北大路機関

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F-X選定:十二月末決定の次期戦闘機選定に関する再考・・・新田原基地航空祭の写真と共に

2011-12-07 23:44:37 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆新田原基地航空祭2011の写真と共に考える

 新田原基地航空祭の写真と共に次期戦闘機について、今月末には発表される、という話がありまして、F-X選定の話題を掲載です。

Img_8810_1 また延期されないのか、大丈夫か、と思いつつ北大路機関が多数掲載したF-X選定を再度、いや何度目でしょうか、少し書いてみます。次期戦闘機、正直F-4EJの後継機ですので、F/A-18Eでも、F-35でも、もちろんEF-2000や可能性があれば改良型のF-2CやF-22、当然F-15Eであってもいいと考えます。JAS-39やF-16Eでも、部隊配備計画と装備方法によっては日本の防空という任務達成は何とかなるかもしれません。

Img_8377_1 現実的問題として、ここまで問題が複雑化しているというのは防衛計画の大綱に明示されている戦闘機定数260、という縛り。かつては350ありましたから、90も削減されていることになります。その分教育訓練部隊に実戦機が配備されたのですが、他方補助戦闘機として100機近くが生産された高等練習機は区分ごと消滅しています。

Img_8422_1 冷戦時代、350の戦闘機定数とともに日本は北方からの脅威に備えていました。中国や北朝鮮の脅威もありましたが、北朝鮮は現在がほぼ空軍が摩耗しきっているため零か一かという意味で違いますが、中国に限っては日本まで到達可能な戦闘機脅威はほぼ無視できる水準でした。つまり、北方だけを睨んでいればよかったのですね。

Img_8459_1 それが現在は、対領空侵犯措置任務の件数では割合で見た場合圧倒的にロシアが多いことから北方への警戒は十分維持する必要があるのですが、中国空軍と海軍が順次現用世代戦闘機を整備し、我が国へ脅威を及ぼしてきています。同時に冷戦時代よりは空軍が摩耗しているものの、東側共産圏としての箍が外れた北朝鮮への警戒も必要となってしまいました。

Img_8483 脅威は多方面化。しかし戦闘機定数は削減されています。それならば航空自衛隊としては劣勢に数で対抗するという対抗策を防衛計画の大綱により講じられない以上、質的向上を図るしかない、ということになり一騎当千のF-22のような高性能戦闘機を志向した、という構図になるのでしょう。

Img_8491 特に脅威の多方面化に対して、米軍は1991年までフィリピンに有力な空軍部隊と海軍拠点を有していましたし、1975年まではヴェトナム方面に関係する大規模な部隊を地域全般に配置していました。ヴェトナムは軍事的に撤退しましたが、フィリピンからはピナトゥボ火山が火山爆発指数8という大噴火を引き起こし、火山灰により基地機能を維持できなくなったことから撤退しています。

Img_8506_1 基地の戦略的配置という意味では、在日米軍の質的量的向上以前の問題として在比米軍の全面撤退という、北東アジア地域、中国が米国への脅威を増大させる状況下において最も重要視される、2000年代だからこそ必要な在比米軍が既に過去のものとなった今日、特にこの地域へ隣接している南西諸島防衛に自衛隊はより注意を払わなければならなくなったという構図です。

Img_8645_1 航空自衛隊としては、航続距離、つまり戦闘行動半径が大きく限られた基地しかもたない現状から多くの方面の脅威に対抗でき、そしてステルス性を含め航空戦闘の主導権を握ることが可能な能力を有することで数的劣勢に対して少数機での航空優勢確保を実現しなければならない、こうした難題に直面し苦悩しているという構図でしょう。

Img_8660_1 戦闘機としてF-X候補の三機種はどういう視点で考えられているのか、推測してみます。日米同盟の観点からもF-35を推す、米国と共同しての運用を考えるのならば次世代の統合打撃戦闘機を航空自衛隊が配備するのが最も妥当であるし、質的にも能力的にも現在入手しうる最高峰の戦闘機となりえる航空機。

