◆次の災厄と有事に備えて
東日本大震災への災害派遣任務完了が防衛省より正式に発表となりました。しかし、今回の災害派遣は課題も多く残していることは事実です。
陸上自衛隊に関して、ヘリコプターの不足は常々記載してきましたが、何よりもロジスティクスの面で大規模な部隊の集結と分散を実現できる体制が必要でしょう。部隊を集中することは重要ですが、これは同時に受け入れることを意味しているのです。この点、今回の震災では補給処の能力が簡単に限界を来してしまいました。
戦車などの機甲部隊は、一見災害派遣とは無関係に見えますが、膨大な燃料や整備支援を必要とする部隊ですから、平時からこれら装甲機動部隊を強化することはロジスティクスの充実を意味しますし、併せて戦車部隊と特科部隊はその輸送能力の大きさも無視できません。なにより、防衛大綱が特科と戦車の縮小を明記していることが陸上自衛隊の軽装備化を指向する要因となりえますから、改められるべきです。
潜水艦の増勢について。異論は特にないのですが、潜水艦には災害派遣や海賊対処任務には不適で、汎用性からは水上戦闘艦こそが増勢されるべきです。潜水艦6隻の増勢よりは、現在48隻が定数となっている水上戦闘艦勢力を6隻足して54隻と出来れば、少なくとも90年代の水準に戻すことが出来ます。艦船は大型化していますが、同時に任務も増大していますのでこれは致し方ないでしょう。
輸送艦も重要です、補給艦も大切ですが、護衛艦の位置づけが頂点ではないでしょうか。防衛計画の大綱に明記された潜水艦の増勢は反対こそしません。しかし、潜水艦だけを増勢すれば、という考え方に陥らないように、航空機の拠点として、情報の中枢として、治療と退避の手段として、戦闘システムとしての自己完結性が高い水上戦闘艦の重要性は、高く認識されるべきではないでしょうか。
戦闘機については、増勢されるべき。これは常々記載しています、特に日本列島は太平洋方面からの航空母艦脅威に対処できる体制がありませんから、東海道沿岸と小笠原諸島に各一個飛行隊が必要と考えます。しかし、現時点では偵察機です。今回の震災では情報の需要が供給能力を遙かに凌駕していました、偵察機がもっと必要と言わざるを得ません。
偵察航空隊が置かれていますが、なによりも通常の戦闘機に偵察ポッドを搭載することで戦術偵察機として対応が可能です。航空総隊直轄として偵察航空隊が置かれていますが、例えば二個飛行隊基幹の偵察航空団として拡大改編し、必要に応じて偵察任務以外の制空戦闘への投入能力を付与し戦略予備部隊としても運用できるよう改編を行えば、災害時の情報収集、有事の予備部隊とを両立可能です。こうした観点からも、防衛計画の大綱を再討議する機会が訪れているのではないでしょうか。
北大路機関:はるな
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