安倍晋三提唱の「積極的平和主義」だけではやっていけないアフリカ各国首脳の支持・歓迎の正体

2014-01-21 09:14:32 | Weblog


 

 国家主義者・軍国主義者安倍晋三が1月9日から15日までの7日間も欲張った日程で中東のオマーンとコートジボワール、モザンビーク、エチオピアのアフリカ3か国を訪問した。

 1月14日、その外交成果を誇る内外記者会見がエチオピア・アディスアベバで開かれた。

 桑原産経新聞記者「中国が海洋進出を強めていることも念頭に、積極的平和主義の考え方を説明されたと思うが、日本の立場に理解が得られたと思うか」

 安倍晋三「各首脳との会談では、私から、日本は国際協調主義に基づく積極的平和主義』の立場から、地域及び世界の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していく考えであることを説明しました。これに対して各首脳からは、支持や歓迎の意が示されました」――

 安倍晋三の「積極的平和主義」が訪問4カ国から支持・歓迎を受けた。さすが国家主義・軍国主義だけではなく、外交の安倍晋三である。

 オマーンについて、HP《オマーン・現在の政治体制・政治制度 イスラーム地域研究「中東・イスラーム諸国の民主化」》(大川真由子/2012/08/06)に次のように紹介している。

 〈実際の政体はスルターンを頂点とする専制君主制で、カーブースが首相、外相、財務相、国防相のほか、国軍最高司令官、中央銀行総裁を兼任している。その下に副首相および省庁大臣が置かれ、閣僚が「閣僚評議会」を構成し、さらにその下に関係省庁で構成される「各種評議会」が置かれている(閣僚メンバーリスト:英語訳、日本語訳)。

 現在の政治体制は、1996年に制定された国家基本法(憲法に相当。アラビア語全文、英語訳全文:ただし非公式訳)に規定されている。第11条では、「スルターンは国家元首および国軍最高司令官である。彼の人格は不可侵かつ尊敬されるべきであり、彼の命令には絶対服従である。スルターンは国家統一ならびにその守護者、擁護者の象徴である」と明記されている。〉――

 当然、何かのキッカケで国民が民主主義と個人の権利に目覚めない保証はない。日本の場合で言うと、敗戦と連合軍による占領によって日国民は民主主義と個人の権利に目覚めた。

 日本の場合のこの事実は国家主義者・軍国主義者安倍晋三にとっては唾棄すべき事実であろうが。

 アラブの春が一つのキッカケとなって、それに触発されて2011年1月首都マスカトで若者を主体とした政治・経済改革を求めるデモが発生、地方にも波及して各地で治安部隊とデモ隊が対峙したものの、政府が政治改革案を提示、民衆の懐柔に成功して、抗議活動は雲散霧消してしまったという。

 だが、民主主義と個人の権利を認めない絶対君主制であることに変わりはない。民主主義と個人の権利阻害の元凶を絶対君主制と見做して、打倒の標的とする可能性は否定できない。

 いわば国王側にとって内政に於いて、「積極的平和主義」とは言っていられない事情を内なる衝動として抱えているはずだ。国王打倒の反体制運動が発生した場合に備えて、軍事的にそれ相応の危機管理を行っているはずだ。

 《外務省・海外安全ホームページ: テロ・誘拐情勢》には「2012年12月末現在」の情報として次の記述がなされている。   

〈【テロ・誘拐情勢】

1.概況

 これまでのところ,オマーン国内に拠点を置く国際的なテロ組織及び反政府組織の活動は確認されていません。しかし,必ずしも国境 管理は磐石とは言えず,周辺諸国からオマーンに不法入国する外国人が多数いることから,国外のテロ組織がオマーン内に所在する欧米諸国の権益等に対しテロ 攻撃を行う可能性は排除できません。〉――

 要するにオマーンは内政に関してだけではなく、外交に於いても、「積極的平和主義」とだけ言ってはいられない事情にある。

 だとすると、安倍晋三が「積極的平和主義」が訪問4カ国から支持・歓迎を受けたといっていることは合理的な判断能力に基づいた正直な自己評価ではなく、単なる誇大宣伝となる。

 大体が安倍晋三は「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値観」を後生大事な呪文のように唱えている。オマーンに対して「積極的平和主義」を言う前に、「自由、民主主義、基本的人権、法の支配」のススメを行ったのだろうか。

 ススメを行い、実践させることによって、想定可能は否定できない将来的な政権打倒の武器を用いた反政府活動、それに対する政府側の徹底的な軍事的反撃と、それが一進一退した場合の内戦発展への危険性を前以て阻止できる。

 もし「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値観」を説かずに「積極的平和主義」を唱えながら資源外交を進めたとしたなら、中国の相手国の人権状況を無視した資源外交と肩を並べることになる。

