の人口は約460万人。イラクと同程度の海底埋蔵石油資源を開発、活用したとしても1億3千万の国民すべての医療費・教育費を無料とまで持っていくことはできないだろうが、クウェートのGDPの半分が石油収入だという記述がインターネットにある。
クウェートの2011年のGDPは1766億ドルを70円換算すると、12兆3620億円、その半分が約6兆円だが、日本の場合は技術を活用して付加価値をつけるだろうから、10兆やそこらの経済効果は見込めるはずである。
2015年(平成27年)10月1日、消費税を10%に引き上げると、約13・5兆円の増税となるそうだが、尖閣諸島に「解決すべき領有権の問題が存在しない」なら、もっと早くから海底資源を開発していたなら、消費税を10%まで引き揚げなくて済む可能性すら浮上する。
これまで国際的な様々な影響を受けてエネルギー無資源国の日本は石油高騰に苦しめられてきたのである。石油資源は豊富にある、技術もあるで、「失われた10年」だ、格差社会だ何だと国民の誇りを奪う事態も回避できたかもしれない。
尖閣に関して「解決すべき領有権の問題が存在しない」が真正な事実なら、直ちに海底資源の開発に取り掛かるべきである。
もし直ちに取り掛かることができなければ、「解決すべき領有権の問題が存在しない」の御託はマヤカシそのものとなる。
記者会見冒頭の次の発言もマヤカシそのものとなる
野田首相「わが国は世界に冠たる海洋国家であることを確認したいと思います。わが国は国土面積でいうと、世界で61番目の国ですが、領海と排他的経済水域を合わせた管理する海の広さでは、世界第6位の大国となります。海の深さを計算に入れた体積では実に世界第4位に躍り出ます。わが国を広大な海洋国家たらしめているもの、それは竹島や尖閣諸島も含めまして、6800を超える離島の数々であります。
わが国固有の領土である離島の主権を確保するということは、海洋国家日本の壮大なフロンティアを守るということに他なりません。今求められているのは、こうした離島に託されているわが国にとっての重要性をしっかりと見据えることです。そして、与党、野党の垣根を超えたオールジャパンで、わが国として主張すべきことを主張し、進めるべきことを粛々と進めるという姿勢であります」(同MSN産経)
「海洋国家日本の壮大なフロンティアを守る」も、「わが国として主張すべきことを主張し、進めるべきことを粛々と進めるという姿勢」も、領土問題に関わる政府対応の実態を見ると、すべて虚しく聞こえる。すべて虚(うつ)ろに聞こえる。
言葉は立派に並べ立てるが、菅前無能と同様、言葉の人、言行不一致の政治家に過ぎないようだ。