安倍晋三の12月9日首相官邸記者会見には大いなるウソ・デタラメがある

2013-12-13 08:56:11 | 政治



 12月9日の記者会見はご存知のように臨時国会終了(2013年12月8日)に際してのものである。国民が騙されると思っているのだろうか。発言は首相官邸HP――《安倍首相記者会見》(2013年12月9日)に拠る。

 特定秘密保護法を正当化させるための方便に持ち出したのだろうが、逆に右翼の軍国主義者安倍晋三の合理的判断能力の程度の低さを曝したに過ぎない。

 安倍晋三「国家安全保障会議は、早速、先週発足いたしました。今後、このNSCが各国のNSCとの間で情報のやりとりを活発に行ってまいります。今年1月のアルジェリアでの人質事件の際には、イギリスのキャメロン首相から情報提供を受けましたが、こうした情報交換を進めることが、国民の生命と財産を守ることにつながると確信しています。NSCの新たな事務局長には、すぐにでも各国NSCとの連携と密にするため、1月から世界を飛び回ってもらわなければならないと考えています」――

 国家安全保障会議(日本版NSC)と特定秘密保護法を一体と考えて、日本が各国のNSCから情報の提供を受けるためにはその情報を漏洩させずに秘密として守る体制ができていなければ、提供を受けることができない。だから、特定秘密保護法が必要だという論法で正当化の裏付けを行い、法律化に成功した。

 この正当性の証明のためにアルジェリアの邦人人質事件の際のイギリスのキャメロン首相との電話会談を持ち出したのだろうが、そのときのキャメロン首相からの情報提供が人質として捕捉された日揮職員の生命と財産を守ったかのような言い方をしている。

 だが、キャメロン首相からの情報提供は「国民の生命と財産を守ること」に何ら役に立たなかった。

 ウソっぱちもいいとこである。

 何度もブログに書いてきたことだが、テロリストに対しての交渉当事国であるアルジェリアは「テロリストとは交渉せず」の立場を取っていた。いわば軍事的制圧優先の姿勢を政府の方針としていた。

 安倍晋三はアルジェリア政府がどのような立場なのか認識していなかったとしたなら、一国のリーダーとして最低限、アルジェリア政府は「テロリストとは交渉せず」の立場なのか、交渉して、ギリギリ人命を優先させる立場なのか考えなければならなかった。そして認識するために外務省なり、首相官邸なりに問い合わせなければならなかった。

 もし安倍晋三が「国民の生命と財産を守る」一国の首相としての使命を鮮明に意識していたなら、いずれの方法であろうと、アルジェリア政府が「テロリストとは交渉せず」の立場であることを認識し、認識に応じた行動を取らなければならなかった。

 いわば人質の生命を握っているのはテロリストであると同時にアルジェリア政府なのだから、アルジェリアの首相なり大統領なりに電話して、人命優先を訴えなければならなかった。

 だが、アルジェリア人質事件2013年1月16日発生10時間後に岸田外相がアルジェリアの外務大臣と電話会談して人命第一を要請しているが、右翼の軍国主義者安倍晋三は事件発生から23時間後、翌日の昼頃、訪問先のタイからキャメロン首相と15分間の電話会談を行った。

 その8時間後、アルジェリア政府は軍軍事作戦を開始。その4時間後、事件発生から翌々日の真夜中過ぎに同じくタイからアルジェリアのセラル首相に電話している。

 安倍晋三「アルジェリア軍が軍事作戦を開始し、人質に死傷者が出ているという情報に接している。人命最優先での対応を申し入れているが、人質の生命を危険にさらす行動を強く懸念しており、厳に控えてほしい」

 セラル首相「相手は危険なテロ集団で、これが最善の方法だ。作戦は続いている」(NHK NEWS WEB)――

 「MSN産経」記事が外務省の把握数として、各国の犠牲者数を伝えている。

 〈国別の犠牲者数は日本17人中10人(犠牲者率59%)、フィリピン(総数は不明)8人、英国(一部英居住者)29人中7人(同24%)、ノルウェー13人中5人(同38%)、米国10人中3人(同30%)〉――。

 その他の国の犠牲者合わせて被害者側48人、武装集団側32人の合計80人だそうだ。勿論、テロリストが殺した数も含んでいるだろうが、あくまでもアルジェリア政府の「テロリストとは交渉せず」の姿勢が発端となって招いた犠牲者数であり、国別では日本人が最多となった。