 「積極的平和主義」も、マヤカシと化す。

 2番目の訪問国コートジボワールを見てみる。コートジボワールは1990年代の政治不安の後、2002年には第1次コートジボワール内戦が勃発したあと、2010年の大統領選挙の結果をめぐって第2次コートジボワール内戦が4カ月間続いている。

 《外務省 海外安全ホームページ 安全の手引き 在コートジボワール日本国大使館》には次の記述がある。  

 〈コートジボワールは、2011年3月から4月にかけて、死者3,000名を数える内戦を経験しました。現在、その内戦中に氾濫した武器を使用しての強盗事件が多発しており、多くの外国人も被害にあっています。

 警察を始めとするこの国の治安機関は、日本のそれとは事情が大きく異なります。この国では、「自らの安全は自ら確保する」ということを心掛けてください。

    ・・・・・・・

  〈(5)テロ・誘拐対策(一般論)

 現在、コートジボワールでは外国人を対象にした誘拐事件の報道には接していませんが、近隣国では外国人を対象にしたテロ・誘拐事件が発生し ています。特にマリ国境付近では、テロ・誘拐に対する注意が必要です。個人的理由がなくても、「日本企業の従業員だから」、「日本人だから」 という理由だけで狙われます。〉――

 要するにコートジボワールは国内の武器を用いた強盗事件に対する治安対策だけではなく、近隣諸国のテロの国内化に備えて武器使用による治安対策を取り組んでいるはずで、テロが民間企業を標的として完結するならまだしも、政府自体を標的とした場合の危機管理――武器には武器の体制も当然必要で、「積極的平和主義」が現段階では役に立たいないことを百も承知しているはずだ。 

 だが、安倍晋三は「積極的平和主義」が支持・歓迎を受けたと言っている。反対する訳にはいかない支持・歓迎だとしたら、単なる外交辞令上の支持・歓迎となる。

 モザンビークを見てみる。1964年から続いたモザンビーク独立戦争は1975年に終結、独立を達成。独立後も1977年から1992年までモザンビーク内戦が続いている。

 内戦終結後、治安が完全に回復したわけではなく、2013年11月にポルトガル人女性が3人の武装集団に誘拐される事件を始め、身代金目的の誘拐事件が多発しているという。それに加えて、10月、ソファラ州サントゥンジラにある国防軍施設が野党のモザンビーク民族抵抗運動(レナモ党)の武装集団の襲撃を受け、一時占拠される事件が起きている。

 その他にもテロ活動を行っているという。

 要するに日本とまるきり治安状況が異なる。モザンビーク民族抵抗運動(レナモ党)が国外のテロ集団と手を結ばない保証はない。既に武器等の支援を受けているかもしれない。当面は「積極的平和主義」をクスリにするよりも、「目には目を」を唯一有効なクスリにしなければならないはずだ。「積極的平和主義?どこの国の話だ」とばかりに。
 
 最後の訪問国エチオピア。2012年1月にエリトリアとの国境に近い観光地で外国人観光客が襲撃され殺害及び誘拐される事件がおきている。

 そして《外務省海外安全ホームページ》(2013年11月06日)  

 〈エチオピア:テロの脅威に関する注意喚起

1 11月5日(現地時間)、エチオピアの治安当局は、アディスアベバ市内及びエチオピア国内において、ソマリアのイスラム過激派「アル・シャバーブ(AS)」等がテロ攻撃を画策しているとの機密情報を入手した旨発表し、不自然な行動を取る外国人を見つけた場合は、最寄りの警察署や治安関係者へ報告するよう一般市民に対し広く情報提供を求めました。

2 東アフリカ地域で は、9月21日、ケニアの首都ナイロビのショッピング・モールを武装勢力が襲撃し、外国人を含む67人が死亡、175人以上が負傷しました。本件に関し、ASが声明を発表して犯行を認め、その後も複数回にわたってケニア軍がソマリアから撤退しなければ同様のテロを起こすと警告を発しており、エチオピアを含めたソマリア派兵国及びケニア周辺国でASによるテロの脅威が高まっています。〉――

 ソマリアのイスラム過激派「アル・シャバーブ(AS)」等がソマリア派兵の報復としてエチオピアへの攻撃を警告した。

 エチオピアは報復攻撃が実際に発生した場合、「積極的平和主義」で応えるのだろうか。ライフルや機関銃を放ってくる相手に向かって、「まあ、まあ、皆さん話し合いましょう」と両手で宥めるのだろうか。.

 要するに安倍4カ国訪問は4カ国の資源と日本の援助とのバーター外交に過ぎなかった。援助を申し出る先進国が言うことに関しては発展途上国は発展途上国の身として、ハイ、ハイと支持・歓迎するのは外交儀礼上、あるいはリップサービスとして当然である。

 「積極的平和主義」の正体は安倍外交を華やかに彩って大成功に見せ、世論を獲得する言葉の装置でしかなく、その実質は刺身のツマ程度の効能しかなかったといったところであるはずだ。

 安倍晋三のハッタリに騙されてはいけない。

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