12月4日の参議院国家安全保障に関する特別委員会で井上哲共産党議員が特定秘密保護法案に絡めてかつての核密約について質問した。
1960年(昭和35年)日米安保条約改定時に米核搭載艦船の日本寄港・通過は事前協議の対象除外とするとする、広義の密約に当たる暗黙の合意(核密約調査の有識者委員会の調査結果)を形成し、外務省から歴代首相がその旨の引き継ぎを受けていながら、表向きは事前協議を生かしておいて、国民への説明としてきた。
いわば歴代内閣は国民に知られた場合は不都合となる事実・情報を秘密とし、民主党政権が密約存在有無の調査を命令し、その存在を認めた有識者委員会の報告が出る2010年3月まで国民から隠してきた。
このような事実と経緯は政府が国民に知られたら不都合となる事実・情報を自ら秘密とした場合の特定秘密保護法の特定秘密事項に指定しない危険性を教訓とすることになる。
当然、外務省等の行政機関にしても政府の秘密行為(特定秘密事項に指定しない秘密の処置)に倣って特定秘密事項に指定しない共同歩調を取らない保証はないことの教訓を付け加えることになる。
内閣自身が、あるいは行政機関と共犯関係を結んで外交上・政治上の秘密を秘密指定せずに自ら抱え込んだ場合、鬼に金棒となる。どのようなチェックも効かず、情報公開の年限にも引っかからず永遠に秘密とすることができる。
公開はジャーナリストやその他のスクープに頼まざるを得なくなるが、下手をすると、成立した場合の特定秘密法に引っかかって、罰せられることになりかねない。
井上哲議員の追及に対する右翼の軍国主義者安倍晋三の答弁を見てみる。
安倍晋三「(核密約は)それぞれ時代背景があるわけですが、当時、それを極秘とした判断に於いてはまさに日米同盟の重要性、日本の安全を冷戦状態の中で守る上に於いてそうした判断をしたわけですが、問題はずっと秘密とされ、ずっと続いてきたところに大きな問題があるわけです。
そして我々は今回つくった法律によって、そういうことはなくなるわけでありまして、まさに限定列挙したものに秘密は限られるわけでして、当然、先程申し上げましたように情報諮問会議ができるわけであって、そこで指定・解除等々について総理大臣から報告を受けるわけで、総理大臣は毎年毎年、課題意識を持って各省庁からちゃんと聴取を受けて、そしてそれをしっかりと応えていくわけでございます。
そして繰返しになりますが、9割はですね、9割は衛星写真であります。そしてその後、さらに、さらに、そのあと、オー、暗号等があるわけでございますし、武器等の秘密が細かくされているわけであります。
それ以外については、総理大臣は毎年毎年報告を受けて、そしてそれを、しっかりと国会に報告をする。今までになかった仕組みです。今までだったら、同じ問題が起こるのができなくなるというのがはっきりと申し上げておきたいと思います」――
席に戻る時、下向きにした顔にしてやったりの薄っすらとした笑みをほんの一瞬浮かべた。
井上哲議員はこの安倍の答弁に対する追及として、「外務省が政治家に報告する内容を選別していた」として、行政機関自体が自ら秘密を拵えて、その秘密を自分たちの所有物として内閣に上げない、当然、特定秘密保護法の特定秘密指定の対象外としてしまうことになる想定される危険性を主張していた。
安倍晋三の答弁が井上哲議員の主張に添う内容ではないことは明らかである。何の保証があるわけではないのに新しい法律は核密約みたいな政府自身や行政機関自身が抱え込む秘密は存在しなくなると安っぽく請け合っている。
政府や行政機関が秘密を拵えてそれを抱え込んだ場合、どのようなチェック機関もチェック不可能となるにも関わらず、「まさに限定列挙したものに秘密は限られるわけでして、当然、先程申し上げましたように情報諮問会議ができるわけであって、そこで指定・解除等々について総理大臣から報告を受けるわけで、総理大臣は毎年毎年、課題意識を持って各省庁からちゃんと聴取を受けて、そしてそれをしっかりと応えていくわけでございます」と、指定した秘密に関しては可能となる(あくまでも可能性であって、絶対的実現の保証ではない)ケースを主張しているに過ぎない合理的判断能力を示している。
問題点は政治の不都合を国民の目から隠す目的の政府及び行政機関独占の秘密の可能性にあるとしているにも関わらず、安倍晋三は秘密指定の9割は衛星写真と暗号、武器の情報だと答弁している。
ここにマヤカシが存在する。
衛星写真と暗号、武器の情報はそれが正直な情報として扱われているなら、情報自体の正当性に政治の不都合は生じない情報であって、生じない以上、特定秘密保護法の秘密指定に持って行くことに憚る理由は何らない。
特定秘密保護法の秘密指定にまで持っていかない秘密は国民に対する情報自体の正当性を持たないことになって、正直な情報として扱うことが政治の不都合を生じる情報であることは言を俟たず、当然、国民に対して正当性ある情報か、正当性のない情報かが問題となる。
だが、安倍晋三は国民に対する情報自体の正当性を持つことが可能な衛星写真と暗号、武器の情報が9割方(がた)だとすることによって、すべての情報が正当性を持ち得る情報であるかのように装うと同時にすべての情報を特定秘密保護法の秘密指定に持っていくかのように装った。
いわば何の保証もないままに、あるいは安倍晋三の言葉だけの保証で以って内閣や行政機関が特定秘密保護法の秘密指定に持っていかずに秘密情報を抱えることがないとした。
特定秘密保護法の秘密指定にしても恣意性の疑惑を払拭できないというのに危険極まりない如何わしいばかりのマヤカシではないか。