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安倍晋三は各国首脳によって人権意識を試す踏み絵と化したソチ五輪開会式にどう身を処すのか

2013-12-21 06:00:36 | Weblog
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 プーチン・ロシアの人権弾圧には目に余るものがある。自らの統制下に置いた最高検察庁を使って政敵を逮捕・投獄して自らの政治的地位を安泰とする強権手法は今更言うまでもなく、政権に批判的な報道や一般市民のデモ等の活動に対する規制・罰則等々の人権抑圧は珍しくない光景となっている。

 一般市民のプーチン政権批判に関しては、教会でプーチン批判の歌を歌った女性バンド「プッシー・ライオット(子猫の暴動)」の3人が2012年2月に逮捕され、2012年8月に懲役2年の実刑判決を受けて国際的な批判を浴びた例を挙げることができる。

 この判決に対するアシュトンEU=ヨーロッパ連合上級代表の2012年8月17日の声明。

 アシュトンEU=ヨーロッパ連合上級代表「判決はバランスを欠くもので、ロシアの司法手続きに深刻な疑問符をつけざるをえない。

 今回のケースはロシア国内で野党勢力に対する政治的な脅迫や迫害が増えている最近の傾向を示すものだ」(NHK NEWS WEB)――

 かくかような人権状況にあると懸念と憂慮を示している。

 そして2012年3月、ロシア全土及びメディアにおいて同性愛関係の宣伝行為を禁じる連邦法案の下院提出、2013 年6月の下院と上院通過、プーチン大統領署名を経て2013年6月29日、「同性愛宣伝禁止法」を成立させている。

 「同性愛宣伝禁止法」は同性愛行為そのものを禁止するのではなく、同性愛関係が未成年者の発達に及ぼす悪影響を防ぐことを公式の目的としているということだが、その目的は同性愛者を社会に悪影響を与える存在と規定する方向に向かい、当然の結果として同性愛行為を悪とし、同性愛者を排除すべき社会の異分子と扱うことになって、同性愛と同性愛者に対する差別を必然化する。

 差別は人権抑圧そのものを意味する。

 プーチンの法律制定の真の目的は未成年者を守るという正当性を楯に同性愛者を社会の異分子として排除することにあったのだろう。

 プーチンのこれまでの人権抑圧に対して懸念と憂慮を抱いていたところへ持ってきて、同性愛の宣伝禁止を名目とした露骨な人間差別・人権抑圧に許容範囲を超えるものを感じたのだろう、ガウク独大統領が2014年2月7日開幕のソチオリンピック開幕式等を欠席する方針を決め、ロシア政府に伝えたと12月8日の週刊誌シュピーゲルが報じ、それを共同通信が配信した。

 理由は、〈同性愛宣伝禁止法をはじめとするロシアの人権政策に抗議するためという。〉・・・・

 〈ドイツでは大統領が国家元首。ガウク氏は旧東ドイツ出身で人権派の牧師として活動し、2012年3月に大統領に就任した。同年の夏季五輪ではロンドンを訪れたが、大統領就任以来、ロシアは公式訪問していない。
 シュピーゲルによると、ソチを訪れない代わりに、五輪終了後にドイツ選手団を帰途のミュンヘンで出迎える予定。メルケル首相の対応は決まっていない。(共同)〉(MSN産経)――

 2日後の12月8日になって、欧州連合(EU)で人権問題を統括するレディング欧州委員会副委員長が短文投稿サイト「ツイッター」で欠席を表明した。

 レディング欧州委員会副委員長「マイノリティー(少数派)がロシアで現在のような扱いを受けている限り、ソチには行かない」(MSN産経)――
 
 記事解説。〈レディング氏は「マイノリティー」の内容を明示しなかったが、ロシアで今年成立した同性愛宣伝禁止法など人権政策への抗議を示した事実上のボイコットとみられる。〉――

 レディング氏が人権問題を統括している以上、「マイノリティー」の中に同性愛者を入れているはずだ。

 政治的首脳ではないが女子テニスの往年のスター、マルチナ・ナブラチロワさん(米国)ら同性愛者であることを公表しているスポーツ界の2人が12月10日、国連本部で記者会見し、くロシアの同性愛宣伝禁止法について、国際オリンピック委員会(IOC)は人権抑圧を見て見ぬふりしていると批判したと共同通信の配信記事を「MSN産経」が12月11日に伝えている。

 ロシア政府は同性愛宣伝禁止法は「五輪は適用外」としているが、外国の同性愛者がソチ五輪に出かけて自分たちが安全であればいいとしているわけではない。ロシア政府の同性愛者やその他に対する人権抑圧そのものを問題としているのであり、ロシア国民が抑圧を受けることの不条理そのものを問題としているのであって、「適用外」で片付けることができるとしているプーチンの考えは人権抑圧者だけあって狭い。