Img_8679_1 運用基盤が部品供給や重整備までを含め確立してこその独立国でそのうえで必要なライセンス生産比率の高さと純粋な戦闘機性能からEF-2000を推す声。数を揃え世代交代を急ぐべき、財政的に高価な戦闘機を取得すれば調達数に響く、取得費用のみならず運用コストを包含して総合的に現実的なF/A-18Eこそが必要。個々の機種に関する事情、こんなところでしょうか。

Img_8701 F-35にEF-2000とF/A-18E、以上の三機種。次期戦闘機選定に候補として挙がっているのは以上の三機種です。どれも正論なんですよね。いっその事、対領空侵犯措置任務と航空阻止任務として要撃飛行隊にEF-2000かF/A-18Eを配備し、戦略予備に航空総隊直轄の司令部飛行隊を拡充して司令部航空団を新編してF-35を虎の子にしてはどうか、とも考えてしまうところ。

Img_8717 F-35ですが、導入費用はエンジンを除けばF/A-18Eよりも下回る、と、田舎の電気屋さんがOS無しのPCを売るときのような話を出していたりしましたが、恐らく運用コストでは相当上回ると思われます、ステルス機は塗料一つとっても維持に特別の配慮を要するからです。また、日本国内で組み立てるノックダウン生産の話は出ていますが、予備部品のライセンス生産の比率は不明で、場合によっては定期整備を米本土か豪州で行うことになり、稼働率が著しく低くなる可能性を忘れてはなりません。

Img_8767 EF-2000,ライセンス生産や技術供与の可能性をBAEが示唆しています。生産縮小の可能性があり、企業としては必死なのでしょうけれども、英空軍を見る限り稼働率に限界があるようで、英空軍でもあの稼働率が出せたのだから日本でも、と好意的に見るのか意見が割れるでしょう。また、エンジンがユーロジェット製で運用思想も設計思想も異なる点を克服できるのか、という不安点は挙げておくべきでしょう。

Img_8813_1 F/A-18E,加速力の面から戦闘機というよりは戦闘攻撃機という種類の機体で、ネットワークにより戦うことで個々の性能ではなく部隊としての能力を発揮する機体です。これはF-35についてもいえることですが、F/A-18Eにはステルス性というアドヴァンテージがありませんから、この部分がさらに重要となります。そこまで考慮しているうえで導入は計画する必要があり、戦闘機導入費用と運用費用以外の面での運用を忘れないように考えてみてください。

Img_8937 究極的に考えた場合、やはり運用コスト面も含め、F/A-18Eは安価です。次点にEF-2000ですね。しかし、導入予定の定数では日本の防空を維持し、航空優勢を確保するには難点が残ります、というのもF-4後継機というのもそろそろF-15の後継機を考え始めなければならない時期だからです。ただ、防衛計画の大綱を見直し、F/A-18Eの導入数を、ある程度上方修正し考えた場合、違ってくるかもしれません。

Img_8876 現在の防衛計画の大綱の根拠となったのはそのひとつ前の2005年大綱ですが、この時点ではF-22の導入可能性がありました。それが今はないわけです。周辺国のSu-27系統の現用世代航空機の増加を見越して、本来はF/A-18Eであれば米軍の本格増援までの期間に日本防空にはどれだけが必要で、EF-2000の場合はどれだけか、そしてF-35ならばどうか、それに続いて米軍と共同作戦を展開し多場合、稼働率はどの程度必要なのか、本当はそうした部分から防衛計画の大綱を画定しなければならないのですが、どうも、そういう方向ではなく、国土防衛よりも何かほかに視点があるように見えるのは、もちろん、その視点も重要ではあるのですが国民の生命と安全が秤に掛けられているようで、残念ですね。

北大路機関:はるな

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コメント (18)
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