◆事実関係の精査進展を冷静に見守りたい
弾道ミサイル防衛関連に地対空誘導弾や特科情報装置などの防衛装備品を納入する三菱電機が防衛省より防衛装備品の入札を停止となりました。
事実関係が明確ではないので、現段階では暫定的な視点しかもたないのですが、三菱電機が防衛省に納入する03式中距離地対空誘導弾について、防衛省が抜き打ち検査を行ったところ、防衛関連事業部に勤務していない職員の勤務が記載されており、装備品の経費を水増ししているのではないか、という疑惑が浮上したとのことです。防衛装備品は調達時に上限が明示されており、経費や原料費を咥えて上限の範囲内で生産、上限を下回った場合にはその分を国へ返還する、という構図が現在の防衛装備調達システムになっています。
今回の問題となっている方式は、生産に関係ない部署の要因が参加しているように、防衛省が帳簿と勤務状況の相違点を派遣したことにあります。防衛産業のみならず他の業種においても、事業部を超えて開発に参加する、という話は実際に耳にしますので、当初は防衛省の過剰監査により水増し請求となってしまったのではないか、とも考えたのですが、疑惑をもたれている三菱電機鎌倉製作所の従業員によれば人件費などの集計システムへ不正入力するよう指示を受けていた、と防衛省へ回答し、やはり水増しと考えざるを得ません。
防衛省が明示した範囲内で生産が完了している、ということならば一見問題視の在り方にも考え方が見えてくるのですけれども、背景には防衛産業の採算性の低さと公共性に事業評価の摩擦という特異な状況を考えるべきでしょう。即ち経費過大請求は、防衛産業の生産ラインへの費用上乗せが難しく、生産ライン維持費や製造が何年間続くのかも不明確という日本型防衛装備調達方式では採算性を維持するうえで厳密な経費だけでは難しく、加えて日本以外の海外装備品の調達には監査が届きにくいという問題もあるのですが、制度上水増しはやはり問題でしょう。
再発防止措置が採られるまでは入札への参加を禁止する、という防衛省の措置ではあるのですが、再発防止措置というのはどういったものとなるのでしょうか。防衛装備品は特殊なものであり海外の装備品の価格等は政治的要素にも左右されるので、難しい実情があります。ただ、制度上問題であるならば解決策は考えられねばなりません。特に防衛装備品の適正調達を目指してありとあらゆる装備を競争入札方式としているのが現状なのですが、これにより開発能力のない企業が仕様書の範囲内であれば開発できるとして応募し落札、結果、防衛省の要求は満たしていても仕様書以外の性能が不十分で実用に供さない装備が出され、継続開発となる事例、打ち切りとなる事例も起きています。
それならば、と技術力がある企業が無理を承知で落札しているが企業は営利を一応は考えなければならない、という話もあります。このように、防衛産業は一種企業の社会貢献的な面で行われているもので、採算性は非常に低く技術的波及効果も現代では非常に低いものです。撤退したい、という声も少なくはないのですが、国側がお願いしているという立場。こうした一方で生産ライン維持をはじめ企業から持ち出しの部分もあることから、国としては強く出れば撤退されるという難点、海外装備品はリスクが大きく国も無理を利かせることが出来ないというところがあります。
再発防止措置を徹底し、防衛省と企業との情報連携と生産や管理、設計と開発についての協同を進めると行きたいところですが、防衛省から人員を派遣すれば天下りや癒着と誤認されることにもなり、難しいです。ともあれ、水増しを行わなければ事業評価の観点から撤退しなければならない状況があるならば請求に上乗せではなく入札の時点で主張するべきです。ただ、結論付けるにはあまりに情報が不足していますので、もう少し状況を見守ってみましょう。
北大路機関:はるな
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