海自1等海士イジメ自殺アンケート隠蔽は国の特定秘密保護法秘密指定無視の情報隠蔽可能性を教えている

2013-12-12 09:58:27 | 政治


 
 国家機関に所属する、事件や不祥事を起こした組織を守らなければ国家安全保障上問題が生じるから等々の口実で不都合な情報、あるいは不都合な情報の存在自体を特定秘密保護法に従った秘密指定を経ないまま隠蔽する可能性は、核密約やエイズの情報隠蔽ばかりか、海自による一等海士イジメ自殺アンケート隠蔽からも学習することができる。

 2004年10月27日、日本国海上自衛隊横須賀基地所属、ミサイル搭載護衛艦「たちかぜ」1等海士(当時21歳)の京浜急行立会川駅飛び込み自殺を巡って内閣府「情報公開・個人情報保護審査会」が組織全体の隠蔽傾向を厳しく指摘する答申書を纏め、12月12日に公表したという。

 情報公開・個人情報保護審査会が調査対象としたのは、1等海士の自殺後海自が行った他の乗組員対象の「艦内生活実態アンケート」を実際は存在していたにも関わらず廃棄したと公表、アンケートのフォーマット(質問内容)のみを開示した行為に関わる情報隠蔽と情報操作の有無の検証である。

 1等海士自殺から杉本正彦海上幕僚長が2012年6月21日に記者会見でアンケート結果の存在を明らかにするまでの経緯を「Wikipedia」や他のマスコミ記事を頼りに2012年6月23日当ブログ記事――《森本防衛相の海自護衛艦「たちかぜ」イジメ自殺事件情報隠蔽に関わる国民視点を欠いた発言 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。ご参照あれ。
  
 情報公開・個人情報保護審査会の調査は、《海自いじめ自殺:内部告発の3佐、処分検討》毎日jp/2013年12月12日 00時28分)によると、2006年4月から2007年1月まで国の利害に関係のある訴訟で法相が行政職員から指定し、国側の立場で訴訟を担当する指定代理人を務めていた現職自衛官の3等海佐がアンケートの存在を知り、このことは上記ブログでも触れているが、2008年に防衛省の公益通報窓口に内部告発、だが、海自が存在を否定。このため3等海佐は2012年4月、東京高裁にアンケートの存在を明らかにする陳述書を原告側を通じ提出し、海自は再調査の結果、アンケートが存在することを公表、その公表を受けたことをキッカケとしている。

 情報公開・個人情報保護審査会が纏めた答申書をマスコミは「組織全体として不都合な事実を隠蔽しようとする傾向があった」と異例の指摘だと取り上げているが、海自はアンケートの存在を何度も否定しているのである。「傾向」ではなく、「組織全体として不都合な事実を隠蔽する体質があった」と、「体質」とすべきで、審査会のメンバーは主に元裁判官や弁護士、それに大学院の教授等だそうだが、国に対する姿勢が腰の引けた甘い評価となっている。

 もし3等海佐がアンケートの存在を知り得なかったなら、国家組織は組織に不都合な情報を如何ようにも隠蔽できることを教えている。あるいは特定秘密保護法に基づいた秘密指定を行わずとも、情報隠蔽を可能とすることを否応もなしに学ばさせる。

 問題は「毎日jp」の題名が示しているように海自が内部告発の3等海佐の懲戒処分を検討しているということである。

 〈海自側は、3佐が告発のため文書のコピーを持ち出して自宅に保管していたことなどを問題視。〉、6月、海自は〈「行政文書管理が不適切だった」として規律違反の疑いで審理することを3佐に通知した。〉

 3等海佐「公益通報(内部告発)のための証拠を集めたことを理由とする処分を受け入れたら、怖くて誰も公益通報できなくなる」

 海上幕僚監部広報室「懲戒処分するかどうかの調査開始を通知しただけで、懲戒処分をすると決めたわけではない」――

 3等海佐が告発した理由を「YOMIURI ONLINE」は「自衛隊は国民にウソをついてはいけないとの信念からだった」と伝えている。

 要するに公益通報者の身分の保護を謳っている公益通報者保護法に則った「公益通報」(=内部告発)に当たるかかどうか調査するということなのだろうが、当初アンケートを廃棄したとしていたことは、既に触れたように特定秘密保護法に基づいた秘密指定を経ない情報の隠蔽が可能なことを学習することができるし、もしこの手のアンケートを施行後の特定秘密保護法に基づいて秘密指定していたと仮定したなら、内部告発は簡単に情報漏洩の冤罪へと早変わりさせることができる。

 組織ぐるみの隠蔽体質にある以上、秘密指定していなくても、日時を偽って遡った日時で後付けの形で秘密指定をして、他の秘密指定した膨大な情報の中に紛れ込ませることも可能なはずで、右翼の軍国主義者安倍晋三は特定秘密保護法で「一般の方が巻き込まれることも決してありません」と言っているとしても、一般公務員は何が秘密指定されているのか皆目見当がつかず、情報漏洩に引っかかるのを恐れて、公益となると考えた内部告発に萎縮することにもなるはずだ。

 特定秘密保護法は国家安全保障上必要とする秘密情報だけではなく、行政機関や政府の不都合な情報まで秘密の形にして隠すことができるということである。

 後者は「国民の知る権利」の侵害を背中合わせとすることは断るまでもない。

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