以下はあくまでも刑事が犯罪の事実を立証するのと同じ事実の立証ではなく、刑事が推理を経て犯罪の容疑をかけるのと同じく、推理を用いた事実の容疑に過ぎない。
勿論、マスコミ記事を総合しての推理上の容疑であって、間接的なアプローチの感は免れることができないが、答はどうしてもその方向に導かれていく。
但し私自身の頭の問題は常に付き纏うことになる。解釈能力の程度の問題である。
二つの新事実の一つはこれまで猪瀬都知事が5000万円返済後の借用書について9月26日(後に9月25日に訂正)鈴木特別秘書が都内のホテルで徳田毅氏代理人である母親の徳田秀子氏に面会、借入金を全額返済し、後日、借用証は徳田毅氏事務所から都知事の事務所に郵送されてきたとしていた証言に対する12月17日の東京都議会総務委員会閉会中審査で訂正した新たな証言である。
猪瀬都知事「借用書は徳田議員の事務所から政治団体(一水会)の代表の木村三浩氏が受け取り、木村氏からこちらに送られてきた。借用書が戻ってきた正確な日付は確認していないが、鈴木特別秘書から『借用書は戻ってきているので安心してほしい』と言われた」(NHK NEWS WEB)
「時事ドットコム」記事では木村三浩一水会代表自身が借用書を取りに行ったことになっている。
猪瀬都知事「(木村氏が9月25日の返済の場に立ち会い)その場で(鈴木氏に借用証を)渡すはずだった。徳田氏の関係者のところに借用証があるから、木村氏が(事前に)取りに行った」――
木村氏は猪瀬都知事か特別秘書の鈴木氏かに頼まれもせずに自分の判断で借用書を徳田事務所に受け取りに言ったとは考えにくい。自分の判断で受け取りにいったとしたら、僭越行為となる。
頼まれたとすると、鈴木特別秘書が自分の発案で木村氏に直接頼む関係にないから、猪瀬都知事が直接頼んだか、鈴木特別秘書を介して頼んだのか、いずれかということになる。
だとしても、なぜ木村氏に頼んで受け取りに行って貰ったのだろう。しかも受け取った木村氏は直接猪瀬事務所に届けたのではなく、徳田事務所に郵送か宅配便で送ってきた。二度手間そのもので、これまで説明してきたように徳田事務所から直接郵送されてきたとする方がごくごく自然である。
11月22日午後の猪瀬都知事の定例会見では借用書について次のように発言している。
記者「借用書は公開できるのか」
猪瀬都知事「それは確かめてからにします。僕は今、直接持っていないので」
記者「あるかないかを確認してから、公開するか決めるということか」
猪瀬都知事「まあそういうことになりますが、もしかしてそれは終わったら借金を借り入れしたわけですから、いらなくなったらいらないということで破棄してしまうということもありますので、あるかどうか分かりません。あくまでも貸した側が借用証を持っているわけですから、返したら借用証がいらなくなるわけですよね。ですから借用証を僕は持っている必要がないので、それはどうなったかは分かりません」(MSN産経)――
「あくまでも貸した側が借用証を持っているわけですから、返したら借用証がいらなくなるわけですよね。ですから借用証を僕は持っている必要がないので、それはどうなったかは分かりません」の発言は処分して、最早存在しないといったニュアンスとなっている。少なくとも最早存在しないとしたい欲求を窺うことができる。
破棄・処分は証拠隠滅か、元々存在しない物を存在していたかに見せかけるときの奥の手である。最初からホンモノの借用書として存在していたなら、返済の証拠として手許に保存しておかなければならない必要上、破棄・処分といった手間を踏むことはない。
いわば破棄・処分で着地点を見い出したい意識が言わせた発言と疑うことができる。だが、実際にそうした場合の疑惑を却って招く危険性は予想できただろうから、破棄・処分で着地点を見い出したい意識を抑えざるを得なかった。
また、破棄・処分の奥の手を使う必要性は借用書が元々存在しないか、存在したとしてもホンモノではない場合に生じる。
11月22日午後の定例会見では破棄・処分で着地点を見い出したい欲求の発言をしていながら、4日後の11月26日公開記者会見で借用書を公開した。11月25日朝、借用書が猪瀬氏の貸し金庫にあることを確認したという。
ではなぜ一度であっても、破棄・処分で着地点を見い出したいニュアンスの発言をしたのだろうか。
