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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

東芝、RF-15用J/USD-1偵察システム開発難航、防衛省は契約解除の方向で調整

2010-10-02 23:38:42 | 防衛・安全保障

◆次期偵察機計画、実現は2012年度以降へ

 現在開発中のRF-4偵察機後継機RF-15ですが、その中枢となる偵察ポットの開発が難航し、東芝が開発期間延長を要請、防衛省はこれを却下する方針で、次期偵察機計画が暗礁に乗り掛けているようです。

Img_9502_2  F-15偵察機化試改修事業に係る契約の納期猶予不承認について 平成22年10月1日
1   平成18年度から着手したF-15偵察機化試改修事業に係る契約のうち、平成22年9月30日及び10月29日が納期となっている契約(F-15用偵察システム(J/USD-1)ほか6件)について、契約相手方である(株)東芝から、9月22日、納期猶予の申請がありました。
Img_8753_2 2   しかしながら、仮に納期を猶予したとしても、納入できる光学・赤外線偵察ポッドの性能は、当省の要求する性能を達成できないと見込まれるため、納期猶予を承認しないことといたしました。
3   現在、当省としては、(株)東芝との間で関連する契約の解除へ向けた協議を行っているところです

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2010/10/01b.html

Img_8226  現在航空自衛隊では百里基地の第501飛行隊が偵察機としてRF-4Eを14機、戦闘機から改修したRF-4EJを15機取得し、運用中です。しかしRF-4については用途廃止も始まっているようで百里基地航空祭では、会場の片隅にRF-4の用途廃止機がひっそりと並んでいるのが見られるとのことでした。

Img_5896  近年、この種の偵察は偵察衛星と無人偵察機に置き換えられつつありますが、その重要性はある程度不変です。航空自衛隊における戦術偵察とは、航空機による航空攻撃に先んじて情報収集を行い、特に戦闘機を転用した戦術偵察機の場合はある程度の脅威がある状況下においても強行偵察を行う事が可能となっています。

Img_9595_1  この種の航空機は、仮に今後自衛隊が無人機を導入するとしても、低速型の無人機では生存性に難があり、高速小型の無人機では行動半径外の状況に対応するためには必要な航空機となります。特にRF-4では対応が難しい北朝鮮内陸部の弾道ミサイル基地など、実際に日本が策源地攻撃というような選択肢をとる場合には偵察が不可欠、となる事も考えられますし、本土直接武力侵攻や島嶼部防衛に際しても有事の際にいち早く進出して情報を収集する必要があります次第。

Img_8979  そこで自衛隊では、現用のF-15戦闘機について、特に段階近代化改修に対応していない初期の期待を十数機程度戦術偵察機RF-15へ改修することで、このRF-4を置き換えようと考えた訳です。航続距離は大きく、機動性も世界最高峰のF-15,しかし高価であるため、偵察機への改修は日本が初めてです。

Img_2495  米軍や欧州NATO軍等を見ますとせん用の戦術偵察機、という部隊は編成せずに、通常の戦術戦闘機に偵察ポッドを搭載して戦術偵察に充てています。航空自衛隊もそうすることが出来れば理想なのですが、何分この広いう日本の領空を12個飛行隊で防空を行い、その中の三個飛行隊は支援戦闘機F2の飛行隊ですし、所要の訓練と任務を行うのが手一杯の状況、偵察任務もこなすのは難しいのですね。

Img_7076  この要員について共同通信は以下のように報じています。F15偵察機化で東芝契約解除へ 防衛省: 防衛省は1日、F15戦闘機1機に偵察機能を備える改修事業を受注した東芝が、9~10月の予定だった納期を12年春まで猶予するよう求めたのに対し、これを承認しないと発表した。  東芝が必要な部品を外国から調達できず、納期を猶予しても同省が要求する飛行や撮影の性能を満たすことができないためで、今後契約を解除する見通し。  防衛省が納期猶予の申請を認めないのは異例。新たな改修事業は早くても12年度以降になり、当面は現行のRF4E偵察機を活用するhttp://www.47news.jp/news/2010/10/post_20101001210604.html

Img_2891  この記事を読む限りでは、防衛省はF-15の偵察機への改修は基本的に諦めていない、という事が分かり、外国製の偵察機を取得する、というようなことも考えていないようです。しかし、東芝が主契約企業としてのポッド開発について、継続が認められない、という事となれば、偵察用機材のみを輸入して日本で改修、という可能性は残っている事になるのでしょうか。

Img_0229  しかし、忘れてはならないのはF-X問題としてF-4戦闘機の後継機選定が難航している事を幾度か掲載しているのですけれども、このRF-4にしても寿命は迫っている、ということです。RF-4EJについては、かなりの機数が用途廃止になっているようですし、RF-4Eについても長くはありません、そもそもF-4も訓練時間を短縮して寿命を稼いでいるほどなのですが、果たして12年度以降、という状況で大丈夫なのでしょうか。

Img_5048  戦術偵察は、他の航空機で担う事は難しいのですし、一方で前述のように必要性はある機体です。東芝に継続開発を行わせても全く無理な状況なのでしょうか、契約解除で違約金が発生すれば東芝が、ミサイルなどで日本有数の技術と生産能力があるのですが、防衛産業から不採算部門として撤退する事もあるかもしれません。どのくらい、見通しが悪かったのか、事業評価が行われる事を希望します。

Img_6023  偵察機ですが、三菱電機あたりが開発を引き継ぐのでしょうか、それともF-15の偵察型に高度なデータリンク機能を付与させて米軍のスナイパーシステムを始め輸入監視機材を多数装備する偵察型になるのでしょうか、現時点では何とも言えませんが、後継機選定に悩む航空機が自衛隊にまた一機種増えてしまった、という事だけは確かなようです。

HARUNA

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コメント (14)
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