北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防災と自衛隊:精強な戦闘部隊であるからこそ有事としての災害派遣を成し遂げる

2012-01-18 23:36:49 | 北大路機関特別企画

◆我が国を襲う次の大震災に備えて

阪神淡路大震災から昨日で十七年、そこで自衛隊の災害派遣任務について、少し考えてみましょう。

Img_1285東海地震、東南海地震、南海地震が迫る中、これは防衛を考える上でも必要な事柄ですが、陸海空は全般において部隊の迅速な集中と後方支援基盤の充実、情報収集に情報伝送と情報集約の基盤を更に強化し、その時に備える必要があります。

Img_5855そのためには、陸上自衛隊において空中機動部隊と装甲機動部隊の強化、海上自衛隊においてはヘリコプター搭載護衛艦と沿岸海域用艦艇の確保、航空自衛隊においては空輸能力を筆頭に戦闘支援能力の強化という具体的施策が行うべき命題として挙げられるでしょう。

Img_8456_1無論、防災は国によってのみではなく、住民一人ひとりの意識と準備により初めて端緒につくことができるのですが、これは地震発生後一時間が個人個人、発災後六時間は家族単位、そして十二時間は近所同士で対応するべきですが、その次を引き継ぐのは自治体と国の役割、国は責任を投げ出すわけにはいきません。

Img_1652最初に記すべきだったかもしれませんがいまだに識者のなかには、とはいっても防衛に関しては全くの素人なのでしょうけれども、自衛隊を災害派遣専門の組織にしてはどうか、という声があります。これについては東日本大震災以前も以後も何度も記載していることなのですけれども、全くの的外れ、と言わざるを得ません。

Img_4967断言できる事柄は世の中に多くは無いのですけれども、一つ上げるとすれば、自衛隊を災害派遣専門の組織として一部改編すれば、確実に災害派遣能力、災害への対処能力は低下する、これだけは言い切れます。自衛隊は戦闘組織であるからこそ、東日本大震災における様な任務が出来た、そう考える次第です。

Img_8097そういうのも、自衛隊は戦車を持ち、装甲車を有しているからこそ、部隊が集中した際の燃料や機械整備に関する能力を集中させることが出来たのでして、これが消防や警察であれば車両整備は後方の拠点に集中させる必要があり、特科部隊があるからこそ情報の集約と通信基盤が整備できるというわけ。

Img_3550航空部隊にしても自治体に防災ヘリはあっても、それを前進させて運用基盤を維持する能力はありません。海上自衛隊としても海上保安庁の巡視船にはヘリコプターは搭載されているものの救難ヘリコプターが海上で運用されているだけで、護衛艦のようにセンサーとして一体化されているからこそ情報中継と情報伝送と共に運用できるのです。

Img_3630加えて護衛艦と潜水艦という運用基盤があるからこそ、基地機能が充実するのであり、その艦艇を支援する観点から強力な航空集団の部隊があり得るのだ、と。航空自衛隊としても、今回大規模な航空部隊を集結できたのは後期警戒管制機とレーダー網があったからこそで、これは戦闘機部隊を支援するためのものでした。

Img_4807輸送機についても、航空自衛隊が防空任務を遂行するうえで関連資材を空輸し戦闘を継続するために必要だからこそ配備されているもので、救難ヘリコプターについても自治体のヘリコプターよりも過大な性能は遠い洋上での戦闘救難を想定していたから許されたものであるのです。

Img_5246自衛隊について、その配置を動的防衛力に置き換えて、全国に均等に配置する基盤的防衛力から改めよう、という話は一応検討されたようなのですが、これについては全ての部隊が担当する管区をもっている現在の体制が災害への一定の能力を発揮しているのですから、この点はいっこうの余地があるのではないでしょうか。

Img_7195空中機動部隊を抜本的に充実して、師団あたり駐屯地を三か所程度に集約できれば、駐屯地業務隊をはじめ管理機能は集約できますし、中演習場規模の演習場近くに駐屯したならば市街地での駐屯地を売却することで一定の補填に使えるかもしれないのですが、これで失う基盤を置き換える機動力が担保されない限り賛同できません。

Img_3221 一方で自衛隊は防衛計画の大綱が改訂されるたびに、特に任務が増大していても削減される傾向があり、減らす一辺倒の人員規模については、本当に減らして、減らした分を負担を国民全体が背負う覚悟はあるのか、という素朴が疑問がありますが、どうでしょうか。

Img_4030 公務員経費の削減が強く叫ばれるところなのですが、必要な制度さえも削っては大丈夫なのでしょうか、自衛隊はもちろんのことなのですが欧州諸国、福祉国家として日本が目指す諸国は軒並み公務員が多く、他方で欧州でも公務員が比較的少ない国が目指す事例として引き合いに出されるのが日本の公務員の少なさです。

Img_0137 民間防衛として、公務員が担った責務を国民が参画することで置き換える、負担軽減のつけを国民が直接関与して対応する、ということならば、それでもいいのですが、そもそも現在の日本の雇用体系と通勤距離などの特性を鑑みれば、民間防衛へ参画する時間捻出、裁判員制度や参政権行使さえも時間が無い現状では不可能でしょう。

Img_5588 しかし、一方で即物的な防災能力という観点から、対応できそうなもののみを揃えてしまう、ということを考えたならば、正直平時には頼もしいものでしょうが、平時の運用基盤が破綻した場合に運用できる基盤も同時に破たんしてしまう、ということになりかねません。

Img_0002 有事即応、迅速な部隊の集中と打撃力、任務継続能力とこれを支える情報優位、自衛隊は戦闘部隊としての能力を強化することが、大規模災害への対処能力を培うことになるのだと考えます。戦車、戦闘ヘリ、護衛艦、戦闘機、これらが間接的に直接的な防災対処能力を培うということ、災害も武力紛争も日常が壊れるという意味の有事なのですからね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
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