9月1日(2012年)「防災の日」、午前7時、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3、最大震度6強の地震が首都圏を中心に広い範囲で発生したとする首都直下地震の発生を想定した、野田政権全閣僚参加の政府防災訓練が実施された。
野田首相自身が関わったどのような訓練内容か、どのような時間的スケジュールだったのか、時事ドットコム「首相動静」(9月1日)と、首相官邸HPの《平成24年度総合防災訓練》(2012年〈平成24年〉9月1日)、その他から見てみる。
午前8時10分~12分 総合防災訓練臨時閣議。(2分間)
13分~33分 総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議。(20分間)
50分~53分 総合防災訓練記者会見。(3分)
午前9時 5分~32分 総合防災訓練第2回緊急災害対策本部会議。(27分)
10分 国会前庭から陸上自衛隊ヘリコプター横浜市中区横浜海上防災基地ヘ
リポート同9時21分着。
24分 海上自衛隊の特務艇「はしだて」乗船、艦内視察。
川端達夫総務相、羽田雄一郎国土交通相、森本敏防衛相、中川防災担
当相同行。
32分 特務艇で同基地発。「9都県市合同防災訓練」の概要説明聴取。
午前10時55分 横浜市西区の合同防災訓練会場着。
黒岩祐治神奈川県知事、林文子横浜市長が出迎え、同訓練を視察。
午前11時35分~38分報道各社のインタビュー。(3分間)
記者「訓練に参加した所感を」
野田首相「東日本大震災の教訓を受け、政府としてもしっかりと対策に万全を期していきたい」
午後0時(正午) 閉会式挨拶。陸自ヘリで官邸帰着。
野田首相の防災訓練に関わる公務は以上である。以上を「異常」と当て字すべきかもしれない。
午前8時13分から33分まで、総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議を20分間、午前9時5分から32分まで、総合防災訓練第2回緊急災害対策本部会議を27分間、それぞれ開催している。
では次に首相官邸HPから、防災訓練に関して尤もらしげに謳った能書きを見てみる。
先ず首都直下地震発生想定後の行動として、次のように記述している。
〈閣僚安否確認の訓練を行うとともに、総理大臣官邸での地震災害応急対策の実施体制の確保等を図る政府本部運営訓練においては、第1回緊急災害対策本部会議を開いた後、野田総理は総理大臣記者会見で、緊急災害対策本部の設置、政府の対処方針の発表、国民への呼びかけを行いました。〉・・・・・
最初に閣僚安否確認の訓練を実施。
次に第1回緊急災害対策本部会議を開催、地震災害応急対策の実施体制の確保等を図る政府本部運営訓練を実施。
要するに人命救助や被災者避難、食糧・衣料・医療、避難場所確保等の生活支援、火災消火、あるいはインフラ復旧等の実施体制を確立し、運用するための各現地対策本部や各被災自治体間の情報共有に基づいた指示・情報収集等を如何に的確・迅速に行なって、政府本部を如何に的確・迅速に運営するかの訓練を行ったということであるはずだ。
これが20分。
午前9時5分から32分まで27分間開催した総合防災訓練第2回緊急災害対策本部会議に関しては、〈第2回緊急災害対策本部会議が開かれ、各省庁業務継続計画に基づく非常時優先業務の立ち上げ状況確認等が行われました。〉の記述となっている。
要するに各省庁から非常時優先業務の立ち上げ状況の報告を受け、確認を行ったということなのだろう。
肝心要なことは午前8時13分から33分まで開催した総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議で実施したはずの人命救助、被災者避難とその後の生活確保(=生命確保)等の地震災害応急対策実施体制の確立とその運用・運営の訓練・シミュレーションであって、この訓練・シミュレーションは各被災自治体や現地対策本部間等の的確・迅速な情報共有・情報発信・情報収集等の相互的情報処理、さらに指揮命令系統の確立と運用が伴って初めて十全な機能を持ち得て、実際の災害時に活用可能となる。
だが、所要時間20分で、果たして以上の訓練・シミュレーションを役に立つ内容で十全に行い得たのだろうか。
この種の訓練とは、明日起きるかもしれないという緊急事態を想定して行うものであり、明日起きても、十分に役立つように万全を期す訓練でなければ、政府としての危機管理とはならないはずだ。
このような必要性は菅前首相が東日本大震災に於ける政府危機管理対応で情報共有や情報発信の不備・遅滞、被災住民支援の遅滞と不手際、指揮命令系統の混乱等を招いていることによって特に重要性と重点化を増しているはずである。
