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中部方面隊創隊50周年記念行事・伊丹駐屯地祭(2010.10.17)

2010-10-17 23:33:57 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆中部・西日本の防衛警備担い半世紀

 陸上自衛隊中部方面隊は、第3師団、第10師団、第13旅団、第14旅団とともに中部・西日本の防衛警備を担う自衛隊の方面隊です。

Img_4460  50周年を迎えた陸上自衛隊中部方面隊、その創設記念行事が兵庫県伊丹市の伊丹駐屯地において実施されました。晴天に恵まれた本日はまさに式典日和、伊丹駐屯地内の式典会場には、各部隊、府県知事、国会議員、市町村長、各国総領事、歴代指揮官、そして多くの市民が集いました。

Img_3793  伊丹駐屯地へは、阪急伊丹駅とJR伊丹駅からシャトルバスが運行され、万一のテロを警戒しての手荷物検査の後に会場へ入ります。観閲台周辺のスタンド席が招待客向け、そして観閲台と対面のスタンド席が一般席として開放され、会場周辺には部隊が式典準備にあたっていました。

Img_3801  1960年に創設された中部方面隊は、管区に東海北陸地方、京阪神を中心に近畿地方、山陰山陽地方、四国地方をその防衛警備管区としていて、日本海の向こうに脅威を見据えつつ、伊勢湾台風や阪神大震災を筆頭に度重なる災害へ対処を続けてきまして、東西冷戦の激化と終焉、新しい脅威の時代を背景に50周年を迎えたというかたちです。

Img_3828  式典開始とともに部隊の入場が始まりました。今回の式典へは参加人員1007名、広大な警備管区を有する中部方面隊は少数精鋭を強いられており、こうした理由から中部方面隊行事として参加人員が1000名を超えるのは稀有で、中部方面隊が50周年記念行事にかける意気込みが伝わってきます。

Img_3892  中部方面総監荒川龍一郎陸将が整列した式典参加部隊を前に車上から方面総監旗とともに部隊巡閲を行います。中部方面隊に所属する二個師団二個旅団と直轄部隊とともに、西日本という広い地域の防衛警備及び災害派遣の重責を担っているのが、敬礼する総監の荒川陸将です。

Img_3936  総監訓示とともに、大阪府知事、兵庫県知事、防衛協会の祝辞が行われました。盛んに感謝と感激を重ねていた府知事ですが、しかし行政の長というのは同じく人命と財産に責任を負っているように思いまして、同じ行政の一員なのですから、線引きして言葉を重ねるのは、と少し思いました。京都府の山田知事は海外視察中で、副知事が祝辞を代読していました。

Img_4002  観閲行進に先だって、方面隊管区の府県旗が会場にて紹介されます。例年は一列に参加するのですが、本年は第10師団管区、第3師団管区、第13旅団管区、第14旅団管区という順番で分かれて紹介されていました。旗衛兵の乗車するのは、各師団もしくは旅団の車両が当たっていたのが細かい気遣い。

Img_4050  観閲行進の先頭を行くのが四国を防衛警備管区としている第14旅団第50普通科連隊。新しく創設され移転した新高知駐屯地に駐屯している連隊。旅団普通科連隊ということで小回りが利く事を主眼として軽量編成となっており、本部管理中隊と三個普通科中隊から編成されています。

Img_4056  徒歩行進。着剣した89式小銃を携行しています。創立当時はM-1小銃、それが64式小銃、そして今の89式小銃となりました。個々人が自身とともに最後まで戦闘力のよりどころとするのが小銃でして、土地の収奪という戦闘の根幹を担うのが、歩兵、すなわち普通科部隊で、陸上自衛隊は普通科部隊を重視した編成を採って今日に至ります。

Img_4124  金沢第14普通科連隊の軽装甲機動車。徒歩部隊は地形に依拠した柔軟な運用が可能ですが、今日では戦闘の展開が非常に素早く、加えて普通科部隊の個人装備も増大し重量化する傾向にあるため、陸上自衛隊では機関銃やミサイルとともに戦闘状況における人員の運用を期して、既に1000両以上の軽装甲機動車を配備し、運用しています。

Img_4138  米子駐屯地の第8普通科連隊。90年代から陸上自衛隊の自動車化を大きく進めたのが、この高機動車です。トヨタ自動車製で加速力に優れ、頑丈であるのに加え大きな搭載力は高い汎用性にも繋がっており、普通科部隊以外にも広く配備され、1600両以上が配備され、今も生産が続いています。

Img_4179  中部方面情報隊の車両。今回の式典には車両が144両参加し、全てを紹介できないので、一部の車両を紹介します。中部方面情報隊は、沿岸監視機材や無人偵察機により、広大な海岸線を警戒し情報を収集する部隊です。管区は全国の三割に及び、海岸線には人口密度希薄な地域があるため、重要な部隊といえるでしょう。

Img_4211  第8高射特科群の03式中距離地対空誘導弾、通称中SAM.陸上自衛隊の高射特科部隊が運用する最強の地対空ミサイルで、射程は60km程度、対電子妨害能力が高く、同時多目標対処能力や低空高速目標、限定的な弾道弾対処能力を有している国産の地対空ミサイルです。方面隊行事への参加は今回が初。

Img_4374  観閲行進は、特科部隊や施設部隊、後方支援部隊に予備自衛官部隊と続き、最後に74式戦車が登場しました。今津駐屯地の第3戦車大隊に所属する戦車です。今日でも強力な打撃力を持つ戦車ですが、旧式である事は否めず、遠からず最新鋭の10式戦車への本格的な置き換えが始まり、中部方面隊の戦車部隊にも導入される事となるのでしょう。