 これが安倍晋三の「人命最優先での対応を申し入れているが、人質の生命を危険にさらす行動を強く懸念しており、厳に控えてほしい」とセラル首相に対する要請の結末であり、セラル首相の軍事的制圧が「最善の方法だ」とした結末である。

 電話すべき相手の順序を間違えた上に17人中10人の日本人の犠牲者を出していながら、「今年1月のアルジェリアでの人質事件の際には、イギリスのキャメロン首相から情報提供を受けましたが、こうした情報交換を進めることが、国民の生命と財産を守ることにつながると確信しています」とさもキャメロン首相の情報提供が日本人人質の生命を守ったかのように言う。

 大体がキャメロン首相はテロ集団襲撃の情報を握っていたのだろうか。襲撃を防げなかった以上、他の国の誰も握っていなかったはずだ。

 勿論、過去に於いて襲撃情報を握っていて、それぞれの国同士の情報交換によって事前に類似の事件を予防したケースが存在するだろうし、あるいは今後、各国のNSCを通じた情報提供によって予防するケースも存在することになるだろうが、安倍晋三はアルジェリアの人質事件の際のキャメロン首相からの情報提供を例に挙げて、「国民の生命と財産を守ることにつながると確信しています」と言って、特定秘密保護法制定の正当化を謀るゴマ化しを働いているのである。発言自体がウソ・デタラメの最たるものとなっている。

 予防することができず、テロリスト集団の襲撃を受けた人質事件が発生した場合、どこの誰からどのような情報を提供されようとも、交渉当事国の対テロ姿勢を知る情報以外は役に立たず、人質の生命は交渉当事国の対テロ姿勢一つにかかることになる。

 安倍晋三にはこの解釈がない。解釈するだけの頭を持っていたなら、キャメロン首相と電話会談する前に、例え人命優先の要請が功を奏することがなかったとしても、アルジェリアのセラル首相と、それも軍事作戦開始前に電話会談していただろう。

 以って、この男の合理的判断能力を知るべしである。

 中田毎日新聞記者「毎日新聞の中田です。

 まず、特定秘密保護法についてお伺いいたします。特定秘密保護法については、成立後も国会での審議は不十分だったというような批判が強く、報道各社の世論調査でもそれは表れていると思います。総理は、この法律について、批判はどこに原因があるとお考えになりますか。

 もう一点。法律の施行日は公布の日から起算して1年を超えない範囲で定めるとされています。総理は既に発足したNSCを有効に機能させるために、できるだけ早い時期の施行を目指すお考えですか。それとも、世論の批判等を配慮して、できるだけ1年に近い準備期間を設けるお考えでしょうか」

 安倍晋三「まず、厳しい世論については、国民の皆様の叱声であると、謙虚に、真摯に受けとめなければならないと思います。私自身がもっともっと丁寧に時間をとって説明すべきだったと、反省もいたしております」

 いけ図々しいとはこのことだろう。衆参とも可決・成立ありきで審議を強引に打ち切り、強行採決に走った。成立させてから、いわばするつもりもなかったくせに、「もっと」という言葉を二度使って、「私自身がもっともっと丁寧に時間をとって説明すべきだった」と反省してみせる。

 これ以上のウソはないし、これ以上のデタラメもない。

 まだウソ・デタラメは存在する。自民党歴代内閣は外務省から核密約が存在することを知らされていながら、核密約は存在しないを公式な態度としてきたことに関してである。
 
 安倍晋三「今までの秘密(核密約)について、秘密の指定、解除、保全ルールがなかった、そこに問題があるのです。例えば、いわゆるあの日米安保についての密約の問題。私は、官房長官や総理大臣を経験しましたが、その私も、あのいわゆる密約と言われた事柄について説明を受けなかった」――

 だが、「Wikipedia」には次のような記述がある。

 〈日米政府の公文書公開により、寄港などの形で核持ち込みを知っていた政府高官は以下の通り。内閣総理大臣経験者として岸信介、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登、宇野宗佑、海部俊樹、宮沢喜一、橋本龍太郎、小渕恵三。外務大臣経験者として愛知揆一、木村俊夫、鳩山威一郎、園田直、大来佐武郎、伊東正義、桜内義雄、安倍晋太郎、倉成正、三塚博、中山太郎。内閣官房長官経験者として二階堂進。

 外交官の東郷文彦が「核密約」を構想したといわれる。〉

 外務大臣として説明を受けたことになっている。
 
 上記安倍発言は偽証なのか、偽証でないとしても、首相として説明を受けなかった理由は核持ち込みの密約の存在が既に既成事実化していたことと、2006年9月26日の第1次安倍内閣成立まで既成事実化から長い時間が経過していたために外務省から説明を受ける必要がなくなっていたことが理由として考えることができる