答は元々存在しない借用書を存在するとしたニセモノで借用書問題解決の着地点とすることに変更したからだろう。
2013年11月27日の当ブログ記事――《ウソつき猪瀬都知事のウソと矛盾満載の11月26日(2013年)借用書存在証明記者会見 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。
〈借用書を、この通り存在すると見せたが、ニセモノの借用書だから、答える内容を変えなければならなかった。もし、この借用書に徳田氏側から異議申立てがなかったとしたら、前以て話をつけておいたからなのは断言できる〉――
では、ニセモノの領収書の出所はどこなのだろうか。猪瀬都知事が秘書とかに命じて作らせたのだろうか。だが、秘書とかではその口に完璧な戸を立てることを望むのは難しい。
それに元々存在しない借用書をつくるのだから、徳田毅議員の了解も取らなければならない。
そこで徳田毅議員と猪瀬都知事の両者の間を取り持った木村一水会代表が徳田事務所に出向いて借用書を受け取り、それを木村氏が猪瀬事務所に郵送したというストーリーで、徳田事務所を出所とした。
だが、徳田毅議員は公職選挙法違反で取り調べを受けている。これ以上自分を悪者にすることはできないはずだ。出所を徳田事務所とする猪瀬川のフィクションの作成はあくまでも猪瀬側の問題であって結構だが、ニセモノの借用書の発行元そのものにになるわけにはいかないと断ったとしたら。
残る方法はストーリだけはそのままにして、徳田毅議員の黙認の下、いわば徳田毅議員に話をつけて木村氏が発行元となって借用書を作成、猪瀬事務所に郵送、郵送された領収書に猪瀬都知事がサインして、ホンモノへと仕上げ、公開した。
この事実の容疑はもう一つの新事実が補強する。
猪瀬都知事が都知事選立候補前の2012年11月6日に神奈川県鎌倉市の病院に入院中の医療法人徳洲会グループ徳田虎雄前理事長に挨拶に行ったとき、徳田虎雄氏側から売却が決まっていた東京電力病院取得の意向を伝えられていたことが12月18日、関係者の話から判明したと各マスコミが伝えている新事実に対して猪瀬都知事のこれまでの説明が「面会の場では東京電力の病院の話題は出ていない」、あるいは「徳洲会が病院の取得を目指していたことは知らなかった」(NHK NEWS WEB)などと説明していた事実との食い違いである。
5000万円に関わる説明の二転三転はここから発していると見なければならない。猪瀬都知事の個人的借用だとする説明が事実とすると、借用に関わる経緯に対する説明が二転三転するわけはない。徳田虎雄氏は病院許可の権限を持つ猪瀬都知事の便宜を期待する意思の下、5000万円を供与した。供与である以上、借用書は取らない。
猪瀬都知事は暗黙の了解の下、借用書は書かずに5000万円を受け取った。
だが、今年の9月17日になってで東京地検特捜部が昨年12月衆院選での運動員買収の公職選挙法違反容疑で徳洲会グループへの強制捜査に乗り出すや、9月26日に慌てて返済し、個人的借用とするために今度は借用書が必要になった。
だが、借用書は元々存在しなかったから、新たに作る必要に駆られたが、自身が作った場合、追及されたとき口を滑らさないとも限らない。そこで木村一水会代表が徳田事務所に借用書を受け取りに行き、それを猪瀬事務所に郵送したというストーリーを作って、木村代表を借用書の発行元とした。
5000万円の実際の返済については強制捜査の9月17日に近過ぎず、かと言って離れてからでは、昨年11月20日に5000万円受け取った日から離れ過ぎることになる上に、早く返して何事もないこととしたい焦る気持が19日後の9月26日になったといったところではないだろうか。
以上が各マスコミ記事から、推理を用いた事実の容疑に対する結論である。
12月18日深夜発信のマスコミ記事が、猪瀬都知事が12月19日緊急記者会見を開催、知事を辞職する考えを表明すると伝えている。都議会が関係者の出頭拒否や偽証に対する罰則が法律に規定されていて、法律に基づく調査権を持つ「百条委員会」設置の方向に動き、そこでの改めての追及を考えると、最早耐えられなくなったに違いない。
例え辞任しても、ウソや言い替えで説明を二転三転させた醜態は記憶されるだろうし、その人格に対する疑いは決定的なものとして残ることになるに違いない。