◆AFPによれば武力衝突で3000名以上が死亡
南スーダンPKOですが、どの程度の安全性が確保されているのか、少々不安があり、また疑問でもあります。
南スーダンPKOの部隊旗授与式が7日防衛省において行われ野田総理も式典に出席したとのことです。一川防衛大臣より部隊旗を受領したのは第一次派遣部隊長坂間輝男2佐、現地調整指揮官の生田目徹1佐は既に現地での調整にあたっています。部隊はいよいよ11日より順次日本を出発となりました。
式典では野田総理も隊員を激励し、第一次派遣隊は宿営地造成など支援体制、支援基盤の構築にあたるのですが、第二次派遣部隊を五月以降に順次派遣し、この第二次派遣隊からいよいよ自衛隊の任務である道路補修をはじめとしたインフラ整備の任務を本格化させることとなります。
こうした中で不安な情報も出ています。南スーダンジョングレイ州での家畜の奪い合いに端を発したロウヌエル族とムルレ族の住民摩擦は武力衝突に展開しており、AFP通信が地元当局者の話として報じている内容では既に3141名の死者が出ており難民もいまだ20000名以上発生しているとのこと。
この住民の武力衝突は南スーダン軍の介入により既に鎮静化されており、自衛隊の任務地域である首都ジュバから衝突のあったジョングレイ州までは340kmと京都~静岡間程度の距離が離れています。とはいえ、習志野演習場の空挺降下訓練始めまで展開する身としては、あまり遠い印象はないのですが。
南スーダン軍の介入により沈静化している、ということですから今回の事案が拡大する可能性はひとまず収まってはいるのですが、難民20000名という規模で人道危機という扱い、これ以上の規模に拡大していれば国連安保理が招集されているところでした。この規模の、もしくはこれ以上の規模の衝突や混乱が自衛隊の派遣中に発生しないとは言い切れないのではないでしょうか。
自衛隊が派遣するのは施設科部隊ですが、戦闘工兵部隊というような前線で活動する部隊ではなく、道路補修や橋梁修理の部隊が送られることもあり、装甲ドーザのような装備が持ち込まれるのかは未知数です。しかし、防御力に上限があることは事実で、現在の国連平和維持活動は国連憲章六章半措置ではなく七章措置となっているところが少々不安と言わざるを得ません。
安保理決議1996号は七章措置であり、必要であれば武力の使用権限があります、必要になれば派遣部隊に治安作戦が付与されることを意味しており、工兵部隊である陸上自衛隊に付与されることはないでしょうが、付与され行使されれば、PKO舞台全てが反撃対象となるので、自衛隊もまぬがれえません。このあたり自衛隊も戦車のような重装備を携行できれば、とは思うのですが、政治には何らかの決断を求めたいです。
北大路機関:はるな
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