昨日の民主党代表選で野田首相が他の3候補に圧勝した。
野田首相
国会議員票+公認候補予定者票――429ポイント
地方議員票――93ポイント
党員・サポーター票――296ポイント・・・・・計818ポイント
赤松広隆元農相
国会議員票+公認候補予定者票――81ポイント
地方議員票――18ポイント
党員・サポーター票――24ポイント・・・・・計123ポイント
原口元経産相
国会議員票+公認候補予定者票――62ポイント
地方議員票――20ポイント
党員・サポーター票――72ポイント・・・・・計154ポイント
鹿野元農水相
国会議員票+公認候補予定者票――86ポイント
地方議員票――10ポイント
党員・サポーター票――17ポイント・・・・・計113ポイント
他3候補は足許にも及ばなかった。
だが、野田首相が掻き集めにも掻き集めた見事な圧勝は砂上の楼閣に過ぎないだろう。このことは近づく次期衆院選に対して野田内閣支持率と衆院比例区投票先世論調査の期待値の低さを見れば証明してくれる。
例え「近いうちに信を問う」の約束を二枚舌、三枚舌で破って衆院解散を先延ばしし、任期満了まで持ちこたえたとしても、参院の与野党逆転状況が内閣運営と法案成立の足を引っ張って、急激な支持率回復を難しくするだろうし、この支持率回復の障害が衆院任期1カ月前の参議院選挙に有利に働く要因を見い出すのは困難で、参院選敗北、次の衆院選も敗北、野党転落は予想される状況にある。
また、野田首相の民主党代表選票の大量獲得が砂上の楼閣に過ぎないのは党員・サポーターの投票率が過去最低だったというところにも現れている。《民主代表選、党員・サポーター投票率は過去最低》(YOMIURI ONLINE/2012年9月22日00時42分)
党員・サポーター投票率
2002年9月――51・3%
2010年9月――66・9%
2012年9月――33・7%
2010年9月と比較して、約半分に減っている。これは離党議員数から言って、小沢氏とそのグループの離党だけが影響していることではあるまい。民主党に対する期待値の急激な低下が現民主党議員数と離党議員数との比率を超える投票率の低下となって現れているはずだ。
野党転落が間近に迫っているとなれば、砂上の楼閣と言える圧勝であると同時に徒花(あだばな・咲いても実を結ばない花)とも形容可能な代表再選とも言える。
野田首相は代表選投票直前の演説で、次のように発言している。
野田首相「子どもを元気にすること。働く人を元気にすること。地方を元気にすること。これらを通じて日本を元気にする。これが民主党らしい改革です」
野田首相は言葉の人である。尤もらしげな美しいスローガンで訴える。だが、政権交代から3年。もうスローガンを並べ立て許される時期は過ぎている。有言したことを実行し、成果を問うときが来ている。
野田政権が誕生して1年しか経っていないと言うのは、「子どもを元気にできていないこと。働く人を元気にできていないこと。地方を元気にできていないこと、併せて日本を元気にできていないこと」の免罪符とはならない。民主党政権としての継続性を担っているはずだからだ。
民主党政権交代3年でそれぞれが少しでも元気になっていれば、いわば元気回復過程の途上にあるなら、内閣支持率は上がっている。
内閣支持率が日本が元気になっていないことの何よりの証明となっている。特に前菅政権と同様の軌跡を描いて、野田政権は就任以降、ほぼ下がりっ放しである。
内閣支持率と日本の元気は正比例と見るべきである。
確かに消費税増税は不退転の有言実行で実現を果たした。だが、その一体としての社会保障改革は不退転の有言実行を果たし得ていない。
例え社会保障政策に於いても有言実行を果たしとしても、野田首相はその持続可能な社会保障制度改革で全てが解決するかのように言っているが、子どもと働く人を元気にして日本を元気にする何よりもの政策となる保証はどこにもない。
いくら社会保障政策が充実し、持続可能であっても、基本は景気、雇用、給与であって、この基本線が満たされなければ、元気になりようがないからだ。
景気と連動する国家税収が社会保障に関わるサービスにも常に関わってくる以上、社会保障政策は常に絶対的な保証を約束しはしない。
景気対策としての家電エコポイント制度、住宅減税、エコカー制度にしても自民党の政策を受け継いだもので、民主党独自の成果ある景気対策は未だお目にかかっていない。
財界にしても、スローガンではなく実行を求めている。《実行する政治を…財界から再選・野田首相に注文》(YOMIURI ONLINE/2012年9月21日19時51分)
9月21日の談話とコメント
米倉経団連会長「課題山積の状況の中、決断し、実行する政治を進めてほしい」
長谷川閑史(やすちか)経済同友会()代表幹事「社会保障制度改革や震災復興、景気回復など山積する政治課題の解決を期待する」
二人とも具体的成果に期待している。言葉に期待しているわけではない。
この具体的成果に対する不作為を補う意味で、野田首相は一生懸命なまでに「子どもを元気にすること。働く人を元気にすること。地方を元気にすること。これらを通じて日本を元気にする。これが民主党らしい改革です」と口でサービスしているのだろうが、あるいは尤もらしい言葉で実効性を装っているのだろうが、美しいスローガンはもう終わりにすべきだ。
スローガンから既に脱していなければならないにも関わらず、そのことに気づかずに未だスローガンをぶち上げるのは、例え具体的成果に対する不作為を補う意味のものであっても、スローガンのぶち上げに満足しているからに他ならない。
いわば自己満足に浸っている。
これでは内閣支持率が上がるはずはない。退陣以外に道はないだろう。