プーチン・ロシアがウクライナのクリミア自治共和国に軍事侵攻し、軍事制圧したウクライナの領土と主権と国民を分断・侵害する国際法違反に対して我が日本の歴史修正主義者・国家主義者安倍晋三は欧米諸国の対露制裁姿勢に反して自国利益を優先、対露友好関係維持の姿勢を示したことを以って一国平和主義、原理・原則なきご都合主義・横並び主義の日和見主義外交だとブログに書いてきたが、今回の電話会談がアメリカ側からの要請だということから考えると、安倍晋三の一国平和主義外交・日和見主義外交の暴走・対ロシア抜け駆け姿勢への牽制の役目も担っていたはずだ。
プーチン・ロシアのクリミア軍事行動が不可避な状況となった3月3日参議院予算委員会の時点で既に安倍晋三は欧米の対ロシア制裁をちらつかせた警告とは一線を画して、自国国益だけを考えた一国平和主義的な答弁を行っている。
安倍晋三「平和的な手段で解決されることに期待したい。すべての当事者が国際法を順守し、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重するよう求める。
ロシアとの2国間の関係については、プーチ ン大統領との個人的信頼関係を梃子に、外相や外務次官級の政治対話を推進し、北方領土問題の解決に向けて平和条約の締結交渉を加速したい」――
プーチン・ロシアのクリミアに対する軍事行動が不可避な状況となっていたのだから、何ら制裁をちらつかせたわけでもない「ウクライナの主権と領土の一体性」の尊重は体裁上必要とした単なる前置きの言葉――枕詞(まくらことば)に過ぎないばかりか、後半の発言は欧米の対ロシア制裁戦線には日本は加わりませんよというシグナルをプーチン・ロシアに送った等しい。
その証拠に欧米がソチ・パ ラリンピック開会式への政府関係者出席を見送る意向を示していたのに反して、日本政府は3月5日の時点で早くも桜田義孝文部科学副の(大臣まで付けるのは勿体無い)派遣を決めていた。
安倍晋三の積極的平和主義外交はプーチン・ロシアのクリミア軍事制圧によるウクライナの領土と主権と国民分断・侵害の国際法違反に対して異議申立ての意思表示としては現れず、逆に国際法違反を侵したプーチン・ロシアに対して友好と信頼の意思表示として現れることになった。
オバマ大統領にしても、安倍晋三がロシアに対して直接的に何らの警告も、何らの牽制も行っていないばかりか、逆にプーチン・ロシアのクリミア軍事制圧に重大な関心も重大な危機感も抱かずに従来どおり以上の友好関係推進の姿勢でいることの情報を把握していたに違いない。
当然、日本がプーチン・ロシアとの間にいくら北方四島問題を抱えていたとしても、領土と主権と国民分断・侵害の国際法違反は日本の身に降りかからないとは断言できない危険な問題でもあるのだから、日本自身の問題として同一に扱わなければならないばかりか、その一体性保持は民主国家の原理・原則として守らなければならない重大な問題なのだから、北方四島問題に優先させるべきを、自国国益優先の一国平和主義に囚われて逆の優先に陥っている。
この優先姿勢が3月7日正午から約40分間のオバマ・安倍電話会談の発言となって現れた。
菅官房長官の3月7日(金)午後記者会見。
菅官房長官「ウクライナ情勢の改善のためのオバマ大統領の努力を支持している。 日本も情勢の早期改善を期待しているという趣旨を述べたということです」
記者「努力を支持する中に制裁措置というものも含まれるのか」
菅官房長官「全体としての努力への支持と私は受け止めました。一致したということはウクライナの主権と領土の一体性を尊重することが重要だという認識で一致したということで、G7の重要性を確認して、日米首脳が緊密に連携を取っていこうと。そして政治改革と経済改革の姿勢を確認をした、そういうことです」(首相官邸動画から)
要するに「オバマ大統領の努力を支持」するが、自らは制裁に関して何ら言及していないのだから、日本として制裁に向けた努力はしないとする趣旨の言葉を伝えたのである。
このことは菅官房長官が「全体としての努力への支持と私は受け止めました」と解釈しているところに現れている。あくまでも「全体としての努力への支持」であって、制裁自体を個別的に把えた支持ではないというわけである。
だが、オバマ大統領は対露制裁に対して安倍晋三から明確な支持は受けることができなくても、安倍晋三の対露友好関係推進に一定のブレーキをかけることはできたはずだ。
このことは3月7日の9時17分から行われた小野寺防衛省の閣議後記者会見の発言が証明している。オバマ・安倍電話会談に先んじた記者会見であるが、正午丁度から行われたということは双方の時間の調整とその準備のために前以てアメリカ政府から要請を受けていたはずだし、要請を受けた時点で会談内容の説明を受けていたはずだし、受けていないとしても、相手側の意図を読み取っていただろうから、閣議でどう対応するか話し合った可能性と小野寺が内閣の一員であることから、安倍内閣の姿勢を既に固めていたことを受けた発言であるはずである。(関連個所だけを抜粋)
《小野寺防衛大臣会見概要》(防衛省/平成26年3月7日09時17分~09時24分)
