安倍晋三の災害公営住宅「用地確保のメドを今月中に付けたい」 は人をたぶらかす類いの虚偽情報

2014-03-10 08:43:04 | Weblog



 安倍晋三が首相就任後6回目となる原発事故被災地福島を訪問した。外交では、これだけの国を訪問した、これだけの首脳会談数をしたと回数を誇って、それを以て自身の外交能力の説明としている男である。首相執務室の壁に取り付けたボードには「正」の字を用いて数えた外国訪問回数と首脳会談数だけではなく、福島訪問回数も書き入れているに違いない。

 その回数を見ては自身の政治・外交能力を誇り、国会答弁や記者会見で間違えずに言えるように常に回数を確認しておく。

 《「月内に5000戸用地確保」 災害公営住宅 首相、整備急ぐ考え強調》福島民報/2014/03/09 08:46)

 いわき市、大熊町、田村市都路町視察後の対記者団発言。

 安倍晋三(災害公営住宅について)「5000戸分の用地確保のメドを今月中に付けたい。避難生活を余儀なくされている多くの人が災害公営住宅の移転を希望している」――

 記事解説はこの発言を整備を急ぐ考えを強調し、県や市町村の整備加速に向けて支援する姿勢を示したものだそうだ。発言自体は災害公営住宅の入居を望み、入居の日を首を長くして待っている被災者に希望を与えるものとなっている。

 「MSN産経」記事は安倍晋三の次の発言を伝えている。

 安倍晋三「福島の復興なくして日本の再生はない。復興が前に進み始めたと実感した」――

 インターネットで調べたところ、東日本大震災被災地の災害公営住宅建設にかかる費用は国の復興交付金から8分の7が賄われるが、用地確保から入札・建設管理・入居手続き・維持管理まで県以下の自治体の責任となっている。

 要するに国が8分の7のカネだけ出すのではなく、「5000戸分の用地確保のメド」 が3月中に付く予定が立ったということだから、入札以下の事務加速に向けて国が支援するということなのだろう。

 但し記事は次のように解説している。〈県がまとめた原発事故による長期避難者向けの災害公営住宅整備計画(第1次、第2次) では、県営と市町村営合わせて4890戸を13市町村程度に建設する。2月末までに用地を確保できたのは880戸で、計画全体の2割弱にとどまっている。〉――

 建設予定の4890戸のうち、2月末までの用地確保が880戸だとすると、残り8割の4010戸が3月一杯で用地確保のメドがつくことになる。この急激な進捗は何を意味するのだろう。

 あるいは3月以前の遅滞は何を意味するのだろうか。特別な理由でもあるのだろうか。

 尤も1個所の用地で5階建て40戸×5棟の公営住宅建設を計画しているなら、20個所の用地確保で済むことになって、あながち安倍晋三がハッタリをかませていることにはならない。

 だとしても、問題は「5000戸分の用地確保のメド」をつけるだけで片付く問題ではない。別の「福島民報」記事が、〈設計から土地の造成、完成まで2年近くかかり、27年度中に入居するには今年3月までに用地を選定する必要があるという。〉点は安倍晋三の発言を信じるとしても、建設ラッシュを受けた建築費と人件費の高騰や資材不足、長引いた建設不況による離職・転職からの土木作業員不足、特に熟練工不足、そして高齢化等による生産性低下などが原因した入札不調・工事の長期間化の広範囲化が伝えられている。

 要するに3月中に「5000戸分の用地確保のメド」が付いたからといって、全てが全て直ちに建設に向かうとは限らないということであって、発言が示す情報自体が情報としての完成度を欠いた説明責任不足の一種の虚偽情報と言ことができる。

 被災者に希望を与えるような語調に関して言うと、詐欺にも相当する虚偽情報の部類に入る。

 但し人材不足の障害を予想して政府は手を打っている。作業員不足をアジア諸国からの技能実習生受け入れ人数拡大と受け入れ期間の現在の3年から5年への拡充、現在1度しか認められていない制度利用を2度とする利用拡大等を検討しているという。

 菅官房長官「建設業は、担い手の急速な高齢化や若年労働者の減少といった構造問題に直面している。即戦力となり得る外国人の活用の拡大が極めて重要だ」(時事ドットコム/2014/02/28-14:42)――

 記事は、政府は3月末までに緊急対策を決定し、2015年春の実施を目指していると書いている。

 と言うことは、建設人材の確保・充足は来年の3月以降を待たなければならないのだから、安倍晋三が言っている今年3月中の「5000戸分の用地確保のメド」 だけではやはり済まないことになって、依然として虚偽情報の類いであることから免れることができるわけではない。

 また、建設人材の確保・充足のみで建築費高騰と資材不足の問題が片付くわけではないし、今年4月からの消費税増税と円安が続いた場合のなお一層の資材の高騰と建設費の高騰を避けることはできない。

 さらに言うと、外国人技能実習制度の規制緩和にしても、問題がないわけではない。現在、同制度に基づく建設業の実習生は中国や東南アジアの出身者を中心に約1万5000人だと「時事ドットコム」が伝えているが、制度緩和によって不法滞在者が増えたり、日本人労働者の賃金の抑制につながる懸念材料が指摘されている。

 建設現場では工事監督以外は外国人労働者といった光景も出現するかもしれない。私自身は外国人労働者受入れに賛成だが、政府は賃金抑制につながらない政策を打ち出してからではないと、実習制度の規制緩和は国民を裏切ることになる。

 ここに来て賃金上昇を見ることができると言っても、長年かけて低下してきたあとを受けての上昇なのだから、差し引き不足と物価上昇、さらに消費税増税を考えた場合、外国人労働者受入れによる賃金低下は許されるはずはない。

 安倍政権は外国人技能実習制度以外の方法による単純労働者解禁には否定的だという。実習制度は期限が来れば、本国に帰すことができる。単純労働者解禁の場合、期限付きの制度としたら、国際的な批判を受ける。無期限とした場合、定住化が促進される。

 安倍晋三の日本人に拘るあまりの日本人優越意識から抜け出ることができない国家主義からの外国人単純労働者拒絶反応であるはずだ。

 だから、外国人単純労働者受け入れはこれまで日本人の血を少しでも持った日系人にほぼ限った。

 安倍晋三の福島訪問「復興が前に進み始めたと実感した」にしても、《【NHK NEWS WEB震災特集】 震災3年 被災地1200人の声》(2014年3月8日 0時25分)のアンケート調査を見てみると、虚偽情報そのものである。   

 「地域の復興について」

 「進んでいる実感が持てない」44%
 「想定よりも遅れている」36% 

 合計80%。

 復興のスピードに不安を感じていると回答した福島県被災者の93%が具体的には「原子力災害や被ばくへ備え」が「遅い」「やや遅い」と回答。

 この93%と安倍晋三の「復興が前に進み始めたと実感」の乖離は93%を虚偽情報とすることによって解消することができる。

 但し93%の虚偽情報化は国民の判断を疑うことになり、国民を愚弄する行為となる。安倍晋三の回数を誇るだけの6回目の福島訪問の「復興が前に進み始めたと実感」の発言自体も、情報としての完成度を欠いた説明責任不足の虚偽情報としなければ正当性を得ることはできないはずだ。

 誠意ある政治家は情報の完成度を欠いた説明責任不足を見せることはないだろう。

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