北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海外派遣における安全確保、装甲車の充実と戦闘工兵装備強化の必要性

2012-01-14 23:55:40 | 防衛・安全保障

◆施設器材扱いで装甲車を取得できないか

南スーダンにおいて新たな衝突があり、既に24時間を経ずして数十人の死者が出ているとのことです。

Img_6979改めて、自衛隊の海外派遣任務において戦死者は日本の社会において許容されません。こうした観点から、特に復興人道支援任務へ対応する観点から海外派遣の花形となっている施設科部隊の防御力という観点はもう少し考えられてしかるべきなのではないか、と考えます。

Img_1432具体的には、装甲車を施設科部隊へもう少し配備できないか、主要装備という名目ではなく施設器材の一種として、です。例えば重迫撃砲中隊の高機動車は迫撃砲の備品扱いになっているのですが、装甲車も施設器材の備品扱いで大量調達できないものか、ということ。

Img_4352そして戦闘工兵として、施設科部隊が第一線で活動するうえで必要な障害除去、障害構築といった任務に対応することを目的とする、装甲ドーザや地雷原処理車、施設作業車の増強や道路障害作業車の装甲化、それに架橋に先立つ渡河装備の支援能力強化など、必要でしょう。

Img_2603装甲車について、装甲車が全自衛隊的に不足しているのは、今さら言うまでもありません。東西冷戦下において陸上自衛隊は正面戦力としての戦車の近代化を何より重視し、他方で近接戦闘を担う普通科部隊は、安易に装甲車に乗車させるよりは地形防御を最大限考えるべきとされていました。

Img_5874実のところ、財政的な理由も多分にあったところなのでしょうが、例えば米軍においても韓国駐留の第二歩兵師団などは1980年代まで装甲化は為されず、伝統的な歩兵師団として地形防御と陣地防衛を主眼に置いており、地皺の深い日本ではこうした運用こそ合理性があったともいえるでしょう。

Img_3660しかし、時代は変わりました。防衛計画の大綱では、柔軟に状況に対応できるという観点から普通科部隊の重要性を説き、そして充実の必要性を力説していますし、同じく施設科部隊についても、過去の防衛大綱では国際貢献や阪神大震災を踏まえ削減という文言は盛り込まれていないのです。

File0092それならば、もう少し装甲戦闘車が配備されるべきだったろう、と。そして装甲車もさらに配備されるべきだったのだけれども、年間の装甲車調達数は30両前後、この種の装備の耐用年数は30年以下ですから、全自衛隊で900両程度しか調達できません、普通科連隊9個分、これは少なすぎるのではないでしょうか。

Img_4344施設大隊、この中で最前線での戦闘工兵として地雷除去を行い、障害除去を行う部隊は普通科部隊と同じ前線に展開します。だからこそ装甲車が必要なのです。したがって、普通科部隊と共に施設科部隊所要の装甲車も必要であり、しかしそのためにはどう頑張っても装甲車の数が不足する、ということは実情ですが、必要なものは必要ということに変わりありません。

Img_2309 海外派遣を考えた場合、戦闘工兵としての最前線での戦闘に対応できる防御力があれば、突発的事態においても犠牲者が発生する状況を回避できます。そのための装甲車で、96式装輪装甲車は毎年100~150両程度調達されてもいいのではないでしょうか。それが不可能というならば、冒頭に記したとおり施設器材として、装甲車を備品扱いの調達ができないものか、と。

Img_6297 もう一つ、装甲ドーザや施設作業車といった車両を第一線の施設科部隊に充実させる必要がある、ということ。連隊戦闘団に分散配置する場合でも、装甲化され、作業を行うに十分な能力を付与する体制が無ければならず、併せて海外派遣においても突発的状況に対応できる能力が必要、ということ。

Img_4032お気づきの方もおおいと思いますが、75式装甲ドーザ、92式地雷原処理車は中部方面隊の師団施設旅団施設では観閲行進に出ていなくなっています。機甲師団として機動打撃を担当する第七師団を例外として師団施設大隊や旅団施設中隊から順次方面施設部隊へ移管が進められています。

Img_4357この種の装備は取得費用が大きいのですから、数を揃えることが難しい、ということは理解するのですが、しかし必要である装備は主張しなければなりません。その必要性は海外派遣における安全確保、という切迫した需要であり、政府も海外派遣を行う以上、政治決定において必要な資材機材の取得は担保するべきだろう、と。

Img_6042 この問題は、犠牲者が出た場合の政治的リスクという観点からもう少し踏み込んで考えられるべきなのですが、現在の政治は犠牲者が出てもどう対応するのか、まさか戦闘の発生を隠匿し犠牲者の記録を抹消することはないと考えるのですけれども、想定外の一言で片づけそうな危惧さえもあります。

Img_2000 加えて付け足せば、165mm破砕砲というような一種の爆薬投射装置を搭載する施設戦闘車両、自走榴弾砲のような、しかし射程は目の前程度でいいのですが対応するものや、道路障害作業車の装甲化と同時に地雷原処理装置の牽引機能と排土板を装着する車両というものも必要なのかな、と。このほか、輸送車両の装甲化や大型化も必要ですが、必要性の高さを無視し万一の場合に想定外という文言のみ用意するという対応だけは、避ける方策が必要でしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (9)
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