 さらに12月15日にファビウス仏外相が同国テレビ番組でソチ冬季五輪の開幕式にオランド大統領を含む政府高官の参加は予定していないと発言。

 〈外相は不参加の理由は明言しなかったが、ロシアで今年成立した同性愛宣伝禁止法など同国の人権政策への抗議が込められている可能性がある。

 オランド大統領は昨年の大統領選で同性婚解禁を公約に掲げるなど同性愛者の権利擁護に理解ある立場で知られる。フランスでは今年5月に同性婚解禁法が公布された。〉(時事ドットコム)――

 不参加の理由を明言していないとしているが、同性愛宣伝禁止法が主たるキッカケとなっていることは十分に推測可能とすることができる。

 トドメは12月17日のホワイトハウス声明による大統領とミシェル夫人、バイデン副大統領の欠席公表であろう。

 その声明でソチオリンピックの開会式や閉会式に派遣する代表団のメンバーを発表、団長は開会式ではナポリターノ前国土安全保障長官、閉会式はバーンズ国務副長官、さらに同性愛者でテニス界の女王と呼ばれたビリー・ジーン・キングさんらを開会式に派遣するとしている。

 〈これまでオリンピックの開会式などで大統領や副大統領らが代表団を率いることが多かったアメリカがオバマ大統領らの出席を見送った背景には、同性愛者に差別的だと批判が上がっているロシアの人権問題に対して抗議の意思を示すねらいがあるものとみられています。

 ソチオリンピックの開会式や閉会式を欠席する動きは、ヨーロッパの首脳などの間でも広がりつつあります。〉(NHK NEWS WEB)――

 同性愛者の開会式派遣はオバマ大統領やミシェル夫人欠席の交換と見ることができ、明らかに同性愛宣伝禁止法に対する抗議の意思表であるはずだ。

 更に引き続いて、12月19日、ロシアが隣国に位置していながら、グリバウスカイテ・リトアニア大統領が開会式出席を明らかにした。

 〈大統領は「過去数カ月にわたるロシアのウクライナ、グルジアなどへの経済、政治的圧力やリトアニアへの経済的圧力」を指摘。出席する政治的意味が見いだせないと表明。「ロシアの人権状況」も欠席の理由に挙げた。

 ロシアは10月から食品の安全基準などを理由にリトアニアからの乳製品の輸入を停止した。〉(MSN産経)――

 今やソチオリンピック開会式は各国首脳の人権意識を試す踏み絵と化した。人権は二の次の国家主義者、日本の安倍晋三はどう対処するのだろうか。

 2013年10月7日、安倍晋三はAPEC首脳会議出席のため訪問中のインドネシア・バリでプーチンと首脳会談を開催している。その会談で、〈プーチン大統領がソチオリンピックに招待する考えを伝えたのに対し、安倍総理大臣は「しっかりと検討したい」と述べました〉と、「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 この会談から21日後の10月28日、安倍晋三が来年2月のロシア・ソチ冬季五輪大会に合わせて訪露し、プーチン大統領と首脳会談を行う方向で最終調整に入ったと10月29日付の「MSN産経」記事が伝えている。

 〈五輪に合わせた訪露は大統領が求めていたもので、良好な日露関係を背景に平和条約締結に向けた北方領土問題などを意見交換する考えだ。

 ソチ五輪は来年2月7日(現地時間)に開幕し、17日間開かれる。首相は7日の開会式に出席する方向。ただ、来年1月召集の通常国会の日程次第では大会期間中にソチを訪れ、競技を視察することも検討している。〉 ――

 国家主義の立場上、国家を優先させ、人権意識を試す踏み絵を踏む覚悟で五輪開会式に出席するのか、あるいは自らの権意識を隠して欧米各国首脳に倣って欠席して、人権意識を共有するのか。

 但し後者であっても、プーチン・ロシアとの友好関係を気遣って、多忙を理由に代理を出席させることで、ロシアの人権抑圧を理由としない出席回避を可能とすることはできる。

 だが、試されているのは踏む絵を踏むか踏まないか、人権意識の程度である、例え欠席することがあっても、理由は述べないまでも、自らはソチオリンピック開会式には出席しないと声明を発するなり、談話を発表するなりすべきだろう。

 例え内心の人権意識に反したとしてもである。少なくとも「自由、民主主義、基本的人権、法の支配」といった価値観外交を掲げている以上、例え形式であっても、踏み絵を踏まない儀式程度の人権意識は示すべきである。

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