自民党幹事長石破茂が特定秘密保護法案反対のデモを「テロと変わらぬ」と批判したという。立派なことです。
《石破氏:「絶叫戦術テロと変わらぬ」デモ、ブログで批判》(毎日jp/2013年12月01日 01時05分)
11月29日付の自身のブログで、そう宣(のたまわ)っているそうだ。「テロと変わらぬ」と言葉の攻撃を受けた対象は国会周辺の市民デモ。
石破茂「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます。
今も議員会館の外では『特定機密保護法絶対阻止!』を叫ぶ大音量が鳴り響いている。どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはない。
主義主張を実現したければ、理解者を一人でも増やし支持の輪を広げるべきだ」――
記事解説。〈国会周辺では連日、市民団体が特定秘密保護法案に反対するデモを行っているが、これを「テロ行為」と同列視する内容で反発を招くのは必至だ。〉――
石破茂はテロを何と心得、何と解釈しているのだろうか。テロとは民主主義と法に則ることのない個人的・集団的な武器を使った暴力的殺人行為もしくは個人的・集団的な武器を使った暴力的破壊行為を言うはずだ。
石破茂はデモの絶叫戦術を民主主義と法に則ることのない個人的・集団的な武器を使った暴力的殺人行為もしくは個人的・集団的な武器を使った暴力的破壊行為と「その本質においてあまり変わらない」と言ったのである。
この主張に正当性を与えることができるだろうか。
絶叫は「国民の知る権利」がなし崩し的に奪われていく法の中身となっているのではないかと疑わせる切羽詰まった危機感の反映でもあるはずだ。
また、そのような法案が国会に於ける自民党の圧倒的多数の数の力によって可決・成立することが目に見えている以上、その数の力に対する対抗手段として、あるいは可決・成立間違いなしの危険な予定調和を是が非でも崩したい強い願望が必然化させている絶叫でもあるはずだ。
もし石破茂が「国民の知る権利」を保障する法案だと言うなら、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」とお門違いな批判で攻撃するのではなく、逆に時間を掛けた説明と説得によって「国民の知る権利」を保障する法案であることの納得を得ることが自身がなすべき先決課題であるはずだ。
だが、世論調査が示しているようにそういった努力をしないばかりか、法案の担当大臣は発言を訂正してばかりいて、法案の骨格が決まっていないことを露呈していながら、つまり辻褄合わせに終始している段階でありながら今国会での成立を急ぐばかりで、国民に対して「国民の知る権利」の確たる保障を与えることができないままの状況にある。
その分、成立した場合の特定秘密保護法に対する危機感は募ることになって、市民にとって最終手段がそれしかないデモに於けるより強力な訴えとして、益々絶叫へと反映されていく。
どこに不都合があるというのだろう。石破茂は国民の危機感に耳を澄まさなければならないはずだ。耳を澄ませば、自ずと説明責任を痛感することになるはずだが、耳を澄ますことはせず、「ただひたすら己の主張を」を押し通そうとしている。特定秘密保護法案が表している「主義主張を実現したければ、理解者を一人でも増やし支持の輪を広げるべきだ」が、そのようは努力は、既に触れたように世論調査に於ける特定秘密保護法案に関わる賛否がその程度を証明することになる。
共同通信社世論調査。
特定秘密保護法案が成立した場合の国民の「知る権利」の状況。
「守られると思う」26・3%
「守られると思わない」62・9%
特定秘密保護法案に対する賛否。
「賛成」45・9%
「反対」41・1%
特定秘密保護法の必要性は認めるが、「国民の知る権利」に関しては、その保障に強い疑いと懸念を抱いているということなのだろう。
11月9、10の両日実施の朝日新聞の世論調査。
特定秘密保護法案の賛否
「賛成」30%
「反対」42%
11月30日・12月1日両日実施の朝日新聞世論調査。
特定秘密保護法案の賛否
「賛成」25%
「反対」50%
朝日新聞の2回の世論調査では時間経過によって賛成が5ポイント減り、逆に反対が8ポイントも増えている。
このことは政府の国民に対する説明が逆に反対者を増やし、賛成者を減らしていることの証明となっていて、石破が言う「主義主張を実現したければ、理解者を一人でも増やし支持の輪を広げるべきだ」の方法論が特定秘密保護法案に関しては通用しているどころか、逆効果をなしていて、数の力のみに頼ったゴリ押しの法案成立を意味することになる。
政府が特定秘密保護法案が「国民の知る権利」の保障を侵害しないことの説明ができず、その疑いを否定できない以上、市民デモがテロどころか、特定秘密保護法案こそが「国民の知る権利」圧殺を通して在るべき自由な人間性を暴力的に破壊した場合、法律を武器としたテロ行為に擬(なぞら)えることができる。
一見、法に基づいたように見えていて、その法が「国民の知る権利」圧殺の疑いがあるテロだというのは危険極まりない逆説そのものである。
「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」などと市民デモを批判しているどころではない。「もし表現が足りなかったところがあればお詫びしなければならない」(NHK NEWS WEB)と撤回の考えを示したということだが、一旦口に出した言葉はそう考えていたからであり、言葉の撤回で考えまで撤回できないのだから、撤回では済まない見当違いな批判の不当性も然ることながら、自身がなすべきことを忘れているバカな男だ。