北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

アメリカ海兵隊海兵遠征隊と陸上自衛隊旅団普通科連隊戦闘団

2012-01-16 22:36:42 | 防衛・安全保障

◆島嶼部防衛に可能な緊急展開部隊の模索

西部方面普通科連隊による島嶼部防衛実動訓練がアメリカカルフォルニア州の海兵隊キャンプペンドルトンにおいて開始されたとのことです。

Img_2102空挺降下訓練始めの一枚、この搭乗している隊員は特殊作戦群所属でしょうか。現在陸上自衛隊にあって島嶼部防衛は死活的重要性と現実味を持つ任務想定の一つで、特に自衛隊が駐屯しない離島へは小規模での侵攻により既成事実が構築されてしまうため、こちらも水路進入や隠密空挺降下といったこれまで想定しなかった方法での展開を強いられることになりました。

Img_1716 特殊作戦群は米軍四軍統合特殊戦部隊司令部の支援下で編成が研究されたとされ、一方で西部方面普通科連隊は海兵隊へ水路進入などの訓練支援を受けています。こうしたなかで、民主党への政権交代後に一部で討議された、陸上自衛隊の一部海兵隊化、という話を少し思い出しました。海兵隊は比較的重装備で機動打撃力の不足は航空打撃力と空中機動能力で補っている、自衛隊が参考とするのは難しい、と。

Img_1356 しかし、陸上自衛隊の旅団の普通科連隊を見ていますと、師団普通科連隊が四個普通科連隊と対戦車中隊もしくは五個普通科連隊、そして本部管理中隊と重迫撃砲中隊と重厚な編成であるのに対して、旅団普通科連隊は三個普通科中隊と本部管理中隊のみ、普通科中隊も縮小編制で重迫撃砲などは本部管理中隊に装備されています。

Img_9639 空挺大隊は三個中隊基幹で、重迫撃砲は編成に含まれていませんが、共通点或る編成だな、と思いつつ、MEU、米海兵隊の海兵遠征隊の海兵中隊も三個基幹で、火力中隊が含まれ、そこに砲兵中隊と軽装甲偵察中隊、必要に応じて戦車小隊が配置される編成だ、ということを思い出しました。これ、東部方面隊や中部方面隊の旅団が連隊戦闘団を組んだ場合と共通する編成なのだなあ、とも気づいた次第です。

Img_2069 北部方面隊の旅団、第5旅団や第11旅団は戦車中隊が配属され、特科部隊も自走榴弾砲を装備しており、比較的重装備なのですが、中部方面隊、東部方面隊の旅団、第12旅団や第13旅団、第14旅団の旅団は、軽装備、海兵隊と水陸両用装甲車に偵察隊編成さえ加えれば、共通する編成になるのだなあ、と。

Img_2330 海兵隊の海兵遠征隊は、海兵航空団による空中機動能力や空中打撃能力が付与され、火力の不足を補います、F/A-18等も配備されている海兵航空団を陸上自衛隊が真似することは不可能なのですが、方面隊が運用するヘリコプター部隊には多用途ヘリコプターと対戦車ヘリコプターが配備、かなり定数が割れているようですけれども充足できれば空中機動力はかなりのものとなるでしょう。

Img_1433 すると、旅団普通科連隊戦闘団を、海兵遠征隊的な運用、比較的軽装備で充足させて全国に即応させる体制、戦車から機動戦闘車へ、そして一個中隊程度を近接戦闘車で充足させ、空中機動を想定する中隊、水陸両用車両、は難しくとも輸送艦からの展開を念頭に置いた編成をとり、即応部隊化、ということも考えられるのかな、と。

Img_1405 実は、先日、海上自衛隊の輸送艦おおすみ型三隻は一個普通科連隊戦闘団の同時輸送を念頭に整備された、ということを思い出し、しかし現在の軽装甲機動車が配備され、普通科部隊は高機動車により完全に自動車化されている現状ではたして輸送できるのか、という素朴な疑問が生まれたのですが、師団普通科連隊が戦闘団を編成した場合は人員2000名、他方旅団が連隊戦闘団を編成した場合は1000名以下ですので、これならば輸送できるのではないか、と考えた次第です。

Img_2364 第1空挺団を同時空輸するには、C-1輸送機では延べ何機必要でC-2の場合はどうか、という疑問もあるのですが、現実的に自衛隊の能力で編成できる緊急展開部隊、となれば、こうした編成も考えられるのでは、と。無論、現状のヘリコプター定数では十分ではありませんし、航空打撃力ももう少し考えなければならないのですけれども、日本版緊急展開部隊、としては一考の余地はあるのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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