■未知数の可能性秘めた第五世代戦闘機
次期戦闘機がF-35に決定いたしました。F-104以来の単発機、そして次世代は無人戦闘機となることが示され、F-104と同じように最後の有人戦闘機と呼ばれるもので、開発が完了していないほどの最新鋭ステルス機です。
F-4の後継として決定となったF-35はF-22とともに数少ない第五世代戦闘機で、ステルス設計によるレーダーへの反射面積の抜本的低減のほか、陸海空部隊のデータリンクによる部隊としての打撃力、そして情報収集能力に加えてデータ通信中継に戦域優勢確保と、新しい時代の戦闘に合致した文字通り次世代の戦闘機としての性能を有しています。
ただし、唯一にして最大の難点は機体そのものが現在も開発中であり、過去にもレーダーやエンジン部分の不具合により数え切れない遅延を繰り返し、先日も機体各部分にクラックの発生が確認され、補強と強度維持の改修を行った場合、開発計画が遅延し航空自衛隊がひつようとしている期日までに間に合う可能性が絶望的となっているところでしょうか。
実はF-35は統合打撃戦闘機として2000年代には実用化される計画で、空軍用戦闘機、海兵隊用垂直短距離離着陸機、海軍用空母艦載機を基本設計の同じ機体から派生させるという意欲的な発想の元計画され、その膨大な開発費はアメリカ一国では負担できないことから国際共同開発となった経緯があります。結果、難しいほどの多用途性能が求められ開発は難航、応じて増大する追加費用の捻出に合意形成が難航し、今に至りました。
また、こう行った理由から納期が明確ではない、という点に加えて、付随する重大な問題、納入費用が現在のところ不明確、という問題があります。一機99億円とのことですが、初度調達品や整備機材に教育訓練費用、整備施設などを含めれば42機で1兆2000億円、実に一機あたり一世代前の汎用護衛艦に匹敵する費用を要するのですが、これで導入できるという上限の金額ではありません。
上記の課題から、特に機体が納入されるまでの期間、航空自衛隊が求めている期日よりも延期された場合、現在の、今年で初飛行40年となるF-4EJの延命措置を講じるべくライセンス生産を行ったメーカーである三菱重工と協同するのか、もしくは米軍の使用機にあってFー15Cは必要上無理でしょうからF/A-18EやF-16Cの中古取得かリース取得を目指すのか、繋ぎとしてJAS-39など異なる機体を目指すのか、何らかの措置が必要となるでしょう。
しかし、こうしたリスクを冒してでも第五世代戦闘機の取得を重視した姿勢は一応評価されるべきです。ライセンス生産として40%がみとめられるとのことですがどの部分が認められるのか未知数で日本の戦闘機運用基盤を含む防衛産業が受ける打撃は大きいです。また、初期の不具合の是正が未知数である状況の機体が納入されるためそちらの心配も残ります。しかし、思い切った勇断を示したのですから、これは悪い方向に出ないでほしい、そういう願いとともに今後の進展をみてゆきたいですね。
北大路機関:はるな
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