猪瀬直樹が医療法人徳洲会グループからの5000万円借用(本人がそう言っている)の騒動を受けて昨2013年12月19日、辞職を表明、2013年12月24日都議会正式同意で都知事の職を棒に振った(5000万円には棒に振らなければならない程の理由があったからだろう)あとの次の都知事選の候補が自民党も民主党もなかなか決まらなかった。
自民党の場合、都民に対する世論調査では前参議院議員・元厚労相の舛添要一が一番人気だったそうだが、自民党を除名処分していた関係から支援に二の足を踏んでいたことが候補がなかなか決まらなかった理由らしい。
舛添要一の自民党除名の経緯は2010年8月総選挙で自民党大敗・民主党政権交代でガタガタとなっていた自民党から離党者が相次ぎ、そんな状況下、自民党総裁になりたくで自民党離党をちらつかせたり、党外人材と接触等の活動を色々と画策していたものの反党活動の批判を受け、無派閥で派閥の壁と頭数の無力から見通しを得ることができなかったのだろう、2010年4月22日に自民党に離党届提出、改革クラブ入党。対して自民党は4月27日、除名処分の仕返で報いた。後に新党改革を立ち上げて、代表に就いている。
4月22日離党の翌日の4月23日の夕方、フジテレビの「スーパーニュース」に出演して、次のように発言している。
司会者「本当は自民党の組織をそのまま使って、総裁になりたかったと繰り返し言われているが?」
舛添要一「1つの政党の総裁になるために、わたしは政治をやっていません。厚生労働大臣の時に、自民党のためにやった気持ちはまったくありません。C型肝炎でもハンセンでも、原爆症でも新型インフルでも、国民全体のために働いたわけですから、そんなけちくさい考え方を持っていない。
ですから、日本の政治を変えたいということなんで、その腐りきった政党の総裁になったって、話にならないじゃないですか。そういうのを『鶏口となるとも牛後となるなかれ』というわけです」(FNN)
舛添の離党とその人柄については、2010年4月28日の当ブログ記事――《舛添の自民党の除名処分を受けて立つことができないご都合主義-『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いたが、自民党総裁になりたい衝動を露骨なまでに散々に疼かせていたくせに、「その腐りきった政党の総裁になったって、話にならないじゃないですか」と言うことができる。
「自民党は私を受け入れなかった」、あるいは、「自民党は私を受け入れるだけの度量もなく、私の才能を見誤った」となぜ正々堂々と自身を持することができなかったのだろうか。
「腐りきった政党」が事実だとしても、自民党としては自尊心の手前認め難く、汚名と解釈して、逆に、「自民党総裁になりたくてウズウズしていたくせに」と舛添の行動をこそ一段と批判し、軽蔑することになる流れとなるのは世の常であり、この世の常がテレビ出演4日後の4月27日除名処分に影響を与えた可能性もあるだろうから、その流れを見抜く目を持っていなかった。
大体が「国民全体のために働」くには政権を担う力(この力がないと、民主党政権の二の舞いとなる)と頭数を持った政党に所属することが先ず第一番の要件となる。あとは少数政党所属であっても、頭数の関係で合従連衡の難しい運に如何に恵まれるかが要件となる。
舛添の人柄についてさらに一言言うと、安倍政権が力を得ているからなのか、国会で質問に経つと、安倍政権に擦り寄るニュアンスの発言が目立つようになっていた。
2013年55月8日の参院予算委員会。
舛添要一「私は野党ですけれども、安倍政権がいい政策出せばそれは賛成する、予算案でもいいのがあれば賛成する。しかし、今回は、良識の府の参議院でこういうことをやっちゃいけないんです。ですから、何としてでも民主主義というものを守るために、こういう基本をしっかりするということをやらないと、せっかく安倍総理がいい政策をなさっても、こういうことから国会運営が行き詰まってくるというようなことになれば、私は大変な問題になると思いますから、安倍政権のためにも、是非、自民党の良識のある方々の御決断を願いたいというふうに思います。回答は要りません。私の今所見を述べさせていただきました」――