菅前首相が東日本大震災発生2011年3月11日から約4カ月半遡る2010年10月20日・21日に静岡県中部電力浜岡原子力発電所第3号機の原子炉給水系故障により原子炉の冷却機能が喪失、放射性物質が外部に放出される事態想定の、「原子力災害対策特別措置法」に基づいて行われた平成22年度原子力総合防災訓練に参加していながら、東日本大震災発生に際して、同じ「原子力災害対策特別措置法」に基づいて原子力災害対策本部本部長として菅無能に義務づけられている政府原子力災害対策本部設置と原子力緊急事態宣言の発令に、根拠となる法律の確認に手間取り、原子力緊急事態宣言の発令に至っては東電の政府通報から約2時間20分遅れる失態を演じている。
菅の頭から平成22年度原子力総合防災訓練がトンでしまっていたのである。
同じく浜岡原発事故想定の原子力総合防災訓練でSPEEDIを用いて浜岡原発漏出放射性物質の拡散方向と拡散量をシミュレーションしていながら、福島第1原発事故ではその公表が遅れたことに対してSPEEDIの存在を知らなかったと言い、同じ原子力総合防災訓練で首相官邸設置のテレビ会議システムを使用、オフサイトセンター(静岡県浜岡原子力防災センター)を介して浜岡原発、静岡県庁、中部電力本店とリアルタイムの情報交換と情報共有の訓練・シミュレーションを行なっていながら、東日本大震災発生時には活用することを忘れて、回線の維持費が年間計5億~6億円にも関わらず宝の持ち腐れにしたという。
どういった脳ミソなのか、訓練の最重要項目がすべてトンでしまっていた。
原子力総合防災訓練で政府が行うべき各種危機管理の訓練・シミュレーションを体験していながら、実際の場合の初期活動に於いて何ら応用することができなかった。
このような記憶喪失の結果の情報発信と情報共有の失態・混乱であり、被災住民に対する生活支援等の遅滞・不手際であろう。
そのくせ、菅無能は「情報が上がってこない、情報が上がってこない」と周囲に責任をなすりつける一方であった。
当然、「平成24年度総合防災訓練」は菅無能の危機管理対応機能不全を教材として、情報発信・情報共有等の情報処理の最適な在り様、被災住民の生活確保(=生命確保)等に添った各種支援の最適な在り様を重点目標とした訓練・シミュレーションでなければならなかったはずだ。
そのためにはこの訓練の法的根拠となる法律(「大規模地震対策特別措置法」だと思うが)に基づいて、内閣府への地震災害警戒本部の設置、警戒宣言の発令等々、条文の一つ一つをクリアしていく形で訓練・シミュレーションを行うべきで、一つ一つクリアしていくことによって全体的な危機管理を頭に記憶可能として、実際の災害発生時に記憶したその危機管理を生かすという手順を取らなければならない。
このような方法こそが、原子力総合防災訓練を役に立たないものとした菅無能の失態の二の舞を避ける賢明な方法でもあるはずである。
果たして明日起きても万全を期すことができるように訓練の法的根拠となる法律の条文を一つ一つクリアしていく訓練・シミュレーション所要時間20分で足りたと言えるのだろうか。
首都直下地震関係自治体である埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の各県庁等に設置した政府現地対策本部との情報共有等の情報処理訓練・シミュレーションも含まれるのである。
マグニチュード7.3、最大震度6強の地震の場合、各自治体に於いてどのような被害が想定されるか、想定被害それぞれに対する救援対策、復旧対策、住民対策等々の報告を実際の地震発生時のように忠実に行うことによって、相互の情報連絡体制と的確な情報連絡方法の確認が可能となり、実際の地震発生時に応用可能な的確な情報共有等、あるいは的確な指揮命令等の機能的な危機管理へとつながっていく、
20分間の総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議で十分に実施できたとはとても思えない。
《野田首相“防災対策に万全を期す”》(NHK NEWS WEB/2012年9月1日 13時36分)によると、神奈川県横浜市・九都県市合同防災訓練会場では、破裂した水道管を塞ぎ、水を供給できるようにする応急給水訓練の様子を視察、地震の揺れを体験できる専用の車に子どもたちと一緒に乗って、震度7の揺れを体験、さらに炊き出しのカレーライスを試食したという。
野田首相は記者団に次のように発言している。
野田首相「多くの市民、ボランティアが訓練に参加しているのを見て、確実に防災意識が高まっていると感じた。政府の関係機関の連携を密にすることが重要であり、東日本大震災の教訓を受けて、これからも防災対策に万全を期していきたい」
所要時間20分からすると、口先だけの「政府の関係機関の連携を密にする」相互の情報連絡体制と的確な情報連絡方法の確立・運用の訓練・シミュレーションとしか受け止めることができない。
やるべきことを履き違えている。肝心なことを抜かして、炊き出しのカレーを試食している場合ではない。