Img_4407  祝賀飛行には陸上自衛隊のヘリコプターを中心に陸海空自衛隊19機のヘリコプターが参加しました。OH-6観測ヘリコプターやUH-1多用途ヘリコプター、AH-1S対戦車ヘリコプターといった中部方面隊に配備されている様々なヘリコプターがローター音を響かせながら編隊の先頭をゆきます。

Img_4439  航空学校に所属するOH-1観測ヘリコプターやUH-60JA多用途ヘリコプターも編隊に参加。本来はOH-6を置き換えるべくOH-1は250機の生産が見込まれていたのですが、国産ながら高性能と高価格の抱き合わせであったため多数を生産できず、40機程度で生産終了となる見込みです。

Img_4443  AH-64D戦闘ヘリコプター。明野駐屯地の航空学校に所属している戦闘ヘリコプターです。AH-1Sを置き換えるべく導入が開始されたのですが、取得費用が大きすぎ、生産は暗礁に乗り掛けています。ただ、一個飛行隊をAH-1Sの16機に対して9~12機で編成できるので、こちらを修得した方が運用コストは低くなるのでは、と思ったりもしました。

Img_4444  日本海を睨む舞鶴航空基地よりSH-60J哨戒ヘリコプターが参加、三機編隊での参加というのは驚きましたね。航空自衛隊のCH-47J輸送ヘリコプターも編隊に加わっており、陸海空一体となり任務達成に励もう、総監の訓示をそのまま体現した編成での祝賀飛行参加となりました。

Img_4472  観閲行進終了とともに訓練展示となりました。準備時間が今回は非常に短かったですね、もっとも伊丹駐屯地ではここ数年模擬戦が行われていなかったので久しぶり、ということになります。さて、明らかに怪しい装備の仮設敵が小銃を手に進出してきます。武装したコマンドー部隊がわが国に浸透し、市街地へ立てこもっているなか、陸上自衛隊へ防衛出動命令が発令される、という想定です。

Img_4477  情報収集の為に第36普通科連隊の本部管理中隊から情報小隊の斥候オートバイが派遣されました。軽快な機動性を誇るオートバイを最大限活用し、どういう脅威がどのように浸透しつつあるのか、そして任務遂行に必要な部隊や運用はどうあるべきか、その情報を指揮官へ伝えるのが情報小隊の任務です。

Img_4487  コマンドー部隊はBTR装甲車とともに進出していた、という想定、防衛出動した我が部隊に対して盛んに重機関銃で射撃を加えてきます。装甲車、BTR装甲車からの重機関銃射撃は先ほどの仮設敵が運用していた小銃とは明らかに違う、重く響くような銃声を式典会場にとどろかせています。

Img_4531  情報小隊の情報に基づき第36普通科連隊より普通科中隊が出動。しかし、出動した我が部隊から遂に負傷者が、という想定。即座に軽装甲機動車を盾にして負傷者の救出に移るとともに、普通科部隊が携行する火器や迫撃砲など、所在火力を集中して目標の攻撃前進を阻止する行動へとでました。

Img_4534  中隊長は戦車小隊への支援を要請し、これに基づき戦車が出動します、74式戦車の前進が始まりました。戦車は同軸の連装銃により正確に目標へ対処してゆきます。本来ならば、ここで主砲から空包射撃を行うのですが、近隣住民からの要望もあり、大きな音を立てることなく訓練展示を展開。

Img_4574  最後に仮設敵が立てこもる建築物へ、普通科部隊が戦車とともに攻撃を加え、これを無力化、訓練展示は終了しました。特科火砲の空包射撃も行われず、伊丹駐屯地祭の模擬戦は、昔のように戦車や火砲が撃ちまくる、という方式はできなくなったのか、と少々残念でもありました。

Img_4686  音楽演奏、ここでティンパニーの代わりにFH-70榴弾砲が空包射撃を実施。豊川駐屯地の第10特科連隊よりFH-70榴弾砲五門が参加し、音楽に合わせて次々と射撃してゆきます。ああ、豊川駐屯地に行けなかったので見る事が出来なかったFH-70の連続射撃が、こんなところで見られるとは、という印象。

Img_4748  訓練展示と音楽演奏が終了して、装備品展示の準備が開始されました。モータープールは、立ち入ってもいいとのことだったので、早速先ほどの訓練展示で頑張っていた、12.7㍉重機関銃搭載の軽装甲機動車へ。ターレットではなく、車体に機銃を搭載している構造のようで、射界は前方90~110°くらい、でしょうか。中隊本部の重機関銃を機動運用する手法のようでしたね。

Img_4796  おお、2型がいる!、96式装輪装甲車2型。装備品展示で隅の方に置かれていました。増加装甲も取り付ける事が出来る96式装輪装甲車2型、入ったばかりの装備という事で、第3戦車大隊の車両ですが、今津駐屯地祭では出されなかった装備、とのことです。このほか、防弾給水車等、一風変わった装備が多数。

Img_9337  今回驚いたのは58式榴弾砲や60式106㍉無反動砲、64式81㍉迫撃砲にM20ロケットランチャーといった中部方面隊における過去の装備が新旧並べられていたところでしょうか。特に106㍉無反動砲などは砲身肉厚が薄いため野外展示もされておらず、本当に久しぶりに見た装備でした。105㍉榴弾砲も、個人的に好きな装備。

Img_9365  50周年という事で新旧装備が並べられており、このように新型戦車も、と聞こえてきました。よみうりテレビのクルーが夕方のニュース向けの収録を。はて新型戦車、10式?と思い見てみますと、保存展示の61式に“旧”、そして74式戦車が“新”。・・・、いや、その36年型落を新型、といわれても、・・・、方面隊広報の方も苦笑していました。と、まあこのように、いろいろと見る事が出来た一日でした。

HARUNA

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コメント (2)
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