「こういうことをやっちゃいけないんです」とは、「Wikipedia」に頼って紹介すると、自民党の川口順子環境委員長が翌日までの予定で2013年4月23日訪中、会談の都合で4月25日まで滞在を延長しなくてはならなくなり、参議院議院運営委員会に滞在申請したが、委員は野党議員が多数を占めていたからだろう、認められなかったものの、滞在延長を決めた。
そのため25日開催予定であった参議院環境委員会が流会となり(舛添は「一日に二億円の税金を使って開いている国会」だと説明している。)、野党7党が解任決議案を提出、可決された問題を指す。
だが、質問の本質的な趣旨は「安倍政権がいい政策出せばそれは賛成する、予算案でもいいのがあれば賛成する」の協力の申し出である。「腐りきった政党」と糾弾していた自民党政権に対して協力意欲を見せた。手の平を返すように。
だとしても、自民党の舛添要一の離党に対する除名処分は正しい判断として下した以上、事実として消えることなく残るはずだ。
都民に一番人気があり、自民党が支援に動けば当選する可能性が高いという事情は除名不問の理由とはならないはずだ。
何が問題になるかというと、政党としての節操、あるいは政治家としての節操である。影響力を確保できる都知事一人を獲得するために後ろ足で砂を蹴ったようにして飛び出し、党を激しく批判した都知事候補を支援することになるという節操の問題である。
自民党は郵政民営化法案に反対して不成立の原因をつくった郵政造反議員を除名処分とし、小泉政権から第1次安倍政権になって除名を解除し、復党を認めた。このとき就任当初は70%近くあった安倍内閣支持率が50%台急落という代償を支払うことになったのはその節操が問われたからだろう。
安倍晋三はよもや二度目の無節操は演じまい、いや安倍晋三のことだから、一度目に懲りず、現在の安倍内閣が置かれている状況に自信を持ち、二度目であろうが三度目であろうが無節操を演じるかもしれないと見ていたところ、安倍晋三が除名を不問に付すという記事を目にした。
〈安倍晋三首相は(1月)8日のBSフジ番組で「様々な感情は横に置く必要がある」と述べ、過去の経緯は不問とする意向を示した。〉(「MSN産経」)――
「様々な感情は横に置く」のはいくらでも結構だが、「横に置く」ということは無節操を演じるということであるはずだ。節操を守るとしたら、「横に置く」ことはできない。
いわば節操よりも党利を優先させた。
多分、舛添要一が都民に一番人気だという事情と現在のアベノミクスの高人気によって、この無節操の安倍内閣への影響はさしたることはないかもしれない。
だが、細川護熙(もりひろ)元首相の出馬と小泉純一郎元首相との連携の二つの可能性が浮上、可能性が実現した場合、様相が一変するとマスコミが騒いでいる。
都知事選の投票権はないが、安倍晋三の無節操の答がどう出るか興味を沸かせることとなった。
もう一つの無節操が演じられるかもしれない。
管無能元首相が自身のブログで細川氏にエールを送ったと「MSN産経」が伝えていた。
細川氏が立候補して反原発を選挙の争点とした場合、同じ反原発を売りにして自身の存在感をアピールしている管無能が自らの出番とする無節操である。福島原発事故では菅政府は2010年10月20日に《平成22年度原子力総合防災訓練》を行ってSPEEDIを含めた原子力災害発生の場合の様々なシミュレーションを行っていながら、福島原発事故発生の際の危機管理では原子力災害対策特別措置法に基づいた原子力緊急事態宣言の発出が遅れ、結果、初動対応の遅れに連動、しかも住民避難命令に遅れを来した上にSPEEDIを用いた放射性物質の拡散状況を文科省が行って、その状況を把握していながら、発表しなかったことについて、防災訓練でのシミュレーションを忘却の彼方に捨てて「SPEEDIの存在を知らなかった」と釈明、その無責任を演じて被災住民に多大な迷惑をかけておきながら、何ら責任を取らない無節操を演じて今日に至っている。
そんな政治家に自身の存在感アピールと福島原発事故危機管理無能力を隠蔽するための出番を与える更なる無節操は許されるはずもない。