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防衛省、平成24年度防衛予算概算要求として4兆6906億円を提示

2011-10-01 22:13:04 | 防衛・安全保障

◆平成24年度概算要求提出

 防衛予算概算要求が出されました、24年度概算要求として0.6%増の4兆6906億円が要求されています。

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 東日本大震災を受けての被害は補正予算により補填されるとのことですが、野田政権誕生とともに一ヶ月の遅れを持って発表された概算要求は、装備品の延命と選定延期のなかに最小限を下回る規模での装備取得が行われる、という試行錯誤のさなかの概算要求という印象でした。

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 来年度予算概算要求では平成28年度に除籍が見込まれている護衛艦くらま代替用のヘリコプター搭載護衛艦一隻の建造が認められ19500t型護衛艦が建造されるとのことですが、他方、はつゆき型を置き換える次期汎用護衛艦の建造は認められず、代わりに延命予算が要求されています。そして、そうりゅう型潜水艦が一隻建造を要求する模様。

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 予算に関連し次期戦闘機選定は大詰め、という様相ですけれども、果たしてF-35を導入するという一辺倒は正しいのか、と素朴な疑問。UH-1とUH-60の調達で張りませんが、有償軍事供与によるハイローミックス、という概念はあってしかるべきなのでは、と思う次第です。ステルス性を有し、特に打撃力や無人機の管制という能力を有するF-35は、要撃機向けの航空機ではありません。そしてそのステルス性能は周辺国の大きな関心を招きますから、領空侵犯を誘発するようなもの、こういう機体は浜松基地か横田基地に航空総隊司令部飛行隊直属の予備航空団を創設して絶対航空優勢確保の決め手として温存するん用が望ましいのではないでしょうか。こうしたうえで、ライセンス生産を念頭に置いた航空機を第一線の要撃機として配備して運用することが一つの選択肢となるのだと思います。こうした場合、戦闘機定数が防衛大綱により担保されなければなりませんが、すべてF-35で置き換えた場合の財政負担と戦闘機定数を増大させてのハイローミックスのほうが取得費用が安価に済む場合とを比較するべきです。戦闘機運用基盤の喪失につながれば、その分部品とり用の在場予備機を多く確保しなければならなくなりますから、結局定数を替えなくとも調達数を増やさなければならなくなります。それならば、ということ。

 

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 航空機関連では、次期戦闘機予算が計上されます。しかし、機種決定は24年度予算案決定までの期間に決定する、とのことで、機種として三機種、F/A-18E,F-35A,タイフーンだけが挙げられています。今月で米海軍ファントム運用開始50周年、50年といえば2000年代にF-86を運用しているようなものですからそろそろ決定しなければなりません。

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 戦闘機の能力向上にも予算が計上され、F-15戦闘機ではレーダーを使わず目標を発見する遠距離赤外線前方監視用IRSTの搭載や戦闘機としての近代化改修予算が要求、更にF-2支援戦闘機にGPS精密誘導爆弾であるJDAMの搭載改修が要求のほか、F-2に対してレーザー誘導方式の爆弾を運用する研究開発に33億円が要求となりました。

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 航空機ですが、P-1の調達は見送りです、静強度圧試験などでの問題が背景と考えます。哨戒ヘリコプターですが、SH-60K哨戒ヘリコプター五機が要求されている半面、それでも整備数は不足とのことなのでしょうJ型2機の延命改修予算が計上、ただ昨年のようなP-3C哨戒機の延命予算は要求されていないようです。

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 陸上自衛隊の多用途ヘリコプター開発に184億円が要求されます。現在のUH-1J多用途ヘリコプターの後継を目指すのですが、UH-60JAが本来後継機として構想されたのですけれども取得費用が大きく、師団や旅団飛行隊だけではなく方面航空隊にも運用可能な多用途ヘリコプターとして開発が行われるようです。

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 ミサイル防衛は、まず弾道ミサイル防衛に、あたご型ミサイル護衛艦がミサイル防衛に加わります。そのうえでSM-3block2Aの開発やPAC-3ミサイル取得にも予算が要求されました。そして巡航ミサイル対処として航空機から赤外線を感知する将来ミサイル警戒技術研究に20億円が要求です。

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 蛇足ですが、護衛艦の延命改修が多いですね、はつゆき型に、あぶくま型、はたかぜ型ミサイル護衛艦が延命改修されるため2015年には現行イージスシステムの生産が終了、代替艦を要求しなければミサイル護衛艦の後継となるイージス艦の導入は生産終了で不可能となってしまうでしょう。