 米連邦議会合同原子力委員会軍事利用小委員会でラロック退役海軍少将が「核兵器を運搬する能力のあるあらゆる艦船は、核兵器を運搬している。それらの船が日本や他の外国の港に入るときに、核兵器を降ろすことはない」と証言したのは1974年9月10日。日本に報道されたのは、調べたところ、1974年10月。日付までは分からなかったが、10月の上旬といったところではないだろうか。

 ライシャワー元米大使が毎日新聞のインタビューで、「日本政府は、口頭でなされた合意事項のうちいくつか忘れてしまっていて、核兵器を積んだ船が日本の港に入港するようなことは全く問題がないという合意事項も忘れていたのだと思うのです。

 日本政府の人たちが『(核の持込みはないを)政府の見解として発言し、これは(核積載艦船の入港は)許されないのだ』と言うので、私は実際にこの問題に関して(大平)外相に『どうか、そういう答弁はしないでください』と申し入れました」と発言したのは1981年5月9日。

 特ダネとして報道したのは1981年5月18日。1981年は鈴木善幸内閣(1980年7月17日~1982年11月27日)である。

 ラロック証言の「核兵器を運搬する能力のあるあらゆる艦船は、核兵器を運搬している。それらの船が日本や他の外国の港に入るときに、核兵器を降ろすことはない」には説得力がある。

 日本に核を持ち込まないためには積載した核をハワイかグアム等で降ろさなければならない。日本の港で降ろして、降ろした状態で日本国内に持ち込んで保存し、核のない船だけを入港させるといった滑稽な処理は行わないはずだ。

 ハワイかグアム等で降ろした場合、核積載艦でありながら、核を積載しないまま太平洋をはるばる日本まで航行することになる。これも滑稽な事実となる。

 核持ち込みの密約の存在が既に既成事実化していたにも関わらず、それでも自民党内閣は核の持込みはない、核密約は存在しないを公式見解としてきた。要するに日本政府は核持ち込みに関与していないとゴマ化していたかった。

 当然、民主党政権が2010年3月に認めるまで自民党政権が核密約の存在を否定し続けていた以上、安倍晋三が「私も、あのいわゆる密約と言われた事柄について説明を受けなかった」とすることは意味もないことだし、大体が自民党の歴代内閣が受け継いできた組織的な隠蔽文化――国民に対する偽りの説明責任文化でありながら、個人の問題にすり替えて、私は関係しなかったとすることで自分だけを免罪する合理的判断能力は狡猾なだけで、如何ともし難い。

 安倍晋三な核密約に関わる自己免罪を果たした上で特定秘密保護法の正当化に直接的に言及する。、

 安倍晋三「今回は、今後、この法律ができたことによって、今後は変わります。総理大臣は今後、特定秘密について、情報保全諮問会議に毎年毎年、報告をしなければなりません。ですから、当然、項目に応じた特定秘密について説明を受けます。受けた説明をこの諮問会議に説明をします。そして、諮問会議はその意見を国会に報告をする。これが大きな違いです。

 ですから、今までのように総理大臣も知らないという秘密はあり得ない。そして、誰がその秘密を決めたかも明らかになります。そういう意味においては、まさにしっかりとルールができて、責任者も明確になるということは申し上げておきたいと思います」――

 「今までのように総理大臣も知らないという秘密はあり得ない」と言っているが、国民に知らせるわけにはいかない暗黙の了解を含めた取り決めの存在を知りながら、存在しないと自己都合のゴマ化しを働かせていたに過ぎない。

 日本だけではなく、諸外国に於いても国民世論に反する国内的取り決めや外国との取決めといった不都合な情報はいくらでも隠蔽する政治文化となっている。秘密指定しないまま秘密とすることも可能だし、秘密指定したとしても、秘密指定のまま最長秘密指定期間の60年どころか、武器や暗号など7項目は例外として60年を超えて隠蔽し続けることも可能なのである。

 この事実を無視して、国民に不都合な秘密はないかのように言う。ウソ・デタラメが多過ぎる。自らのそのウソ・デタラメに気づかないこと自体が、安倍晋三の合理的判断能力の程度の低さを物語っている。

 経済は良くなるかもしれない。だが、国家は中国への対抗を正当化の口実に軍事的に中国に似た危険な体質へと向かうことになる予感がする。

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