北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新護衛艦は『あきづき』 5000t型護衛艦一番艦が長崎にて進水式

2010-10-13 17:25:24 | 海上自衛隊 催事

◆19DDが旧海軍防空駆逐艦秋月型の名を継ぐ

 海上自衛隊の19DDが遂に進水式を迎えました。当方、進水式には行けませんでしたが聞くところでは、FCS-3改を搭載した新型艦は艦名あきづき。旧海軍の防空駆逐艦秋月型の名前を引き継ぎました。

Img_0094_1  日本海軍は1939年に第四次軍備充実計画において当時増強著しい航空母艦の直衛艦として乙型駆逐艦の建造を計画、これが旧海軍の秋月型駆逐艦です。航空母艦と行動を共にするという任務上、基準排水量は当時の駆逐艦が大型で2000㌧となっていたのに対して、基準排水量2701㌧、航続距離は18ノットで8000浬という大きな航続性能が盛り込まれました。この秋月型は防空艦と呼ばれているのですが、10㌢65口径連装高角砲四門を搭載していた事が大きな特色でした。ヘリコプター搭載護衛艦の近代化を行う海上自衛隊にも重なるところですね。もっとも、新しい護衛艦あきづき、は、はるな型護衛艦と並ぶ大型艦として完成するのですが、ううむ、これは大きい。

Img_0144_1  満載排水量で護衛艦はつゆき型に匹敵する秋月型駆逐艦、その最大の特色は、98式10㌢65口径連装高角砲です。従来は旧海軍も12.7㌢砲を搭載していたのですが、高角砲ではないため対空戦闘に対応していなかったのです。唯一、89式12.7㌢高角砲が対空戦闘に対応していたのですが、これ以外は11年式12.7㌢砲で55°まで、3年式12.7㌢砲で30°までしか高角度に操砲できなかったのですね。98式の砲弾重量は13kgで、89式の23kgよりもかなり軽く、必然的に砲弾威力も減退しているのですが、有効射高が98式は11000mと89式の8100mより大きく、初速も98式は1000m/sと、89式の720m/sよりも大きく、砲弾が軽いため秋月型一隻当たり8門の砲から毎分120発を発射できました。

Img_5478  こうして秋月型は舞鶴で建造され、このほか94式高射装置と21号電探を搭載、強力な防空艦として就役しました。他方、一番艦就役が1942年6月でミッドウェー海戦に間に合わず、航空母艦部隊再建に苦慮する中12隻は苛烈な太平洋戦線で潜水艦や航空機と戦い続けています。他方で、秋月型以降、戦局激化と駆逐艦不足に伴い、戦時艦船補充計画である改⑤計画では、1262㌧の松型駆逐艦へ建造は移行しまして、小型駆逐艦が計画で74隻を建造する、という時代に入って行きまして、現代日本は戦時でこそありませんが、あきづき型に続く23DD、こちらも23年度予算では予算不足を理由に実現しなかったので翌年度に盛り込まれ24DDとなるのでしょうが、こちらは建造費縮減の観点から小型化する模様、なにやら妙な運命を感じてしまったりします。

Img_7882  海上自衛隊では、1957年にアメリカ軍域外調達計画として護衛艦あきづき型を建造しています。こちらは、二代目あきづき、と同じ三菱重工長崎造船所において建造され、横須賀基地で護衛艦隊旗艦等を務めました。基準排水量2350㌧、全長118㍍。127㍉単装砲Mk39を三門備えるほか、57式76㍉連装砲一門を搭載するとともに当時最新装備であったMk108対潜ロケット発射器や電子戦装備を搭載した護衛艦で、航続距離は6500浬、戦後初の国産設計艦となりました。大型艦の建造経験豊富な三菱重工としてはもっと大型の軍艦を建造したかったと伝えられるのですが、二番艦てるづき、とともに護衛艦として1980年代半ばまで活躍しまして、特務艦に種別変更した上で1990年代まで現役でした。この間に新型ソナーの搭載、76㍉砲シールド追加、ボフォース対潜ロケット追加、可変深度ソナー追加装備しています。

Img_7977  Weblog北大路機関を開設した2005年から五年間をみただけでも、自衛隊は随分変わりました。ここ十年間を見ますと、9.11以降、自衛隊は与えられる任務も、大きく変わっていきまして、同時に脅威も大きく変化しています。そして自衛隊が任務の多様化とともに前進するのに対して、政治が後退していまして、自ら武力紛争を誘致しているような政党が明後日の方向へ頑張っているのですが、果たして新型艦あきづき、が就役したのちに自衛艦旗を掲げ進む大海原はどのような情景となっているのでしょうか、わが国の繁栄と世界の安定を海より護衛する護衛艦が、また一隻、命名式とともに海へ進んだ一日でした。

HARUNA

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コメント (14)
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