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 護衛艦なのですが、数の不足はさることながら質的向上をお紺マイ、中国海軍に対する優位を維持しなければならない、ということは忘れてはならないと思います。そういう意味で、全通飛行甲板型護衛艦の抑止力は大きく、当面は護衛艦隊の護衛隊群用の護衛艦を掃討重視しなければならず、二桁護衛隊へのしわ寄せは続くのだろうか、とも。

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 他方で、中国海軍が運用を開始する航空母艦による空母外交、政治的圧力恫喝手段としての航空母艦対策ですが、昨今かなり真剣に考えたところでは海上自衛隊は航空母艦や戦力投射艦へと向かうのではなくスラヴァ級ミサイル巡洋艦のような航空母艦をもっぱら狙う大型のミサイル巡洋艦を整備したほうがいいのではないか、と。西側にはこれまで、この種の艦艇はありませんでしたが、これは東側にこうしたミサイル巡洋艦を充当させなければならないような高付加価値目標が存在しなかったからでして、逆に艦隊防空能力に不安が残るまま発信装置の制約から対艦ミサイルを搭載したまま戦闘機を発進させることのできない中国空母へはミサイル巡洋艦が最も有力な抑止力となるでしょう。通常の護衛艦では艦上を艦載機に乱舞されるだけで政治的抑止力が左右される状況になりますが、確実に相手を屠る能力を有する艦艇の接近は、射程内に航空母艦を捉える限り抑止力となります。もとも、索敵能力を持ち750kmの射程をもつ大型対艦ミサイルを開発するには時間がかかりますので、決断は早く、ということですが。

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 潜水艦用新型長魚雷開発に37億円、そして新型の栄光式ソナーとその情報を複数の護衛艦からのデータを共有することで微かな潜水艦の兆候をも逃さない可変深度ソーナーシステムの研究に22億円が要求。この分野は継続的な技術開発が必要ン間分野であることは言うまでもありません。

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 これら情報が漏えいしてしまっては防衛は危機にさらされますので、サイバー防護分析装置強化に2億円とサイバー攻撃対処への調査研究に0.2億円、さらに海外へのサイバー戦対処を行う大学への留学にも予算が計上されるようです。この分野ではアメリカとの連携も重視するとの方針。

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 ゲリラコマンドー対処では無人偵察機や沿岸監視装置、そして普通科部隊を支援するヘリコプターや装甲車へ1197億円が要求されており、仕様は不明ですがイメージ図では84mm無反動砲が挙げられ一丁ではなく一門と表現される多用途ガンが新たに要求となっています。

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 戦車ですが10式戦車がようやく継続的に量産となるようですね。しかし、戦車定数の削減を考えますと、今後は調達が伸び悩むこととなるでしょうから、車体部分だけでも共通化させた装備やFCSなどの電装品の機動戦闘車との共通化などをかなり新規縁に考えてはどうか、とも。

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 核事故、つまり原子力災害を含む災害訓練に予算が要求、一歩前進しました。NBC脅威評価のシステム化を行うべく研究に10億円が要求され、NBC偵察車に加えNBC警報機が2億円で一組、そして線量計の新型が173組5億円で要求。個人防護装備や遠隔地医療支援システム、除染車両なども要求され、切実さが伝わってきます。

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 FH-70榴弾砲後継に64億円が研究開発に要求されます。火力戦闘車という名称d、戦略機動力と迅速な陣地転換を行うため装軌式よりも路上機動力に優れ牽引王よりも迅速な陣地転換が可能な装輪自走砲となる模様で、ネットワーク化への対応が盛り込まれるとのこと。外国製をライセンス生産により導入するのではなく国産の新装備が開発される方向のようですね。

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また、高射特科では高射機関砲システム構成要素の研究として巡航ミサイルや無人機、精密誘導爆弾の無力化に寄与する装備にミサイルではなく機関砲システムが有用であるとの観点から研究開発が継続されるとのこと。93式近距離地対空誘導弾の後継を目指す、ということでしょう。

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 防空、那覇基地の強化が予算としていくつかあげられました、第一に二個飛行隊への航空隊増強への調査予算として若干が要求され、那覇基地へのE-2C早期警戒機整備基盤が要求されます、南西諸島防空の強化、という位置づけでしょうか。現在の配備数では三か所の警戒管制が可能な規模を有していますので、若干を三沢から移転ということはあり得るでしょう。

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また沖永良部島にあるレーダーサイトは新型のFPS-7レーダーへ置き換えが要求される模様。加えて原子力災害でも能力が証明された高高度滞空型無人機に関する海外調査で若干の予算が要求されています。また、沿岸監視用や部隊運用型の無人機についての配備や研究も継続されるようです。