記者「ウクライナ情勢に関連して、ロシアのゲラシモフ参謀総長が3月中に来日するという情報もあるのですけれども、今現在の防衛省とロシア政府との調整状況を教えてください」
小野寺「これは昨年、防衛省の統合幕僚長がロシアを訪問したということの返礼ということで、従前から、今年ゲラシモフ参謀総長が訪日するという調整をしております。日程については現在も調整中ということで、まだ日程が固まったわけではありません」
記者「その関連で、ロシアとアメリカとの対立が続く中で、ロシア政府への対応というのもなかなか反対するのが難しいのではないかというような指摘もあるのですけれども、日本政府としては来日するのであれば迎え入れるということでよろしいのですか」
小野寺「いずれにしてもまだ日程が固まったわけではありませんので、固まっていく中での議論だと思っています」
記者「日程については当初来週辺りを予定していたかと思うのですけれども」
小野寺「様々な日程調整を進めている中というふうにご理解いただければと思います」
記者「日本政府の方から訪日延期という打診はされたのか、されるのかというそこのところはどうなのでしょうか」
小野寺「そのような方針も含めてまだ何か決定したわけではないということであります」
記者「関連しまして、来週来る可能性もあるということだったのですけれども、先送りを検討しているということですか」
小野寺「まだ当初から具体的な日程が固まったわけではありません。来週という日程が固まったわけでもありませんし、今、日程を調整中だということだと思います」
記者「関連ですけれども、現在のウクライナ情勢をどう見ていらっしゃるかということと、アメリカが制裁をやるということで、EUも制裁を検討ということですけれども、これについて日本政府はどのように対応するべきだと思いますか」
小野寺「すでにG7の中で日本も含めた声明を出していて、今回やはりしっかりとした平和裏な解決、そして当事者の話合いが重要だというようなメッセージは出し ていると思います。現在もウクライナ情勢というのは、様々な情報を私どもとしても収集をしておりますし、またNSCの事務局の中で日々分析をするというこ とであります。私どもとしましては、やはり一日も早い対話による解決が重要だと思っております。今日午前中にEUの軍事委員会議長、日本でいえばEUの統 合幕僚長にあたる方だと聞いておりますが、その方が来られますので、私の方からも直接EU全体としてのこの問題についての対応の仕方を含めて意見を交わし たいと思っております」
記者「ロシアとは先の「2+2」で防衛交流を活発にしていくことを確認していると思うのですけれども、今回の事案が日露の防衛当局の防衛交流に与える影響というのはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
小野寺「私どもとしては、このウクライナ問題については、まず平和裏な一刻も早い解決をしていただきたいということであります。その問題が解決し、国際社会の 中でまたアメリカとロシアの間の関係も修復されれば、私どもとしては従前通りロシアとの防衛交流を推進していきたいと思っています。現時点で国際社会の中 でどのような方向が出るかというのは注視をしていきたいと思っています」
記者「ということは現在、防衛交流は止まっているということでしょうか」
小野寺「当然私どもとして何か現在のウクライナ情勢に合わせて防衛交流について制限をするというようなことは、特に今行っているわけではありません」(以上)
「ロシアのゲラシモフ参謀総長が3月中に来日するという情報」が既に存在していながら、小野寺防衛相は「まだ当初から具体的な日程が固まったわけではありません。来週という日程が固まったわけでもありませんし、今、日程を調整中だということだと思います」と言っている。
そして、「私どもとしては、このウクライナ問題については、まず平和裏な一刻も早い解決をしていただきたいということであります。その問題が解決し、国際社会の 中でまたアメリカとロシアの間の関係も修復されれば、私どもとしては従前通りロシアとの防衛交流を推進していきたいと思っています」
「アメリカとロシアの間の関係」修復を条件として従前通りの「ロシアとの防衛交流」推進を掲げている。日本自らは対露制裁を実施しないが、米露関係修復を待たずに日ロ防衛交流の推進はしないと。
このような日ロ関係推進の構図は先に触れた3月3日参議院予算委員会の安倍晋三発言に見ることができる日ロ関係推進の構図とは逆の方向を取っている。
安倍晋三「ロシアとの2国間の関係については、プーチン大統領との個人的信頼関係を梃子に、外相や外務次官級の政治対話を推進し、北方領土問題の解決に向けて平和条約の締結交渉を加速したい」――
ここではアメリカの制裁問題も米ロ関係の修復も考慮に入れていなかった。
オバマ大統領は安倍晋三を対露制裁戦線に加えることはできなかったが、安倍晋三の積極的平和主義を騙った自国利益優先の対ロシア抜け駆け姿勢への牽制には役立ったはずで、また、最低限、その点を狙った電話会談であったはずだ。
だとしても、オバマ大統領は安倍晋三の靖国参拝にひき続いて、安倍晋三に「失望する」ことになった電話会談であったと確実に言うことができる。