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 部隊改編では、新しい駐屯地として座間駐屯地が創設され中央即応集団司令部が移転します。九州北部を担当する第4師団の近代化改編が行われます。また北関東信越地方を管区とする空中機動重視編成の第12旅団が即応近代化改編を受けるとのことで、航空部隊に換えて戦車中隊を置くとの話が行事でありましたので関心事です。このほか、旅団における化学防護部隊が直轄部隊となります。また、明日行事がある第1戦車群の改変が行われるとのこと。

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 航空自衛隊の部隊改編では航空救難団が現在の航空支援集団から戦闘機などを運用する航空総隊に配置替えとなるようです。このほか、東日本大震災災害派遣を教訓に防衛政策企画官と事態対処調整官、予備動員を円滑に行う予備自衛官室などの創設が行われる模様。加えて日米共同運用強化に日米運用調整官、国際政策企画官などが内局に設置されるようです。

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 在日米軍再編では、グアム移転へのインフラ整備費用が要求され、国内関連では普天間飛行場移設予算、嘉手納以南施設返還、相模原総合補給処一部返還、厚木岩国空母艦載機部隊移転、基地再編交付金などが要求され、横田基地への航空自衛隊航空総隊移設や中央即応集団司令部移転とともに日米共同の強化が図られます。

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  しかし、概算要求は微増という範囲内で、そもそも満額査定はあり得ないので難しい経済事情を反映したとのことd賞けれども、若干の定員微増を粉っている、という部分は最小限ではありますが評価したいところ、ただし防衛大綱によりマンパワーの増勢は今後の周辺情勢を考えた場合最高の余地はあるでしょう。

別表の主要装備要求は以下の通り。

  • 多用途ヘリコプターUH-60JA:1機(37億円)
  • 輸送ヘリコプターCH-47JA:2機(109億円)
  • 戦闘ヘリコプターAH-64D:1機(52億円)
  • 固定翼哨戒機P-1:-
  • 哨戒ヘリコプターSH-60K:5機(282億円)
  • 掃海輸送ヘリコプターMCH-101:1機(64億円)
  • 初等練習機T-5:4機(10億円)
  • 延命改修SH-60J:2機(10億円)
  • 次期戦闘機F-X:4機(551億円)
  • 近代化改修F-15J:2機(30億円)
  • 自己防御能力向上F-15J:2機(48億円)
  • IRST搭載改修F-15J:2機(14億円)
  • 空対空戦闘能力向上F-2:12機(41億円)
  • JDAM運用機能付与F-2:20機(28億円)
  • 次期輸送機C-2:2機(333億円)
  • 護衛艦DDH:1隻(1190億円)
  • 潜水艦:1隻(565億円)
  • 延命改修はつゆき型護衛艦:1隻(8億円)
  • 延命改修あさぎり型護衛艦:4隻(60億円)
  • 延命改修あぶくま型護衛艦:2隻(5億円)
  • 延命改修はたかぜ型護衛艦:1隻(8億円)
  • 短SAM能力向上むらさめ型護衛艦:1隻(0.6億円)
  • 延命改修エアクッション揚陸艇:1隻(0.3億円)
  • 03式中距離地対空誘導弾:一個中隊(167億円)
  • 11式短距離地対空誘導弾:1式(49億円)
  • 96式多目的誘導弾システム:3セット(41億円)
  • 中距離多目的誘導弾:11セット(56億円)
  • 88式地対艦誘導弾システム改:2式(56億円)
  • 地対空誘導弾(除PAC-3):-(114億円)
  • ペトリオットシステム改修:3式(363億円)
  • 基地防空用地対空誘導弾:2式(58億円)
  • 9mm拳銃:90丁(0.2億円)
  • 89式小銃:9513丁(27億円)
  • 対人狙撃銃:49丁(0.3億円)
  • 5.56mm機関銃MINIMI:220丁(4億円)
  • 12.7mm重機関銃:128丁(7億円)
  • 多用途ガン:7門(0.7億円)
  • 81mm迫撃砲L16:6門(0.6億円)
  • 120mm迫撃砲RT:3門(1億円)
  • 99式自走155mm榴弾砲:8両(76億円)
  • 10式戦車:16両(160億円)
  • 軽装甲機動車:101両(30億円)
  • 96式装輪装甲車:21両(26億円)
  • 87式偵察警戒車:1両(3億円)
  • NBC偵察車:2両(14億円)
  • 車両、通信機材、施設器材 等:-(824億円)
  • 軽装甲機動車:2両(0.9億円)
  • BMDイージス艦の能力向上:2隻(399億円)

北大路機関:はるな

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